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コモディティという選択肢

ひろ理んです。
「投資」と聞くと株や為替を想像しがちですが、市場では他にも様々なものが売買されていますし、人と違うものに注目するのは大事なので簡単にまとめてみようと思います。


金属


世の中に金を知らない人はいないと思います。実需としては宝飾品や金貨、関節リウマチの治療薬である金チオリンゴ酸製剤(第一選択薬ではない)として使われますが、投資需要が圧倒的に多くほとんど消費されません。
古来から金は貨幣としてだけでなく戦略的物資としても扱われており、例えば日本が日中戦争のために必要な資源は、アメリカ等を相手国として金を決済手段に取引してました。他の条件が同じであれば金準備の減少は輸入できる資源量の減少を意味するので、金は国家の命運を分ける重要な資源だったと言えるでしょう。

勿論、戦時中においても金は重要です。通常は戦費調達のために国債発行が行われますが、国家間が互いを信用せず負債を引き受けようとしないので国内消化せざるを得なくなり、通貨量がじゃぶじゃぶ増えて貨幣価値の減少が起こります。旧日本軍が進出したフィリピンでは、インフレにより現地人が円を信用しなくなったので、その代わりに物々交換の手段として2万5000枚もの丸福金貨を空輸したとされています。

太平洋戦争を通して円は実質的に1/50以下に下がった

採掘された金の大部分は第二次世界大戦を通してアメリカに輸送され、その後は金の預かり証としてドルが発行されていました。当時は1ドル360円として両替できたので円も金に裏付けされていたのですが、ニクソンショックによって変動相場制に移行し金との兌換が停止されて今に至ります。

さて、金はそもそも35ドルでしたが執筆時点では1オンスあたり2934ドルまで上昇し、円建てで見ても固定相場制の時が1万2000円だったのに対して現在は44万2000円です。金もドルや円と同様に通貨として考えると、法定通貨の価値が極端に薄まっていると考えることができます。不換紙幣はその仕組み上無限に刷ることができるので、金との兌換が停止された時点でドルは紙くずとなっていたのですが、多くの人が未だに紙幣をありがたがっているのは大変不思議なことです。

←日足 月足→

直近1年間の値動きを見ると、一昨年秋の実質金利急騰に伴う一時的な下落以降は右肩上がりを続けています。以前の記事に書いてある通りアメリカがイスラエルを支援したり日本も中国にちょっかいをかけるなどしており、世界情勢が少しづつ、でも確実にきな臭くなっているため、安全とされる金が買われたと解釈することはできます。

しかし、同時に金利も上昇傾向が続いています。一般に金利上昇は金価格を下落させるので、本来ならこの1年で1000ドルも値上がりしたことを説明できないはずです。

底打ちした期待インフレ率は異例の値上がりを正当化できるデータではなく、また利下げにも関わらず長短金利差が拡大しているため、米国債離れが進んでいると捉えることができます。

米国債は最も安全と見なされてましたが、国債などの債券はいわゆる債権なので相手が借金を踏み倒せば債務者は借り得できる一方、その分は丸ごと債権者の損失となります。アメリカは過去に何度も債務不履行を行っているため、信用が下がればより高い金利を付けないと資金を借りられなくなっています。ただでさえ膨大な負債を抱えているのに、そのベースとなる金利が上がれば複利効果で指数関数的に増えていくのは容易に想像できます。そしてドルは米国債の起債により発行されるので、米国債の信用低下に伴いドルも信用を失っているということです。でも金は物なので、その所有権が失われない限りその価値が失われることはなく、故に一部の人々が逃げ始めていると言えます。

日銀は何とか頑張っていますが、日本経済は利上げに耐えられるほど回復しておらず、更に負債がアメリカの倍あるので米金利の半分程度で債務スパイラルに直面することを考えれば、国債を守り通貨を下落させる緩和と通貨を守り国債を下落させる引き締めを行ったり来たりしながら、長期的には緩和方向に舵を切らざるを得ません。また、欧米諸国の不況の煽りを受ける中で日銀が単独で引き締めを強行することはできないので、要は通貨安への道しか残されていないことになります。通貨自体が下がるので、通貨ペアの強弱はもはや意味がないと思います。

