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JEITA/JAIST北陸セミナー2024「DXとソフトウェアデファインド」(5) SDとDXの参考事例

2024年9月20日開催の「JEITA/JAIST北陸セミナー2024」で講演した「ソフトウェアデファインドともうひとつのDX」を紹介していきます。
今回はソフトウェア定義によるDXの参考事例を紹介します。
前節:(4) DXとSDの関係 次節:(6) IPAガイド(参考)


製造業DXとSDの参考事例

製造業DXとSDの参考事例

この講演ではもうひとつのDX、つまり消極的DXとして、製造業DXを取り上げています。ここではこの製造業DXの事例を紹介します。しかし事例で紹介する製造業は消極的なDX事例ではありませんが、中小製造企業なので、全社一丸になれるがリソースが少ない中でDXを実施している事例なので、参考になるでしょう。

この中小製造業DXの事例の中から、対象をソフトウェアで新たな価値を定義している例をピックアップして、紹介します。

SDとDX事例の施策一覧

SDDXの事例一覧

ここではまず最初にDXの事例における施策の一覧を紹介します。なおSDDXの造語は、ソフトウェアデファインドを手法として導入しているDXのことを指しています。

製造可視化製造改良はDXの典型的な施策になります。製造可視化の施策ではセンサーからのセンシングデータを処理し製造工程の可視化をするものです。これにはセンサーのハードウェアも大事ですが、センサーによるセンシングデータを処理するソフトウェアがもっと重要です。これによってソフトウェアで製造工程の改良ができるでしょう。

製品/サービスの新たな価値を創造することもDXの典型的な施策になります。新たなハードウェア部品や装置による価値創造の事例も多いですが、それよりもソフトウェアによる価値創造も事例が多いです。リソースが少ない中小製造業ではソフトウェアによる施策が多くなります。

会社組織に対するDX施策として、DXビジョンの浸透や経営層が先頭に立っての取り組み、社員の挑戦を評価する仕組みと風土つくり、全社員への情報展開などがあります。またDX施策として多いのは、社内連携社外連携による柔軟で拡張性のある運営があります。これらの施策は精神論になりがちな面もありますが、前述の施策よりも効果があります。これらの施策が成功するには、広義のソフトウェアデファインドの持つ柔軟さが重要で、それによるアジリティの向上が鍵になります。

これらを含むDX推進の事例は、IPA製造業DX推進ガイド事例集に詳細を掲載していますので、参照してください。

SDDXの事例1「OTとITの融合」

SDDXの事例1「OTとITの融合」

この事例ではOTとITの融合による施策です。ここでOT (Operational Technology)とは運用技術のことで、製造業では工場の製造装置や製造工程におけるデジタルデータを処理するITのことです。またOTに対するITとは、一般用語としてのIT(情報技術)ではなく、就業などの総務管理や営業管理などに特化した狭義のITを指しています。

そして背景となる状況としては、一般的にOTとITは仲良くありません。OTの工場系のデータと、ITの総務・営業系のデータとはあまり繋がっていません。

このような状況で、この事例1ではOTとITのシステムを融合させ、それぞれにデータを一括して扱えるようにしました。これで例えば、社外にいる営業社員が工場の稼働状況をリアルタイムでわかり、営業折衝の武器になります。また事例1ではこの融合システムを外販しています。

この事例を成功させたTipsとして、やみくもにデータを集めないといことがあります。OTとITシステムを融合する前に、データの5S(整理、整頓、清掃、掃除、躾)を行いました。5Sの考えは製造業では十八番(おはこ)ですので、この考えをデジタルデータに適用したものです。これに加えて、ユニフォームを総務系と工場系写真で統一するなども実施し、両者の融合を図っていることも成功の一因になりました。

SDDXの事例2「ソフトウェアによるデータ測定」

SDDXの事例2「ソフトウェアによるデータ測定」

事例2では電力計のハードウェア装置による電力消費量やCO2の排出量のデータ測定ではなく、ソフトウェアの計算式による稼働率からのデータ測定の施策です。またこの事例ではこのソフトウェアシステムを外販しています。

電力計を製造装置に1台ずつ繋げるために購入するのは大きな投資コストが必要になりますが、ソフトウェアであれば安価にできます。

このシステムは計算式の正確性が重要になりますが、これもソフトウェアで実装していますので調整は容易で柔軟にできます。

この施策が成功したTipsには、電力量やCO2排出量などの具体的な数値目標でわかりやすく推進できることがあります。計測手法や計算式、計算モデルの改良が柔軟に安価にできること、既存のセンサーや市販のセンサーを活用すること、社長自らが実行することなどがあります。

上記の事例1と事例2の詳細は、IPA製造業DX推進ガイド事例集に(固有名も含めて)掲載していますので、参照してください。

(参考)ユーザ主導のDXでのベンダの役割

ユーザ主導の開発・ベンダ企業のあるべき姿

事例1や事例2のように、DX推進はユーザ企業が主導で実施します。そのデジタルシステムでさえ、従来のベンダ企業にお任せではなく、ユーザ主導で開発します。リソースが少ない中小企業でもユーザ主導の開発が増加しています。

そこでベンダ企業の役割を考えてみます。ベンダの望ましい役割としては共創とそれを目指す伴走です。そうしないとユーザ企業の下請けの役割に甘んじて役割が低下します。

この共創と伴走でのベンダの強みは、ユーザビリティ(使いやすさ)やセキュリティなども含む広義の品質があります。この点において、プロとして共創と伴走をユーザに提供できます。これがベンダの強みです。具体的にはSQuaREの利用時品質が重要になります。

またユーザ主導の開発で多用されるローコード開発やノーコード開発、生成AIによる開発の自動化では限界がありますので、それを補完するのがプロとしてのベンダの役割です。

この節での結論は「ベンダは変わらないと駄目」です。

参考:
JEITA/JAIST北陸セミナー2024 中小製造業のDXとソフトウェアデファインド

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