トランプ氏が勝利した背景と、日本円の寿命はそこまで長くないという話

ひろ理んです
日本はあまり興味ないので後ろの方に書きます。


米国大統領選の結果とその理由

先日の大統領選は共和党のトランプ氏が勝利する形になりました。
少し前に書いた記事では「スイングステート以外は正直どうでも良い」とした上で、ハリス氏がラストベルトの人々について真剣に考えていないと指摘しました。結果として、ハリス氏はセレブ受けは良かったですが中間層以下からはそこまで支持を得られず、ペンシルベニアなどを奪還されることになりました。
ハリス氏支持の芸能人落胆 「労働者置き去り」で裏目か―米大統領選:時事ドットコム

こんな感じ

図中の灰色のところは以下のようになっており、ここでも概ねトランプ氏優勢なので、今回は想像以上にハリス氏の人気がなかったことが分かります。日本のメディアだけを鵜呑みにしていた人は驚くでしょう。池上ナントカ氏の言うことが常に正しいとは限りません。金融市場にとってバイアスは時に命取りとなります。

彼女は最初の期待が高かったために、その後少しでも滑るような発言をすることで着実に支持を落としていきました。一方でトランプ氏は今回も期待値が低かったために何をやっても許される状況でした。討論会でのペット食べた・食べない論争によってハリス氏が更に優勢になったようにも見えましたが、この後彼女は舐めプに走りました。頑張らなくてもいけると思ったのでしょう。

「アイオワをなめるなよ」と言われていたのに、同州を落としてしまったハリス陣営。同州を一度も訪問せずに選挙戦を終えたことを、今ごろ悔やんでいるかもしれない。2016年にヒラリー・クリントン氏がトランプ氏にまさかの敗北を喫した一因が、ウィスコンシン州軽視だったとの分析があったことを思い出します。

アメリカ大統領選2024 開票速報 - Bloomberg

しかし、トランプ氏はその間に実際にマックでバイトなどをすることで行動力をアピールしていました。支持率が逆転する中で民主党が焦り始め、彼女は頑なに拒んでいたメディアに急遽出演し始めましたが、返ってボロを出すことで更なる支持を失い、認知症のバイデン氏によるごみ発言でとどめを刺されました。16年のヒラリー氏も含めて民主党は敵をボロクソに貶しますが、トランプ氏の誰であっても尊重し敬意を表する態度から有権者の見方が変わったのでしょう。彼の紳士的な態度はプーチン氏との関係改善にも繋がっているはずです。

米マクドナルド、政治には関与しないと表明-トランプ氏がバイト体験 - Bloomberg

また、経済政策についてはハリス氏よりもトランプ氏の方が上手であることは明らかでした。景気減速懸念が深まるほど、自身の生活のために彼を選ぶ人々が増えたことも忘れてはいけません。実際、米国の若者は経済や将来を憂慮しており、自身が両親より豊かになるとは思えないと考える人が一定数います。日本人の感覚からすると分かりにくいですが、高級品を買い漁る「破滅的消費」という行動が観測されています。
米国の若者が「破滅的消費」-貯金はたきシャネルの37万円バッグ購入 - Bloomberg
米国の若者、借金漬け深刻に-「破滅的消費」で負債増の一途 - Bloomberg

仮にハリス氏が当選しこの問題を解決できたとして、そもそもの期待が高いのでさも当然であるかのように受け止められるでしょうし、できなかった時の失望はかなり大きいはずです。初期期待が低いトランプ氏だからこそハードルを跳び越えたときの評価が大きく、失敗してもダメージを受けにくいのです。このように、期待感が上乗せされていない方が有利なのです。


市場の動きと今後の戦略

市場は金利上昇・ドル高を演じました。ドル円はかなりの程度金利に従っているので妥当な動きと見て差し支えないです。この状況でファンダメンタルズと逆向きに意図的に動かそうとしているどこかの国の為替介入は、極めて投機的だと思います。
財務官「極めて高い緊張感を持って注視」、円安けん制のトーン強める - Bloomberg

