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本当は退職金なんか払いたくない/退職意思の撤回はできるか

佐藤ひろおです。早稲田の大学院生(三国志の研究)と、週4勤務の正社員(メーカー系の経理職)を兼ねています。

さいきんは、中小企業の経営者向けの「税理士」のyoutubeチャンネルをよく見ています。会計の話、税務の話、おもしろいです。

退職に関する経営者の本音

税理士が経営者の目線で言っていたのは、
これから辞めていくひとに、退職金なんか払いたくない。その退職によって、業務を引き継ぐ社員がいる。残った社員は、仕事量が増えて苦労する。残る社員にボーナスを払いたいぐらいだ」
とのこと。そうですよね。
円満退職は、基本的にはありません。個人的に応援したいと思う場合もあるでしょうが、それほど優秀な社員ならば、やはり今の会社でもっと活躍してほしいと思うでしょう。心から応援したいというのはマレで、多くの場合はトラブルや不満があって辞める」
ですから、
「退職金の規程なんて作ってはいけない。ルールを作ったら、その通りに支払わなければならない。社労士さんは、退職金の規程を作りましょう!と勧めてきます。なぜなら、規程を作ったら社労士さんの報酬になるから。しかし経営者は、退職金なんて払いたくないはずだ」
「退職金の規程がないから、採用力が落ちる(優秀な人材に来てもらえない)かも知れないという。しかし、入社する前から退職金をアテにしている社員なんて、来てほしくないですよ

すべての企業の経営者の本音は、まさにこれでしょうね。

会社が大きくなると株主と経営者が分離する。社長や人事部長ですら、「その機能を果たしているだけ」のコマとなります。オーナー社長の感覚が薄れ、ルールを作り運用しましょう、という態度が強くなる。
退職金を払うにしても”自分のカネ”じゃない。人事担当者は、社労士さんに外注して退職金の規程を作り、それを"手柄"にカウントし、自分の評価を上げようとするだろう。"ために"作る退職金規程です。
会社が大きくなると、むき出しの利害関係が薄れる。利益は最大化しないかも知れないが、勤務上のストレスが緩和されるだろう。ぼくは適度な「ゆるみ」は良いことだと思いますけどね……。

退職の意思を撤回できるか

日本企業は社員を「くび」にできないと言われています。
退職をめぐる言葉はタブーになってしまい、逆に知識が蓄積されにくい。会社側(管理者や現場の同僚)も、雇われている社員側も、「退職の仕方が分からない」「退職者の扱い方が分からない」という不幸な事態が起きているのではないでしょうか。
そして極端な「バックレ」「退職代行」へと振れる。

たとえば、「こんな会社、辞めてやらあ」は、会社員のあいさつみたいなものです。同期(あるいは社歴・年齢の近いひと)と、会社を辞めたい、会社を辞めたらどうなるか、という会話を必ずしたことがあるはずだ。
この「辞めてやる」という退職意思は、どのような取り扱い方をされるのか。ちょっとネットで調べました。

・口頭でも有効
・社員からの意思通達が会社に伝わった時点で有効
・社員からのお伺いなら、会社がOKを出した時点で有効
・社員は取り消せない(会社の合意があれば取り消せる)

とても簡単に、会社を辞めさせられちゃう(社員目線の表現)ですね。口頭でも有効だが、トラブルを防ぐために書面にしましょう、というアドバイスがあるくらい。
一般的な契約で、「口頭でも有効」と言われますからね。

「退職届」は社員からの一方的な通知だが、「退職願」は会社の意思のお伺いであり、「辞表」は会社役員か公務員が書くもので……みたいな区別もありますが、社会通念上、厳密な区別はない(どうせだれもよく分かっていない)ので、退職意思を示したよね、で括られるのが実情らしい。

社員が「辞めます」と言えばその瞬間に有効だし、「辞めていいですか」「どうぞどうぞ」という会話があっても、その瞬間に有効だ。そして社員のほうから取り消しができない。
ちょっとびっくりする内容ですけど(ぼくが平和ボケしてるだけ?)社員は軽々しく退職について口に出してはいけないんですね。

会社との交渉のカードに「要求が通らないならば、退職するぞ」と言うひとがいるかも知れませんが(ぼくはしませんが)、そんなのは相互依存でこじれまくったカップルの末路か、家庭内暴力の世界観です。ダメです。

退職意思を示したひとは要らない

退職意思の撤回を受け入れたとしても、オーナー社長は、「一度でも退職を口にしたやつは、もう要らない」と思うはずだ。
すべての社員が必ずいつか辞める(定年、死亡を待たずとも、転職は予期される)が、わざわざ退職を口にしたひとに、重要な仕事を任せたり、成長のチャンスを与えたり、評価を高めてボーナスを多く払ったりはしない。

ロコツな冷遇は訴訟のリスクがあるが、いちど退職を希望した社員を疎ましく思うオーナー社長を、「狭量だ!」と責めることはできないだろう。上の税理士のyoutubeで、改めて感じることであります。
訴訟リスクを回避しながら水面下で冷遇して使い続けるのは、経営者にとって面倒くさいし、職場の士気が下がるだろう。だから経営者は、「退職意思の撤回は認めません」と返せばよい。

少し「会社が強すぎる」ように感じなくもないが、もし社員に「退職します、やっぱ辞めるの辞めます、やっぱり辞めます、いや辞めるのを辞めるのを辞めるのを辞めます」と自由に言わせてしまったら、業務分担や穴が空いた人員の補充の計画が立たない。もはや経営が不可能になります。
「会社が強すぎる」と感じた時点で、会社員ボケしているのでしょう。

株主と分離した「サラリーマン社長」ならば、退職意思を示したひとの冷遇の度合いは薄まる。業務上の「リスク物件」として把握するぐらいか。オーナー社長に比べると、感情(思い入れ)が少なくなりがちです。

日本で社員はくびにされない!という、(欧米と比較した)総論をよく見聞きするので平和ボケしがちですけど、会社は必ずしも「福祉機関」ではないのだし、気をつけたいと思います。私たち社員一同、ありがたくもかしこき会社のために一丸となってがんばりましょう(←着地点を見失った)

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