ハリス氏とトランプ氏の公約まとめ

ひろ理んです。

期末試験や実習が終わったので、今夜行われる討論会の前に出てきた情報をまとめておきたいと思います。現状ハリス氏は本当によく分からない感じですが、少しでも喋ってもらうことで今後の相場が見えてくると良いなぁと思います。


近年の大統領選の歴史と構図

以前までは民主党のバイデン氏と共和党のトランプ氏が対決すると考えられていました。しかし、6月下旬の討論会でバイデン氏の認知症っぷりが全世界に露呈してしまったので、結局は出馬を撤回することになりました。7月中旬のトランプ氏暗殺未遂事件がラストベルトの1つであるペンシルベニア州で起きたこともあり、一時はトランプ勝利が予想されていましたが、現副大統領のハリス氏が代わりに参戦することになりました。メディアによると彼女は特にノンポリの若者から支持を集めているようで、それまでのトランプ氏の勢いに陰りが見え始めたとされています。

歴史的瞬間
こんな感じ

ハリス氏支持率、対トランプ氏でバイデン氏上回る勢い-選挙戦一変か - Bloomberg
2024 National: Trump vs. Harris | RealClearPolling

今回の選挙で重要になってくるのは以下の図でいうところのピンク色の部分(スイングステート:大体いつも接戦になる州)で、逆に赤と青は正直どうでも良いです。その中でも特にペンシルベニアなどのラストベルトでの勝敗が近年の結果を左右しています。

ラストベルトの人々はメキシコや中国など他国の労働者に仕事を奪われてしまうことを警戒しており、そのため16年の時は自国産業を優先してくれそうなトランプ氏に票を入れる流れになっていました。それに、表向きはアホ丸出しに思えた発言の中に経済政策や他国への軍事介入の中断などを散りばめており、彼の発言を真面目に聞いてた人達に届いてヒラリー氏を破って当選する形となりました。

今回急遽出てきたハリス氏は明らかにリベラルで、支持者を見ても分かる通り主におセレブな方々やインテリ層などから支持を得ると見られますが、少なくともラストベルトの人々への関心はそんなにないだろうなぁと予想できます。

俳優マット・デイモン氏参加へ、NYでハリス氏向け資金集めイベント - Bloomberg

しかし20年度の選挙ではトランプ氏がさほど失業率を改善できなかったことへの失望などから支持を得られず負けてしまい、今回もオハイオ州を除いて両者が拮抗していることが分かります。ハリス氏はSNSを駆使したイメージ戦略が得意なようで、音楽やココナッツの動画(なぜ?)で若者を引き付けるなどしており、きっと彼女なら何かやってくれるだろうという考えがあるのでしょう。それと比べると現状トランプ氏に対する期待は少し低いですが、恐らくハリス氏は某増税メガネと同じように選挙中は喋らないことでボロを出さず票を得ようとする作戦だと思うので、彼が今後の討論会で相手にどれだけ喋らせるかが大事になってくると思います。
「冗長で曖昧、意味不明」カマラ・ハリスの初のインタビューを私はこう見る|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)


ハリス氏の公約

さて、バイデン氏が撤退を表明してから、メディアではハリス氏のことを「米国初の黒人女性の大統領候補」「マックでのバイト経験あり」としか取り上げていなかったように思います。言ったとしても「中間層を支援する」とかなり曖昧で、ウォルズ氏に関しても「元高校教師でフットボールのコーチ」という経歴しか触れられてないのです。彼女らは単なる多様性枠で、それぐらいしかアピールポイントがないのではないかと懸念していました。

ところが、そんな中でついに具体策が打ち出され、その1つに物価安定のために価格統制を推進すると発表されました。出来る限り控えめに言って酷いなぁと思います。
ハリス氏、経済政策公表-物価高対策を柱に家計負担減アピール - Bloomberg

①価格統制
どういうことかと言うと、そもそもコロナショック後のバイデン政権によるバラマキのせいでコモディティ価格が軒並み上昇し、企業の製造コストが上がったために製品価格も上がったので、ハリス氏の言う「価格のつり上げ」は存在していないのです。

消費者物価指数(CPI)
生産者物価指数(PPI)