金は安全と見なされて買いだという声が多かったですが、やはり実質金利上昇の結果下落しました。1日の下落幅としてはそこそこ大きいように思えます。もっとも、債務膨張を懸念して買われているので今空売りするのは分が悪いですし、買いが決して悪いアイデアだとは思いませんけど、16年と同じように一度下げてから反発をイメージしたいです。当時と違ってインフレを加味すればそこまで下がらない可能性もありますが、良いものは安く買ってこそ利益になります。
最近の金利低下はスタグフレーションの第一歩|ひろ理ん

当時はリスクオンが一定期間続きましたが、その後の各国の緩和姿勢から買える通貨がなくなり、消去法的に金が買い戻される傾向にありました。現在、トランプ氏はインフレにどう対処するのかと聞かれた際に「経済成長が最優先だ」などと答えています。後述の日本とも関係しますが、経済全体の成長がインフレを意味するとも解釈できる(恐ろしい!)ので、買ったコモディティは売らずに保管しておくのが良いでしょう。

当面の頭は2800ドル付近だと思う

先月、ソロスの右腕とも言われるドラッケンミラー氏が長国空売りに賭けたようです。彼より1ヶ月前にここでアイデアを公開できたことを嬉しく思います。市場には株式以外にも様々な選択肢があり、自由に選べるのは良いことです。なお、トランプ相場は既に織り込まれているので今からドル円を買っても仕方がないです。
ドラッケンミラー氏、市場はトランプ氏の勝利を「強く確信」 - Bloomberg
ドラッケンミラー氏、FRBが「ガイダンスに縛られないこと望む」 - Bloomberg

先日のFOMCに関して書くことはありませんが、トランプ相場が織り込まれた後の揺り戻しの1つに過ぎないと思います。しかしアメリカの財政が持続不可能なのは明らかで、根本的な問題は解決されそうにないので、いずれどこかのタイミングで金利は大きく上がらざるを得ません。株安・ドル安も引き起こすでしょう。でも16年~18年を振り返っても特に株式市場は金利を無視して動く様子が一定期間見られるので、そのラグを読まなくてはいけません。金利高が多くの人々の間で有害と認識されるまで数年かかると予想すれば、それまでは下手に動き回らず新興国や日欧を注視しながら待つべきだと思います。
〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨 | ロイター


政府効率化委員会

トランプ政権に関する具体的な情報がまだ入ってきていないので、今後もしかしたら考えを改める可能性がありますが、少なくとも現時点で分かり切っているのは以下の通りです。
・減税延長
・原油採掘増加
・政府効率化委員会の設置
・ロシア・ウクライナ戦争の仲介

このうち上記2つは以前書いたので、ここでは下記2つについて簡捕に捉しておくと、政府効率化委員会はアルゼンチンのミレイ大統領と同じように政府の無駄遣いを減らす組織です。日本では政治家どもが自分達の好きなように税金を湯水の如く使っていますが、そうした人達のせいで債務が膨れて通貨安を招き、国民の生活が苦しくなっているとしてミレイ氏は無駄な組織をどんどん消していきました。その結果、財政赤字を削減し市場からの信頼を取り戻すことができました。
1月のインフレ率254% 経済危機のアルゼンチン 世界最高水準 - 産経ニュース
アルゼンチン大統領の支持率回復、歳出削減策を市場は評価 | ロイター

アメリカの30兆ドル以上もある政府債務に金利がつくようになったので、どうにか減らそうとしても中々できるとは思えません。債券を保有するつもりは全くないですし、個人的にはドルの購買力は最終的に大きく毀損されると思いますが、それでも財政規律を正そうとする姿勢から、ドルの寿命はいくらか延長されるのではないかと考えます。これはイーロン・マスク氏の提案によるものですが、ビジネスへの興味が無くなったのか最近はまともな言動をとるようになったと思います。
他に、債務削減によりトルコリラは売り浴びせが止んだように見えます。財政規律という点からすれば、リラ円は以前より魅力的かもしれません。