12月会合では利上げ示唆にも関わらずほぼ動かなかった

金の時価総額は15兆ドル程度なのでちょっとした資金流入で価格変動が起こります。世界の債務残高は一昨年の時点で307兆ドルもあり、その8割を先進国が占める結果となっていますが、日本を含めた多くの国が成熟し成長力の限界が見えているため、市場に流通する紙幣を増やしたところで生産性は拡大せず物価上昇を招くことが想定できます。
紙幣がいくらあっても食べることはできないため、もし世界中の人々が紙幣を捨ててコモディティに殺到した場合、金市場の受け皿はそんなに大きくないので更なる値上がりが予想できますし、受け止めきれない分の資金は他の市場にも流れるでしょう。

米政府債務は220兆ドルあるのに対し米国が持つ金融資産は210兆ドルなので、現在のドルが高く負債を返せないことが分かります。これだけでもドルは下がらないといけないですし、暴落すれば更に借金を膨らませることになります。


金よりは実体経済と連動する金属です。昔は貨幣として使われてきましたが、現在は工業的に幅広く使われています。
銀の市場規模は約1兆ドルなので金よりも小さく、わずかな資金流入又は流出で簡単に上下動するため一般にリスクが高く投機用とも言われていますが、個人的な魅力はその安さにあります。現在は少し上がったもののまだ32ドル前後で、金の約1/90と過小評価されています。ここで散々連呼している1970年代のスタグフレーションだけでなくリーマンショックの事例も人々が金に殺到し、その後銀も遅れて上がるという特徴が確認できるので、今後もインフレが継続すると踏んでいるなら明らかに買いだと思います。

←銀価格 金銀比価→

本邦においては貴金属の現物取引に係る各種法規に定められる金地金等は次のものを指すので、銀は支払調書の提出義務がなく税制上有利であると言えるでしょう。ただし法は都合が悪くなると変えられる上に、そもそも利得には原則として税金がかかるので注意です。また、資産没収や為替管理のような措置を恐れて隠し持てる現物を選んでも強盗に入られたら終わりなので悩むところです。

金地金等として定める資産
・金若しくは白金の地金
・金貨若しくは白金貨
・金製品又は白金製品(金又は白金の重量当たりの単価に重量を乗じて得た価額により取引されるものに限るものとし、当該事業者が製造する製品の原材料として使用されることが明らかなものを除く)

所得税法第224条の6、消費税法第12条の4第3項、消費税法施行規則第11条の3

プラチナ
貴金属のうち銀よりも実体経済寄りで、自動車の触媒が需要の約半分を占めます。世界的には産業色が強い金属ですが日本と中国では宝飾品としても使われることから、本邦においては金地金等に含まれます。
白金触媒は自動車のうちガソリン車やハイブリット車に用いられますが、一時期流行ったEV車では使われないので需要減少を織り込んで今まで散々売られてました。しかし、流石にEV車の走行距離が短く不便であるため次第にハイブリット車への回帰が進んでいます。

←Tesla トヨタ→
株はトランプ爆誕などの地合いにも影響される

ちなみにEV車や風力発電などが持続可能な社会に貢献するという意見は左派によるものでしたが、テキサス州から始まった反ESGの流れが世界中に広がることで反リベラルのトレンドが生まれました。ヨーロッパや最近の日本でも移民の態度の悪さなどから外国人を締め出そうとする動きが見られているため、世界中で左から右へのシフトが進んでいると言えますが、究極的にはどちらも間違っており両方を行ったり来たりするので、大局的な流れを捉える必要があると思います。

プラチナ価格はインフレ下なのに過去の頭を超えておらず金の1/3程度の水準で取引されており、はっきり言って異常です。貴金属なので今後もインフレが継続するなら資金流入も期待できるはずです。ただし実需に左右されるということは、例えば景気後退によるデフレを織り込んだ場合は金よりも値下がりが大きくなるので、買うなら短期ではなく長期保有目的が良いのかなと思います。