グラフから分かる通りPPIはCPIよりも上がっているので、現状の企業収益は全体として低下し、値上げは強欲な企業のせいだという屁理屈は明らかにおかしいことが分かります。
この状況で値上げを禁止すると企業は価格転嫁できず倒産するしかなくなるので誰も安値で売ろうとしなくなり、店に物が並ばなくなって終わりだろうと思います。需要が供給を上回るので、結果的に物不足が続きインフレの根本的な解決策にならないのは火を見るよりも明らかです。ハリス氏が本当に大統領を目指しているのであれば、この公約を掲げる前にせめて教科書を読んでおくべきかなぁと思います。

3.4 上限価格と下限価格 | Principles-of-Microeconomics-2e-Japanese (mtoyokura.github.io)

ヨコヨコが続く

インフレ率の前年同月比は+3%程度にまで低下しているものの、絶対水準としては依然高いままであり、価格統制が上手くいかなければやがて経済全体を管理するだろうと予想しているのがトランプ氏やイーロンマスク氏です。彼らは勿論ネット上で叩かれましたが、個人的には全く正しいように思えます。
「ハリス氏は国を共産主義化」 経済政策を批判―トランプ氏:時事ドットコム (jiji.com)
イーロン・マスク氏、ハリス副大統領が共産主義の制服を着た偽画像を投稿 - CNN.co.jp

②脱炭素政策
他は現政権と変わらないように見えますが、ESGやSDGsと耳触りの良い言葉を並べて脱炭素政策をより強力に推し進めるようで、エネルギー価格の更なる上昇を招きかねないなぁと思います。グリーンニューディールは太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及だけでなく化石燃料の採掘業者を締め出す強硬策でもあるので、化石燃料の供給が減れば値上がりするのは必然です。勿論化石燃料は有限なので再エネへの移行を否定する訳ではありませんが、化石燃料の供給ではなく需要を減らす政策でないと風呂に入れなかったり冷暖房が付けられないなど大変な目に遭うと思います(しかし多くの人々は音楽やココナッツの動画に夢中になってるので気付かない)。
COP26、化石燃料への公的融資停止で19カ国が合意へ=関係筋 | ロイター (reuters.com)
水シャワー、ドライヤーなし、暖房制限… エネルギー危機で電気代が高騰、ドイツで広がる「節約」の数々 | Business Insider Japan
世界中で猛暑の夏、2年連続で記録更新 - CNN.co.jp
テキサス州電力価格、約100倍に急騰-供給ひっ迫で夜間の不足警戒 - Bloomberg

原油
天然ガス

一部の富裕層は予めエネルギー資源を買って寝ておけば利益になりますが、中間層以下はどうすることもできないので、結局はアメリカの社会的階級の固定化、更には分断加速に繋がるのではないかと思います。

アメリカンドリームはどこへ?

③医療費ローン免除
医療債務の帳消しも行う予定でいるらしく、バイデン氏が奨学金をチャラにした時と変わらないなぁと思います。仮に医療費が免除されれば返さなくて良い借金として人気になりますが、その結果本来切り詰めるはずの債務者の需要が増えるだけでなく、お金を貸す側より借りる側が多くなるので金利上昇は避けられません。また、今回免除を受けたか否かに関わらず国民全体の医療費が上がるので、皆で苦しむという共産主義の悪夢がのしかかってくると思います(一番負担が大きくなるはずの若者の多くは音楽やココナッツの動画に夢中になってるので気付かない)。
24年度赤字額は300兆円、米議会予算局が見通し…学生ローン免除措置などで拡大 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

④含み益への課税(資産税)
バイデン政権やサンダーズ氏に引き続き資産を持つ者への課税を強化し、中間層以下に再分配する動きを加速したいらしいです。貧富の差があってはいけない理由は、それが内戦や分断に繋がる可能性があるからだそうです。
ここで、何故「含み益」に課税する必要があるのかと言うと、制度上は所得に対して課税されるので、利益が確定していない含み益に税金が発生することはなく、富裕層はこれを利用して節税を行っているからです。もう少し詳しく説明すると「buy, borrow, die」というやり方をとっています。
やり方としては、
①富裕層が株などの資産を買う(創業者であれば最初から株を保有)。
②資産が値上がりしたところで売却すると利益が実現し課税の対象となるので行わない。創業者は自分に給料を払うこともできますが、やはり所得税が発生するのでやらない。
※Facebookのマークザッカーバーグ氏の給与が1ドルというのはこのこと
③株などの資産を担保に現金を借りて不動産などを買う。
④(日本は例外ですが)外国は相続税が低い、あるいは無いので、本人が死亡したとき、その子供が資産を受け継いで同様の手順を繰り返せる。
⑤結果として誰も税金を払わなくて済む。