トルコが包括的な財政緊縮策、歳出削減や公共投資絞り込みへ | ロイター
S&P、トルコ長期ソブリン格付けを「BB―」に引き上げ インフレ抑制評価 | ロイター


ロシア・ウクライナ戦争の終結

そして、トランプ氏が返り咲いたことでロシア・ウクライナ戦争は無事終結するのではないかと思います。これは世界にとって良いことです(ソロス氏やペロシ氏にとっては悪い方向に動くでしょう)。
この戦争は国民同士の争いというより、民主党の政治的関係から勃発したものでした。彼は以前「他国の政権転覆をやめさせる」として例えばアサド政権の反勢力派への武器輸出を止め、戦争屋が起こしたイベントを撤回することで世界平和に寄与しました。
米政権、シリア反体制派に対するCIAの支援を中止=当局者 | ロイター

ウクライナの戦況は日本の報道とは異なり敗戦濃厚であること、半年ほど前からゼレンスキー大統領がトランプ氏に対してごまをするような言動が多く見られたこと、そしてトランプ氏が原油下落を望んでいることを踏まえれば、これ以上事態を悪化させようとは思わないはずです。戦争を長引かせるのは誰にとっても良くないので、互いの妥協点を見つけて素早く決着をつけようとする姿勢は、彼がビジネスマンであることを意味してます。ロシアと仲良くするのは良いことだと思います。

ロシアにとってウクライナのNATOへの加盟は脅威になるという話はもう昔からされている。そして、それが今回の戦争を引き起こした原因だ。バイデン氏は間違ったことを述べている。その1つは、ウクライナがNATOに加入するということだ。それを聞いて、彼は戦争でもするつもりなのかと思った。
私が大統領だった4年間にロシアがウクライナを攻めることはなかったし、ウクライナを攻めようともしなかった。しかし、私がいなくなってすぐにロシアは国境付近に並び始めた。(中略)元々原油価格は低かったが、100ドル以上になった。戦争中に利益を得られたのはロシアだけだ。しかも、原油価格は未だに高い。


中東情勢の悪化とその経緯

しかし、彼が親イスラエル派であることには注意です。早速ネタニヤフ氏と会談したようで、イランによる脅威などについて協議し、イスラエルの安全保障を巡り協力する必要性を確認したと報じられています。
(中東問題は宗教だけでなく、娘のイヴァンカ氏も絡んでいるように思える)

イスラエルは大きな後ろ盾がついていると解釈したようで、彼の当選が分かった途端に爆撃を行っています。イランは産油国として小さいですが、周辺諸国はドン引きしており、原油価格への影響が懸念されます。また日銀は油田ではないので、原油上昇に伴う日本の交易条件悪化から円売りについても考えなくてはいけません。
イスラエル首相がトランプ氏と電話会談、「イランの脅威」など協議 | ロイター
イスラエル軍の攻撃で38人死亡 レバノン東部、首都も空爆:東京新聞 TOKYO Web
ウクライナとハマスと世界大戦|ひろ理ん

今年最初のイランからの攻撃は試し打ち的なもので、ノドン(左)に類似のシャハブ3(右)やドローンが使われました。これらは遅いのでイスラエル側は余裕を持って対応でき、ほとんどが撃ち落されました。
イスラエル攻撃に使用の兵器 イラン側が公表 - 2024年4月15日, Sputnik

ところが先月は最新の超音速ミサイルが使われ、イスラエルに対する実力を見せつける機会となりました。イスラエルは面子を保つために報復を行いましたが、流石にビビったらしく限定的なものとなりました。これにより当時は今後の戦闘を介した交渉に進展が見られる可能性が少しはあったのですが、どうやら再び調子に乗ったようです。

ここで気を付けるべきポイントは、イランのナスララ師が暗殺されなければ事態は激化しなかったということです。彼は元々停戦に合意していましたが、それを知ったイスラエルが待ち伏せし、上手く誘き寄せて大規模な爆撃を行いました。

AIM-120は空対空ミサイル

F-15には2000ポンド爆弾を7発も搭載したことが明らかになりました。搭載量が増えるほど機動性が低下するので、ゲームでもなければ普通はあり得ず、極めて異例の形態です(B-29と同等)。出撃したのは少なくとも8機で、56トン以上の爆弾を投下したことになります。たった1人を暗殺するためによくここまでできるなと感心します。

