JEITA/JAIST北陸セミナー2024「DXとソフトウェアデファインド」(6) IPAガイド
2024年9月20日開催の「JEITA/JAIST北陸セミナー2024」で講演した「ソフトウェアデファインドともうひとつのDX」を紹介していきます。
今回はソフトウェア定義によるDXの参考事例を紹介します。
前節:(5) SDとDXの参考事例
IPAガイド
ここでは、もうひとつのDXの参考文献のひとつであるIPAの製造分野DX推進ガイドを紹介します。このガイドの作成に私も参加していました。そしてこのガイドに関する講演を日本全国で多数実施してきました。
このガイドは中小製造業の20社以上にヒアリングをし、大企業ではない、大企業ではできない、DX推進の事例を多く掲載しています。ぜひ参照してください。
ガイドの構成
IPAの製造分野DX推進ガイドは、「DXの理解」と「DXの目指す姿」の2部構成になっています。
DXの理解では、目玉のコンテンツである事例集と講演会などで寄せられたFAQ、用語集、現場や有識者によるコラム集があります。
DXの目指す姿では、ツールのDX度チェックと現場からの声であるDX推進ステップ例があります。
マンガでわかる製造分野DX(マンガFAQ)
IPAの製造分野DX推進ガイドで、一番人気のあるコンテンツが実はこの「マンガFAQ」です。実は私がこれを作成しました。
このマンガFAQでは、セミナーや講演で聴講者からいただいた質問をまとめたものです。FAQとして52編の質問を掲載しています。「DXとは?」から始まり「製造分野DXとは?」「DXって儲かるの?」「日本は遅れているの?」「DXの施策は?」などの初歩的なものから、「企業間連携はどうするの?」「DX人材を育成するには?」などの具体的な質問まで、色々とあります。
セミナーや講演会の聴講者の方々は、もうひとつのDXとして紹介した消極的DX推進が多く、もうひとつのDXの推進が重要であると痛感しましら。
なおこのマンガFAQは左側に(真面目な)解説と、右側に(ツッコミが厳しい?)4コママンガでのやりとりで構成しています。マンガには色々なツッコミに細かなネタを仕込んでいますので、お楽しみください。
DX事例
製造分野DX推進ガイドの作成のために、2回に分けて合計25社にヒアリングを行いました。ヒアリングの時期はちょうどコロナ禍前とコロナ禍後になっています。私はこのヒアリングに参加し、対象の企業の約1/3に訪問し、また何社かはオンラインでのヒアリングに参加しました。
これらのヒアリング対象の企業では、もうひとつのDXとして取り上げた消極的DX推進ではなく、積極的にDX推進をしている典型的な企業です。それぞれリソースが小さい中小企業ですが、社長自ら、創意と工夫でDX推進の施策を実施していますので、ガイドの事例集を参照してください。
この事例集のダウンロード数はマンガFAQに次ぐ人気のコンテンツです。でも注意してほしいのは表面的にはやっている感ができますが、「真似事では成功しない」ということになります。
(参考)DXレポート
経済産業省(METI)が公開しているDXレポートを本講演の付録として記載しています。
日本におけるDX元年となったきっかけは、2018年9月に公開されたDXレポートです。このレポートではDXの定義として企業活動にスポットを当てています。日本企業の課題として、事業部門ごとに構築したシステムがブラックボックス化しDXを阻んでいるという2025年以降に経済損失を生じる2025年の崖に言及し、レガシー刷新が必要であると訴えています。この「2025年の崖」というキーワードにインパクトがありました。
2020年の年末に出たDXレポート2では、コロナ禍によってITインフラを迅速に整えた企業とそうでない企業の差が拡大していると指摘し、「ユーザ企業とベンダ企業の共創」の必要性に言及しています。
2021年8月に出たDXレポート2.1では、「デジタル産業」の姿と企業変革の方向性を提示しました。
2022年7月に中間報告が出たDXレポート2.2では、デジタル産業への変革に向けたものとして、デジタル産業宣言(コストよりも価値重視など5項目)とデジタルガバナンスコードについて言及しています。
これらのDXレポートは日本企業全体に啓蒙する目的で公開されていますが、本講演では日本の中小企業、消極的DX推進の企業に向けて、DXレポートを製造現場の現場向けに紹介しました。
以上で今回の講演の紹介は終わりになります。ここまで見ていただいてありがとうございました。
講演での結論は「もうひとつのDX推進の鍵はSD」です。