信用があれば低コストで現金を借りられるので、このように借金を上手く使うことで節税し、政府による搾取から資産を守ろうとしています。余談ですが、InstagramなどSNS上で大金を持ってますよアピールをしてる方はお金持ちというより金遣いが荒いだけかなと思います。節税を意識してれば普段から札束を持ち歩くような真似はしないです。

民主党からの金持ちから巻き上げろという声は聞こえは良さそうですが、そんな強硬策に移れば利益が実現していないために現金を持っておらず、成長途中の特に中小経営者への負担が一気に大きくなってしまうのでとても公平であるようには思えません。もしこれが行われれば資金および資産の置き場として不適なので、富裕層たちの国外脱出もあり得るのではないでしょうか。公平性を重視するなら脱炭素政策や金融緩和をやらなければ良いと思います。

そもそも民主党が完全に忘れてるのは、意地でも金持ちから金を吸い上げようとするのは完全な共産主義であるということです。例えばロシア革命以降のロシアは、自ら生産的になろうとせず富裕層の富を奪って生活しようとしたため貧困国に陥り、やがて滅びました。頑張っても頑張らなくても報酬が同じであれば、人々は更に働かなくなり、衰退していくのは容易に想像できます。
税制の話ではいつも富裕層と中間層以下の対立が挙げられますが、政府は税金を「収入」と呼んで好き勝手に使っているので貧しい人々に行き渡ることはないと思います。アメリカだと分かりにくいですが日本を想像すると分かりやすいです。仮にきちんと分配されたとしても、金銭では長期的な生産性の改善に繋がらないのであまり効果的ではないように思われます。我々は政治家の話を鵜呑みにするのではなく、与える側と与えられる側の関係を今一度疑ってみるべきでしょう。

以上をまとめると、ハリス氏は素人の思いつきよりも酷いアイデアしか持ち合わせておらず、全くお話になりません。これでも支持が集まるらしいので政治家は楽な仕事だと思います。


トランプ氏の公約

共和党のトランプ氏はハリス氏と違ってはっきりしており、減税、低金利、親化石燃料を掲げています。前回のトランプ相場と同じように動くのではないかという考えは短絡的で、現在は昔と違ってインフレが問題になっているので、その辺りを考えながら見ていきたいと思います。

①減税
前回は法人税を35%から21%まで引き下げ、これが税引き後の企業利益を増やすという見方から株が上がっていきました。つまり減税は金利低下と同じような意味合いを持つことになります。今回は可能であれば15%まで下げたいとのことで、そこそこ大きいなぁと思います。

しかし今回の下げ幅は以前の半分以下なので、それほど企業に効くとは考えにくいと思います。確かに減税によりトランプ政権時(17~20年)の企業利益は約1割増えているので、今回はざっと5%ほどの上昇になるのではないでしょうか。知らんけど

下図から法人減税でも税収全体がさほど変化していないので、法人減税の代わりに個人負担が大きくなったと考えられます。家計が苦しくなるのはヤダなぁというところですが、少なくとも税収が変わっていないので全体として見れば経済成長・インフレには貢献せず、他の条件が同じであれば株の上昇も限定的になるのではないかと思います。お金は天下の周りものと言いますが、企業が減税分の資金を内部留保の形で残しておけば世の中に出回らないからです。

法人税の他に、前回はTax Cuts and Jobs Act(TCAJ)という税法の見直しが行われました。これで減価償却費をわずか1年で一括で計上できるようになりましたが、来年期限切れを迎えます。今回彼が当選したとして、これを更新したとしても、他に変更がなければ経済効果は現状維持だろうなぁと考えられます。
ですが金額で言うと10年間で4.6兆ドルもの減税になるそうです。現在のアメリカの政府債務は30兆ドル以上あるので流石に無視できず、財政はこれからも悪化していくことが容易に予想できます。
What Is the Tax Cuts and Jobs Act (TCJA)? (investopedia.com)
トランプ減税、延長なら710兆円の財政悪化 CBO試算 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

私見を言えば、前回彼が就任したとき、それでも上記の減税だけでは大した経済対策にならなかったので、恐らく今回も財政出動が行われてその全額が公共事業に費やされることになると考えられます。