これに対してハメネイ師は激怒し、壊滅的な打撃を宣言して大規模な反撃に出ました。今回はヘイバルシェカン(左)とファター1(中)が使われ、後者はイスカンデル(右)の2.5倍の速度を誇ります。

その結果、イスラエルの防空システムが前回の報復で無能であると証明されてしまいました。イスラエルの防空システムは以下のように4層構造となっています。

その中で中層を担当するダビデスリングは1発あたり100万ドルと高く、実戦配備が進んでいない状況です。駆逐艦からのSM-3も1発3000万ドル以上するので12発しかなく、代わりのPAC-3は機動性が低く動かすのに時間がかかるという欠点があります。それにパトリオットは1発400万ドルもするので、同様に気軽に撃てるものではありません。つまり、多くの飛翔体に対して不向きです。

下層を担うアイアンドームのタミルミサイルや大気圏に向けられるアロー2はVT信管を採用しているので、攻撃対象を直接迎撃するのはなく近くで爆発し破片を散乱させることで破壊します(日本でいう三式弾の上位互換という認識で良い)。一般的にVT信管はマリアナ沖海戦から使われるようになり、機動部隊に接近した日本機をことごとく撃ち落としました。

キトカン・ベイ上空で撃墜される日本軍機
ホワイトプレーンズより

しかしVT信管は戦闘機やドローン、迫撃砲の撃墜には向いていても、音速の10倍以上もある弾道ミサイルに対してはほとんど無力です。故に対象を直接狙う必要があるのですが、先述の通り数に限りがあります。また、ファター1はマッハ15であり、しかも相手はまだまだ沢山持っているので、数の暴力を受けたらどうすることもできません。今回の飽和攻撃は予め通告されていたのでイスラエル側は準備する体制を整えていたはずですが、それでこの結果なので軍事的関係の優劣がはっきりしたのではないかと思います。核を使えば変わるけど。
イランは12時間以内にイスラエル攻撃へ、弾道ミサイルで-米高官 - Bloomberg
焦点:イランのミサイル攻撃、大規模かつ複雑に イスラエル防衛さらに負担 | ロイター

イスラエル軍は多数の飛翔体が同時に発射された場合、アイアンドームを含む防空システムが対処不能になる恐れがあると認める。ヒズボラやフーシ派が発射した小型無人機も昨年10月以降、イスラエルの防空システムをすり抜けており、ハマスがイスラエルに大規模奇襲攻撃を仕掛けたのは、ちょうどそのころだ。

イランの報復受けたイスラエル、防空システムは有効か-QuickTake - Bloomberg

イランへの更なる刺激はイスラエルの首を絞めるだけなので、丸く収まるよう努めるきです。イスラエルは比較的裕福な国で、多くの人が徴兵から逃れることもあり、兵力全体を鑑みればチェックメイトがかけられているようにも見えます。トランプ氏は今後どう動くのでしょうか。
イスラエル、さらなる強硬路線の可能性 トランプ氏勝利、イランは対決姿勢―米大統領選:時事ドットコム

ちなみに日本ではミサイルの9割以上を迎撃できたと報道されていますが、正確には目標として捕捉できたうちの9割なので、動画でも分かる通り実際にはほとんどが突破されてしまいました。誤解を招く表現だと思います。


防衛株などの紹介

さて、このようにイスラエル・パレスチナ問題は改善する気配を見せないので、今後どうなっても良いようにヘッジが求められます。防衛株は市場全体の動きと連動していないので、分散投資として最適です。防衛産業が注目されるとすれば、真っ先に思いつくのはパトリオットの製造元であるレイセオンだと思います。パトリオットは確かにイスラエルにおいて役立たずですが、自衛隊なども保有しているだけでなく、他にトマホークやシースパロー、ジャベリン(駆逐艦ではない)なども作っています。戦争は竹槍からボタンの時代になったので、上昇傾向は妥当かなと思います。

