空想日記〜長い初恋〜

膝丈のスカートに生えたままの眉毛。

そんなあの頃の私が恋をしている。

ずっとSくんが好きだった。長い初恋をしていたように思う。

しかし大抵の初恋は賞味期限がくる。そして、無理やり食べようとして後悔するものだ。

恋に限らない。あの人に会いたいと思っても、もうあの人には会えない。あの人の延長にいる人でしかない。だから同窓会の幻滅はこの世の理なのだ。

Sくんはあの人にならない。変化したそれもまた彼で私は前よりもっともっと好きになってしまうのだから。

変わっても変わらず想えるなんて一種の才能のように思う。朝寝癖を疎ましく思っていた私が見たSくんも、近頃クマが目立ちコンシーラーで隠す私が見たSくんも全部好きなのだ。

もちろん、嫌いなところだってあるけれど、そんなのどうでもよくなる。

私だって恋をしてお付き合いなんてしてみたこともあったが、全部味気ない。

どんな男たちよりも一番私を幸せにしてくれなさそうな、そんなあなたがいい。

しかし私はなぜ彼と結ばれていないのだろうか。こんなにずっと愛しているのに。彼も私を突き放さないのに。

私は彼以外なんてありえないからここで踏み出す!

そんなタイミングはいくらでもあったのにSくんの胸に飛び込んだことのない私はきっと薬指を噛みちぎって死ぬのだ。

彼の学ランのボタンを眺めて、20歳の時に彼がくれたアクセサリーを眺めて、彼に返信をして眠りにつく。

そこのあどけない少女よ、何度でも同じ人に恋をしてもいいからどうか幸せになってくれ。


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