財政出動は期待インフレ率および実質金利を上昇させるので、当然ですが名目金利も上がるでしょう。

この前提で話を進めると、4月下旬には明らかに弱っているのが分かりきっていたGDPが息を吹き返して景気後退懸念がしばらく吹っ飛ぶので、個人的にはドルスマイル理論が適用されて少なくとも初動はドル高で反応するんじゃないかと思います。

前年同期比の3.4%と比べて前期比年率が1.6%だったので確実に悪化
何をやっても下がってた相場が反転

一方で現在はインフレが問題となっているので、この状況下で財政規律を無視し財政赤字を積み上げようとすれば、前回と違ってドル安に襲われる可能性を否定できません。考え方を変えると紙幣は国債であり預金は最終的に国債に流れているので、債券市場からの資金流出はドル相場の転換を示すからです。為替は難しいなぁと思います。

②金利と原油価格の低下
彼は一昨年からの金利上昇によるドル高が輸出を阻害するだけでなく、金利上昇による国債の利払い増加を懸念しているようで、高金利が一種の自殺行為だと述べています。

金利を上げてインフレを打倒するのはある種の自殺行為だ。何故なら、債券の利払いがあるからだ。国債の利払いがアメリカを生きたまま食らってしまうだろう。

金利上昇により需要を減らしてインフレを抑制するという一般的な考え方とは真逆でびっくりしますが、以前指摘しておいた問題点を彼も認識していることが分かります。
これからのドル預金はアリか?|ひろ理ん (note.com)

上記①の説明から、景気が減速してないと金利が下がる余地などないように思いますが、彼が言うには化石燃料を掘りまくってエネルギーコストを下げることで金利とインフレの両方を下げられると考えているそうです。要はバイデン政権の脱炭素政策を廃止し、原油価格を下げればあらゆる物価が下がるのでインフレ減速に繋がり、故に金利も下げられるという理屈です。
アメリカ大統領選挙 トランプ氏のエネルギー政策は?LNG 石油回帰?EVは?「パリ協定」はどうなる? | NHK | WEB特集 | アメリカ大統領選

どうやら1バレル40ドルまで下げたいらしいですが、ここで彼の公約が実現できるか考えてみようと思います。
以下の図のように、アメリカは世界の原油生産量全体のおよそ15%を担っていることが分かります。

どの程度生産量を増やせるかは未知数ですが、上図からトランプ氏の在任期間中の生産量は毎年10%ずつ増えていることが分かります。仮にめちゃくちゃ頑張って3割増えたとしても生産量全体の4.5%ほどしか増加しないと予想できます。現在の原油価格は68ドルなので、他の条件が同じであればアメリカ単独で動いてもここから3ドル程度しか下がりそうにありません。米国の精製所の老朽化が進んでいるのと、高金利が続けば事業への資金流入が抑制されるため、これらの事情を鑑みても単独での生産量増加は限定的と言って良いでしょう。原油相場を動かしたいなら他国の協力が必要になってくるはずです。

ですがトランプ氏はイスラエル側を支持し、そんな中でサウジアラビアを含む中東諸国の協力を取り付けられるのでしょうか。誰も気にしていませんが中東情勢は確実に悪化しています。
イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点攻撃-ヒズボラ側も報復開始 - Bloomberg
ウクライナとハマスと世界大戦|ひろ理ん (note.com)

また、北海油田が枯れつつあり、シェールオイルの生産が急速に鈍化すると思われる状況で中国の化学工業が圧倒的な成長を見せており、原油需要が増加しているのが現状です。円安により日本企業が苦戦を強いられている隙をついてSHEINやTemuが台頭し、より安く手軽にお洒落したいという世界中の若者の欲望を満たすことでシェアを拡大しています。先進国では少子高齢化が問題となっていますが途上国はこれからも人口が増える見込みで、この先もエネルギーや化学製品の旺盛な需要が原油価格を下支えするとすれば、40ドルにまで下げるというトランプ氏の発言には疑念が残ります。
China and Climate: Shein and Temu Are Driving Oil, Not GM and Toyota - Bloomberg
中国発ECのTemuとSHEIN、米で急伸 利用者合計アマゾンに迫る 安さ支持、米政府は警戒 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
Riviera - News Content Hub - How China’s petrochemical sector is driving LPG demand (rivieramm.com)