日本株で言えば代表的なのは三菱重工だと思います。はやぶさ2といった探査機だけでなく、F-2やF-15などの戦闘機、SM-3の製造も手掛けています。上がってしまうと中々買えないですが、空売りするには分が悪いです。

他には地雷や機雷を作る石川製作所(石川島ではない)もあります。これは今でも低位に抑えられてますが、戦争では必ず歩兵が必要になりますし、多くの場合は艦船も使われるので良いと思います。

あと、艦これやエースコンバットは爽快感があって楽しいので良かったら試してみてください。

推しは大和(傘を持ってる子)です


日本は為替レートを犠牲に

日本の総裁選では石破氏が高市氏を破り、衆議院選では与党が押される展開となりました。

メディアでは過半数割れによる円安について様々な憶測を流していたように思いますが、個人的には積極財政派の拡大を懸念したものだと見ています。というのも、石破氏は日本の財政を立て直すことを念頭に入れており、例えば金融所得税を累進課税制にしようとしていた訳ですが、財政再建どころか野党の減税と現金給付の声の方が大きくなってしまったために更なる財政悪化の可能性が出てきました。
国は全くの文無しで、例えば支払った年金を誰が受け取るべきか熱心に議論しているのを見ると、非常に共産主義的であるように思えます。そもそも政治家が無駄遣いしてなければ起こるはずがないのですが、積み立てた分を負債ではなく収入と呼んで好きに使った挙げ句、正義を振りかざして人々から資金を奪い、その行き先を人為的に決めようとする国に希望はありません。
【年金】高所得者は停止?減額すべき?提言に賛否…なぜ世帯間対立に?バランス取れた制度にするには?|アベプラ

「選択と集中」というのは、パイが縮んでいるんだから、生産性のないメンバーにはパイをやるな、生産性の高いメンバーにだけパイを食う権利があるという露骨な弱肉強食イデオロギーのことです。それで25年やってきた。そしたら、日本はますます貧乏になり、日本の生産力はますます低下し、人々はますます暗い顔になってきた。もういい加減に「こんなやり方」をしてたら先がないということに気づいてよい頃です。
(中略)格差の是正のために、公権力が富裕者の懐にじかに手を突っ込んで再分配しようとしたケースは過去にうまくいったためしがありません。富裕者からいったん取り上げた財貨を貧者に再分配する前に自分の懐に入れてしまう誘惑に抗うことができた権力者は歴史上まれです。

なぜ日本は「生きている気」がしない国になったのか? 内田樹が考える“コロナ後の世界” 

そんな中で金をばら撒くというのは、つまり国債を発行し円を刷って対応することを意味するので、あまりにも無責任であると言えます。

昔のアルゼンチンはブラジルと肩を並べるぐらいの大国でしたが、政治家達が全員に富を分け与えるという考えに基づいて政府支出を増やし、需要を喚起することでインフレを引き起こしました。その後は蓄えた外貨準備を取り崩してインフレに対処しましたが、効果はなく、やがて誰もアルゼンチンを信用しなくなり今に至ります。

かつての日本はアメリカよりも経済力があり、円さえあれば世界中のどこに行っても何でも買える状況でした。しかし今の日本のGDPは円安により4位に転落し、外国人からは安い国だと認識され、あらゆるものが買い叩かれています。失われた30年を持ち上げたために、今後30年を地獄にしたのではないかと思います。困ったものです。
日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退 | NHK | GDP
外国人客は「1泊7万円は安いよ」ホテル高騰 日本人悲鳴「泊まれない」

勿論、様々な政治家が指摘する通り日本経済は確かに弱いです。以下の末廣氏も仰るように、景気減速のためインフレ率は低く、所得の半分以上を税金として持って行かれることもあり個人消費はマイナスとなっています。

日本は莫大な政府債務だけでなく景気も悪いので他国と同じような利上げはほとんど不可能です。国が正常であればインフレが起きても利上げにより国民の資産の目減りを補填することができますが、日本がそれを選べばアメリカよりも膨大な政府債務に火がつき、景気も更に悪くなります。しかし利上げを避ければドル円が上がり、インフレ率もどんどん上昇していく未来を真顔で想像する必要があります。

