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AIもコスパが大事(3) - AIの歴史(2)
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第2次AIブーム (1980年代)
前節「AIの歴史(1)」で紹介した第1次AIブームの1970年代までは、AIの黎明期でした。AIの可能性に胸が膨らみましたが、コンピュータの性能問題などで実用的にはならず、結局は実験レベル、おもちゃレベルのものでした。これにより、1970年代後半には第1次冬の時代を迎えることになりました。
しかし1980年代になると、コンピュータの性能が向上し、実用的なAI、特にエキスパートシステムが興隆してきました。その時代を見ていくことにします。
(1) 専用言語と専用マシンによるエキスパートシステム
AIが始まってから、AIを記述するプログラミング言語として、Lispが主に使われていました。またPrologも同様にAIを記述する言語として日本で採用されました。
このようにAIは専用言語でプログラミングするというのが定説でした。現在のPythonのような立ち位置でした。
またAIを実装するコンピュータ装置も専用マシンを用意するようになっていました。日本ではNTT(当時は電電公社)がOKIと組んで、AI専用マシンとしてLispマシン「ELIS」を開発しました。ELISはプロセッサもLispに特化して独自開発していました。これを指揮していたのが竹内郁雄氏らでした。なお筆者はこのELISプロジェクトに参画していました。
このELISとは別に、日本の国家プロジェクトとして、ICOT(新世代コンピュータ開発機構)の「第5世代コンピュータ」がありました。この第5世代コンピュータはPrologの考えを取り入れた推論専用マシン「PSI」を開発していました。
「このELISとは別に」というよりも、こちらの第5世代の方が日本では本命だったのは秘密です。
(閑話開始)
当時のAIはLispで開発するのが定説でしたが、日本では独自路線としてICOTではPrologを採用しました。・・・って採用してしまいました。いつも日本は独自路線で(以下省略)。
ELISを開発しているLisp界隈では、Prologを勝手にライバル視をしていました。お金は圧倒的に負けて(以下省略)。
(閑話休題)
このように専用言語と専用マシンでAIを実装していました。当時はSymbolicsやSUNなどのワークステーションが流行していましたので、これらはAIワークステーションと呼ばれていて、製品化され、一時代を築きました。
なお専用マシンの価格は非常に高価でした。今も同じような感じですが、AIだからという理由で許されていました。
このNOTEのシリーズは「AIもコスパが大事」です。大事なことですから、もう一度言います「AIもコスパが大事」です。
このAIワークステーション上に、各種のエキスパートシステムが開発されました。この中にはユーザの問い合わせに対応するエキスパートシステムなどがありました。
(2) 汎用言語と汎用マシンによるエキスパートシステム
高速な処理ができる専用マシン上のエキスパートシステムが一時期流行していましたが、やがて汎用ワークステーションやPCなどの汎用マシンの性能が向上し、実用的なエキスパートシステムがこの汎用マシンで開発できるようになりました。
一方、専用マシンではプロセッサなどの向上スピードが、汎用マシンのそれに追いつかずに、やがて専用マシンは開発されなくなりました。
(閑話開始)
生成AIを実装するために、専用プロセッサとしてNVIDIAのGPUが使われています。・・・てデジャブのような、歴史は繰り返すような気が(以下省略)
(閑話休題)
またプログラミング言語もLispやPrologではなく、Cなどの汎用言語で対応できるようになりました。これはエキスパートシステムのライブラリ関数(エキスパートエンジン)がC言語で実装されたことが大きな原因でした。
C言語で開発された実用的なエキスパートシステムが多く登場してきました。まさにエキスパートシステムが流行して大きな時代を築きました。
(3) ナレッジエンジニアリング
エキスパートシステムが流行すると、専門家から聞き取りをして、それを知識として、エキスパートシステムに入力する必要がありました。
現在の機械学習とは異なり、この知識獲得を人間が行っていました。これを行う人間をナレッジエンジニアと呼ばれ、高給で雇われていました(一部、都市伝説だという噂もありましたが)。
専門家の知識を得て、手動で整理するの非常に困難な作業です。矛盾する知識や曖昧な知識、意味不明な知識などが多数あり、また知識の個数も1万を超えるものもありました。
とても人間ができるものではありませんでした。
(4) 深層学習
この時代にニューラルネットも進歩し、パーセプトロンに中間層を設けた多層のニューラルネットが登場しました。この中間層により、バックプロバゲーション(誤差逆伝搬、後方に誤差情報を伝えてパラメータ調整)が可能になりました。これが深層学習(ディープラーニング)と呼ばれるようになりました。そしてこれが今の大流行に繋がっています。
エキスパートシステムにおける知識獲得こそがAIの領域であり、これを解決するのが機械学習の深層学習になります。
第2次冬の時代(1990年代前半)
エキスパートシステムが流行しましたが、やがてその需要が一巡し、エキスパートシステムの需要が減ってきました。これが新たな冬の時代の始まりになりました。
第1次AIブームの数式処理や言語理解、自動対話なども今ではAIと呼ばれないのと同様に、今後はエキスパートシステムもAIとは呼ばれずに無縁になっていくでしょう。
たぶん固定的な学習データのみの画像認識や音声認識もAIと呼ばれなくなるでしょう。その学習データが機械学習で得たデータであったとしても。
もちろんエキスパートシステムはいまでも実用的で、いまでも活躍しています。それがAIと呼ばれずに普通の処理系として運用されていくだけです。
でもAIの歴史からは退場することになりました。
(予告)第3次AIブーム
次回は深層学習によるAIブームについて見ていくことにします。現在の生成AIに発展する深層学習はどうであったか、その時代にあったチェスや囲碁、将棋のAIについても触れてみたいと思います。お楽しみに。
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