銅・鉄・ニッケル
プラチナと同じく産業用の金属です。銅はEV車を製造する際に通常の5倍量を必要とするので、他の条件が同じであればEV車の需要減少は銅価格の下落を引き起こしますが、他に電線や建材、弾薬などにも使われています。近年注目されているAIを動かすには大量の電力が必要なので、AIを長期的なトレンドとして考えるならデータセンターの需要拡大に伴い銅価格も長期的に上がらざるを得ません。建設業と住宅購入者にとっては痛手ですけど。
また、一般に銅鉱脈の開発には5~6年かかると言われていますが、最近は誰も鉱脈を見つけようとしないので銅不足が懸念されています。開発しても他に道路や精製所も作らないといけないので直ちに供給が増える訳ではなく、従って価格もすぐに下がるとは限りません。

←銅価格 データセンターの電力需要→

ただし銅は実体経済と連動し、その最大の輸入国は中国なので中国経済にどうしても左右されてしてしまうのが難点です。例えば恒大集団が破産した時は不動産バブル崩壊の影響をもろに受けました。中国が全体の7割以上を輸入する鉄鉱石も同様です。それでも中国が経常黒字国であることを踏まえれば、アメリカの都合でゴミになりかねないドルを捨ててコモディティを買った方が良いのは明らかです。米国債と異なり潜在的な買い手がいるので、そんなに弱気になる必要はないのかなと思います。

←鉄鉱石 上海総合指数→

ニッケルは銅と同じく中国が買い入れてるコモディティの1つで、ミサイルの製造にも使われています。その最大の輸出国はロシアなので、ロシア・ウクライナ戦争では供給懸念によるスクイーズで急騰しました。先物以外にETFもありますし、ニッケル価格と業績が連動すると考えれば太平洋金属を買うという選択肢もあるでしょう。もっとも、株価は企業のバランスシートにも左右されるため意味合いとしては微妙に異なりますが。

←ニッケル価格 太平洋金属→

エネルギー資源

原油・天然ガス
原油と言っても色々な種類があり、硫黄分の多いサワーオイルと少ないスイートオイルに大別することができます。一般に前者は脱硫する必要があるため手間がかかる分安価です。地域によって採れる油が異なるので、銘柄によって価格差があります。

車の燃料や火力発電など様々な用途に必要な原油は、その価格が上がることで企業負担が増えるので企業利益の減少に繋がり株価の低下を引き起こします。原油に限らず一般にコモディティが上がれば株は下落することになります。実際には値上がり分が転嫁され、最終的に消費者が購入する財やサービスのインフレに繋がります。

CPIと原油は相関する

事態を重く受け止めた中銀が引き締めに走ると金利が上がり、原油の買い手が金利の付かない原油を避けることで価格低下に寄与しますが、同時に金利は売り手にも作用します。売り手は設備投資などを行い値上がりした原油を更に掘ることで供給量を増やそうとしますが、高金利により借入れができなくなれば逆に増産できなくなる恐れがあります。しかし、買い手は金利がどうなろうと発電などのために買わなければならないので中銀が原油市場に対して出来ることは限られています。何故なら中銀は油田ではないからです。これらのことから、原油の基本は金利云々より需給であると言えます。

しかし「原油の動向は通常株価と逆になる」と書きましたが、相場が業績相場から流動性相場に移行すると原油と株が同じような動きになるのでややこしいです。以下にチャートを示しますが、要は上方向であればリスクオン、下方向であればリスクオフであることを意味します。流動性相場では上記の理屈が通用しないのですが、売買していなくても考えるヒントになるのでチェックした方が良いです。

2022年
←原油 S&P500→
2020年
2018年

天然ガスはどちらかと言うと家庭需要が大きいので、冬なのに例年より暖かければ暖房を付ける必要性が薄れるため買われにくくなります。
ガスの運搬方法としては液体ならLNGタンカー、気体だとパイプラインが必要で、原油と違って簡単に輸送できないという特性があり、一部の国で値上がりしても他国から容易に取り寄せることができないため値動きに地域差がかなりあります。例えば脱炭素政策によりロシア産ガスを自ら拒否した欧州ではエネルギー不足に陥り、代わりにアメリカ産のを高いコストを払って輸入しようとした結果大相場を演じました。リベラルな人々が価格形成に貢献してくれたということです。