財務省はもとから政府債務を帳消しにすることを目的に、円の減価を誘導してきました。いわゆる財政ファイナンスで、円安が進むことで債務が目減りするので債務者にとって喜ばしいです。例えば1億円の借金があったとして、うまい棒が1億円になればその人の返済額はうまい棒1本分になります。最近の玉木氏の発言を聞いても、どうも低金利を維持したいようです。
麻生太郎氏による「日本の借金」の解説が超わかりやすい 「経済をわかってない奴が煽っているだけ」 | ログミーBusiness
追加利上げは来年3月まで回避を、春闘見極め必要-国民・玉木代表 - Bloomberg

数字というのは面白いもので、円は過去10年の間にドルに対して50%も価値を失いましたが、ここから更に50%下げることができます。ただしドルも減価しているので、購買力という観点からすれば更に価値を失っていることになります。

現在の政策金利は0.25%、短期金利は0.5%、長期金利は1%で、政府債務は260%、そしてインフレ率は2.4%です。金利も消費税も上げたくないのであれば名目成長率はインフレ率より高くなり、政府債務はGDP比で減少していくことが予想されます。つまり、国民の預金が紙くずになることで政府債務がチャラになるということです。現に、増税メガネは名目成長が過去最高だったと鼻高々に自慢していました。
一応、GDP比260%分の支出を一切行わないで債務を減らすという選択肢もありますが、何も生産せずに生活することは多分無理なので現実的とは言えません。政治家は今後も票欲しさにばら撒きを行いますが、我々は戦後のドイツを振り返っておくべきでしょう。

当時の賠償金はマルク(自国通貨)建てだった

という訳で、まずは紙幣があれば物が買えるという常識を捨てなくてはいけません。同級生の中にはお金持ちになりたい(あるいはお金持ちと結婚したい)人もいるようですが、これからは金があっても生きていけるか分からないので一度考え直した方が良いと思います。政治家が積み上げた債務をどうすることもできないので、実質金利を意図的に抑え、通貨安を受け入れるしかなくなっているからです。

こういう時市場はどうなるかと言うと、トルコのようになると思います。トルコはインフレに対して十分に金利を上げなかった結果リラが大きく売られ、株は跳ね上がりました。日銀の外貨準備は200兆円で、1日の円の平均取引量は約50兆円なので、全員で売り込んだ場合甘く見積もっても1週間もすれば絶好の空売り対象となるでしょう。
【NHK】トルコ 通貨リラ下落で何が起きているのか | NHK

例えば円建てで日経平均を買うとして、円が下落し日経平均が上がるとすれば名目上はノーダメなので、これからの選択肢の1つとして十分考えられると思います。ただ、アメリカの動きに従ってしまうのが厄介なところです。

他に資金逃避銘柄として外貨も挙げられますが、例えばドルは金利上昇に伴う債務の指数関数的な増加がほぼ確実で、ドル安のリスクがあるので個人的には長期的に弱気です。ユーロ圏は国によってインフレ率が違うので共通の金利を適用できるはずがなく、日本と同じく景気悪化か通貨安の少なくとも片方を選ばざるを得ない状況です。人民元はこの前の財政出動により初動は元高で反応しましたが、中国も日本やアメリカと同じ道を歩んでいくと思います。30年前の日本とやってることは同じで、目先の問題を後回しにすることで債務を膨らましているので、ずっと握っていたいかと言われると微妙なところです。財政規律が良好な国と言えばスイスでしょうか。

スイスフランショックの下限を突破

ただ、スイスフランも下落の可能性があるとすれば、そもそも通貨を持つこと自体がナンセンスなので、どの通貨に対しても売りをかけておくべきだと思います。そこで絶好のポジションが金や銀などの貴金属です。貴金属は世界中で価値貯蔵の手段として認められ無国籍通貨としての役割を果たします。また、どれも長期的にドルの減価を織り込んで上がっていますが、金を除くコモディティは独立して動いており、現在はその大半がインフレを織り込んでいない水準にあります。安いうちに買っておけば仮にドル建てで横ばいでも円安が進んだ時に支出増加をヘッジできるはずです。

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