それに加えて、トランプ氏の原油を押し下げたいという発言と戦略石油備蓄(SPR)の補充は矛盾しているように思えます。SPRは万が一に備えて蓄えられた石油のことで、バイデン政権のせいで採掘業者は生産量を増やせず原油供給量が減ったので、SPRを使って不足分を補うことになりました。一時期は7億バレル以上あった在庫が約半分にまで低下し、これを元の水準まで戻すには3.5億バレルほど買い上げることになります。
戦略石油備蓄補充、再選の公約に=トランプ氏 | ロイター (reuters.com)

アメリカの年間生産量は約44億バレルなので、年間生産量のおよそ8.5%を政府が買う形になります。つまり、アメリカの増産により原油価格が4.5%下落しても結局はSPRの補充によりその影響が相殺されてしまい、差し引き4%の価格上昇圧力が働くことになります。彼は本当にインフレを抑えるつもりがあるのでしょうか。


まとめ

ということでハリス氏はそもそも論外ですが、トランプ氏を支持できるかと言われれば微妙なところです。2人に共通して言えるのは、どりらも財政規律を意識しておらず、更に負債を積み上げる可能性があることです。ドルが基軸通貨となってから今日に至るまで、政府がいくら財政赤字を垂れ流してもドルが売り込まれることはありませんでしたが、同様のバラマキをイギリスがやった時は株・国債・通貨のトリプル安に追い込まれています。日本の場合は我々国民に向けられた借金を破綻させない代わりに岸田コインの紙くず崩壊感が漂っており、債務者には大変喜ばしいことです(円建てで考えない外国人から見れば日本国債の保有により7割ほど購買力を失っている)。

上方向に向かいそうにない
トラス政権のときはこう

世界中の人々がドルを買えばそれが米国債に流れるので、今まではいくら刷り続けても問題がなかったように思いますが、西側以外の国々はドルを持っていると経済制裁を食らう可能性に直面したためドル保有を控え、自国通貨での決済に切り替えたり、米国債ではなくサウジアラムコ社債を握るようにするなど大きな変化が見られています。そんな中でドルが欲しいと考えてるのは日本人ぐらいでしょう。円よりはマシなのかもしれないけど。

ハリス氏が当選した場合の経済対策がまだ何も見えないですが、どっちに転んでも財政赤字の拡大とインフレになりそうな気がします。現段階で最も確実性の高い賭けは金利上昇、即ち債券価格の下落で、逆に為替はドル安になる可能性を完全に否定できないので今のところそんなに触りたくないと思いました。ひとまず11月まではリスクオフで国債が買われるでしょうから、それまでに金利上昇へのポジションを張ってみても良いかもしれません。また、原油も景気減速を織り込んで下がっていくと思いますが遊びの範囲で買いつつ、下落を航空株でヘッジするのも良さげかなと思います。知らんけど

ところで、先月ジャクソンホールでパウ爺が「利下げの準備ができている」などと発言しましたが、その後の雇用統計では失業率の上昇トレンドが確認できただけでなく、インフレの構成要素の1つである平均時給の伸びが見られ、実体経済が悪いのに物価はそう簡単に下がりそうにないというスタグフレーション的な結果となりました。

失業率は底から0.7%以上増加
平均時給

政府債務が積み上がり中立金利が上昇したとすれば、現在の金利でインフレを抑制できないので利下げは時期尚早で、マクロ的にはどうも1975年と似た環境であると思います。当時はインフレ率の低下とともに利下げが行われましたが、タイミングが早すぎただけでなく下げ幅が大きすぎたためインフレがぶり返しました。

討論会がまだなので決めつけるのは良くないですが、もしインフレシナリオに賭けるのであれば貴金属が一番簡単だと思います。今と昔を同じように比較してはいけませんが、仮にトランプ氏に決まる場合、最初は実質金利上昇による金・銀価格の短期的な下落が考えられるでしょうから、下がったところを押し目買いするのも良いですし、実質金利に影響しない銅を買っておくのもアリだと思います。また、脱炭素政策が廃止されてEV車からガソリン車への回帰が進むと考えた場合、今まで散々嫌われていたプラチナ買いも選択肢の1つになるでしょう。銀・銅・プラチナは金と違って実需に左右されるので、もし景気対策が無ければ今より下がる可能性を否定できませんが、通貨が信用できない人にはおすすめです。

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