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大学の科目登録はマッチングアプリ/2020年代の学生事情

佐藤ひろおです。会社を休んで早稲田の大学院生をしています。
三国志の研究を学んでいます。

ぼくは、早稲田大学 文学研究科の学生です。以下は、ぼくの所属する大学院の話ですが、
「いま、大学・大学院の科目登録ってこんな感じなのね」という、ココロの部分を書きます。他大学、他の研究科、他コースの学生、未来(2024年度以降)の学生さんにも、数字や言葉を読み変えながら、使って頂けるのではないかと思います。
より実感に即して言うならば、「1年前の自分に見せてあげたい」というマニュアルです。大学院から、「科目登録の手引き」という小冊子が配られるけれど、これが難解です。ココロが書いてないので難解。

いま、新年度の科目登録(受ける授業、単位を取りにいく授業)の登録が始まっています。学期が始まる前、3月中に始まるのは苛酷です。春休みだと思ってボケっとしていると、悲しいことになります。
なぜ、早くも3月中に始まるのか。なぜ数日ごとに締め切りがきて、学生にタイトなスケジュールが求めるのか。その理由は、科目登録がマッチングアプリだからです。

3月中旬ごろから、「科目登録の手引き」という冊子を、学生課で配布しますという通知があります。入学時に配られる分厚い封筒のなかにも、その案内があったはずです。
これは、ウェブで完全に同じものがPDF公開されるので、取りに行く必要はありません。
入学者のなかには、「遠隔地に住んでいて、引越がまだ」というひともいるはずです。このために登校し、冊子を受け取りに行く必要はありません。
紙であろうがウェブであろうが、どうせ読んでも意味が分からないので、心配しなくても状況は同じです。※むしろ心配になりますけど。

科目登録はマッチングがくり返される

ストレートで大学院に進学した22歳のひとは、「そんなの当たり前だろ」と思うかも知れませんが、
ぼくみたいに大学を卒業してから15年以上が経過し、「科目登録の仕方・雰囲気なんて忘れた」「技術が進歩し、むかしの知識が役に立たない」という大人の大学院生は多いでしょう。

むかしは、ぶあつい紙の冊子(シラバス)と、履修できる科目をまとめた巨大な紙(カレンダー)を配られ、教室に集められて説明を受け、登録用紙に手書きで書き込んだものだが……??※ぼくは2001年学部入学。
当時は、一撃で受講の科目が決まった。いわば、ほぼ一回会っただけで決まるお見合いでした。

こんにち、0次登録、1次登録、2次登録、3次登録があり、IT技術を利用したマッチングがくり返されます。

学生に受講希望をシステムで登録させ、一斉に集計します。マッチする度合いが高い順番に、登録が受理されます。
教室のサイズ、制度上の上限?、先生の希望する人数?があるはずで、全員が希望どおり受講できるわけではない。マッチングの度合いが低い学生は、抽選?成績順?教員の選択?により、受講が却下されます。※ぼくは学生なので内情は知りません。

マッチングの度合いとは何か?
授業を開講している先生との「距離」です。
大学院生には指導教員がつき、所属する組織(コース)がある。同心円状に捉えると、理解がなめらかです。
指導教員>コース>研究科>大学
という組織図があり、

・指導教員のコマは落選しない(むしろ強制登録)
・教員が違うが、同じコースは優先される?
・コースは違うが、研究科が同じだと受かる?
・研究科が違うが、大学が同じだとやや受かる?
・違う大学はむずかしい?(他大学での単位取得制度)

どの科目を登録するか、登録が認可されるかは、かなり浮動的です。N対Nのラブコール・お断りがくり返されるのが、ITを駆使した時代の科目登録のようです。
不特定多数の学生が、「先生の授業を受けたいです!」と申し出る。大学や先生の側は、判定ロジック?に従って超過人数をふるい落とす。教員、所属する組織に照らして、近い順に登録を確定させていく。

不運であるか、分不相応の希望をした(遠い先生ばかりを希望した)学生は、つぎのチャンスが与えられる。
この試行錯誤を、3月後半から4月なかばまでくり返す。試行回数を重ねることが必要なので、登録のリードタイムは短く、わずか数日間隔で何度も締め切りがきます。1日も気を抜けないタイトな時期となります。

登録の取り消しもできる?

大学院の科目登録は「マッチングアプリ」なのでした。もしも「お相手」がいま一つならば、取り消しもしたいですよね。

大学側は「取り消しはできません!」と言います。そりゃそうです。気軽な取り消しを認めていたら、マッチングアプリが機能しません。短期間で何回も、「希望者を募り、登録の可否を通知する」をくり返す。気楽な取り消しを認めたら、フローチャートの分岐が無限に複雑になります。
事務方としては、到底容認できない!!!

心情的には、「あなたを優先して採用したせいで、落選した学生もいるんですよ。かれらの怨念を背負って生きていく覚悟はあるか??」となります。※これは、制度の本質ではないけど。

ですから、実質的に「取り消し」ができる期間は、
・学生が登録を希望している
・その登録が、システムに受理されていない(まだ締め切りが来ておらず、集計処理が走っていない)
という、
ギリギリの隙間だけです。
たとえば、火曜日の授業を登録するか迷っている。次回の登録の締め切りが、翌日の水曜日だ。ならば、火曜日の1回目の授業にとりあえず出席し様子を見よう、となります。もし単位が取れそうならば、登録をする。単位が無理そうならば、水曜までに登録を取り消す。

情報の流れが上記のようなので、遠い組織の授業ほど、あとから変更ができません。変更すると、影響がデカすぎるので。なよなよとした意思しかないならば、他学科・他大学の授業を希望してはいけないでしょう。
※これは学生というより、事務方の声かも知れない(笑)

裏を返せば、「身内」ならば、システムを経由せずとも、紙で要望を伝えれば、何とかなることもある。
※何ともならないこともある

早稲田大学の文学研究科の場合、すべてが締め切られたあとも、エクセルシートに記入し、指導教員の承認をもらって提出すれば、自分の研究科のなか限定で、システムの仕様(フローチャート)にない対応をしてもらえることがある。
事務方としては非常に面倒くさいので、絶対にやめて頂きたいはずなのだが、救済措置だ。むしろ、「救済措置を設置しない合理的な理由を十全に用意できなかった」から、エクセルによる運用が残ったのだろう。
なぜ身内ならば、柔軟に可能なのか。システムで情報を大量処理する処理が挟まらないので。ここだけ、ぬくもりのある「ハンド」の世界。

取り消しができないときの注意点

科目の登録をしたが、先生が厳しすぎるとか、興味とあまりに違ったなどの事故が発生し、受講せずに「捨てる」という方法もある。

ただし、「科目登録をしたが捨てる」と、悪い成績がつきます。「不可」にあたる「0」点がつきます。成績の平均値(GPA)を気にするならば、これは汚点になります。
優(4点)がもらえるか、良(3点)がもらえるか、と、わずか1点差で競っているときに、1科目でも0点が参入されたら、平均値をリカバリーをするのがほぼ不可能になるだろう。※大学院生のGPA(成績の平均値)が、どこで使われるのか、どこに影響するのかは、別の話題です。

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