ウラン
日本では直接取引できませんが、放射性物質なので原子力発電のエネルギー源として利用されます。新興国の人口増加などにより火力発電だけでは今後必要と思われる電力量を安定供給できず、またSDGsな人々がごり押しした風力発電などはろくに使えないことから今まで散々嫌われてきたウランが注目されています。COP28によれば2050年までに世界の原子力発電容量を3倍にするそうです。

グリーンな人々も世界的な右傾化の流れに乗った

ウランへの賭け方は他にもあり、例えばウランETF(採掘業者の塊みたいなもの)を買うという選択肢があります。シェールと同じ理屈でウランが嫌遠されてきた頃はその採掘コストが高い順に、つまり中小企業から順に潰れていったため低迷してましたが、ウランへの継続的な資金流入を確信するなら値上がりに伴い生産コストが見合うようになるため、長期的には3.11の頭を超えていかなければ辻褄が合わないと思います。

食料品と農地

食料品の中には主に原油価格と連動するものと、あまり連動しないものがあります。前者はバイオ燃料としても使われるとうもろこし、大豆、砂糖などが挙げられます。後者で有名なのはやはり小麦でしょうか。

左上:とうもろこし 右上:大豆
左下:砂糖 右下:小麦

例えば砂糖の原料であるサトウキビはブラジルが最も生産しています。砂糖を作りすぎると砂糖価格が下がり、保管コストなども考慮すると生産者が逆ざやになるためサトウキビをバイオエタノールの製造に回すようになります。左派が推進した脱炭素政策などにより原油価格が高騰した場合も代替エネルギーとして脚光を浴びるバイオエタノールを製造し、逆に砂糖生産量を減らすため、結果として原油につられて砂糖価格も上がります。とうもろこしや大豆も概ね同様に考えれば値動きを予想できます。
作物を育てる際に必要な化学肥料のうち窒素源はハーバー・ボッシュ法で製造できるのでどうでも良いとして、残りのリンとカリウムは天然ガスなどの採掘に伴って産生されるので、ガス価格の上昇が化学肥料価格の上昇に繋がり、その影響は農作物にも影響するでしょう。

他には生体牛(牛肉そのものではないけど)や赤身豚肉もあります。例えばマクドナルドを取引する時は生牛を見ないとまともに売り買いできないでしょうし、豚肉は中国でよく食べられているので景気を占う指標の1つとして使えると思います。

←生牛 赤身豚肉→

牛肉価格上昇についてはリベラル派が「牛のげっぷは地球温暖化に繋がるから減らせ」と声高らかに叫んだことに加えて、飼料であるとうもろこし価格の上昇も関係し、本邦における焼肉屋の倒産件数が過去最多を更新しました。左派は他者に何の恨みがあるか知らないけど、まずは自分の息を止めて欲しいものです。

焼肉店の倒産が年間最多を更新した。2024年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は、9月までに計39件にのぼった。2023年の同期間(16件)から倍増したほか、7月末時点で2019年通年の件数(26件)を上回り年間で過去最多を更新した。ただ、個人営業など小規模店の廃業を含めれば、実際はより多くの焼肉店が市場から退出したとみられる。

「焼肉店」の倒産、前年から倍増 年間で過去最多を更新 輸入牛肉に加え野菜の高騰も打撃 値上げ進まず小規模店で苦戦 | 株式会社帝国データバンクのプレスリリース

コーヒー、カカオ、オレンジジュース、牛乳なども売買できます。スーパーではこれらのうち牛乳を除いて大きく値上がりしてますが、普段から観察してればいずれ実体経済にも影響が出てくることぐらい分かっていたと思います。コーヒー値上がりの理由は天候不良だけでなく、その価格が低迷してた頃に多くの事業者がとうもろこしや大豆の栽培に切り替えたこと、加えて余剰在庫が尽きたことが挙げられます。切り倒したコーヒーの木を再度植えてから収穫まで少なくとも5年かかるので、もしかすると今後しばらくは贅沢なものになるかもしれません。

左上:コーヒー 右上:ココア
左下:オレンジジュース 右下:牛乳

ところで、農作物や家畜を育てるには土地が必要となります。別にどこでも良いという訳ではなく、例えばオレンジなら温暖な場所、小麦なら暖かくも寒くもなく、綿花なら乾燥した所でないといけません。それぞれに適した土地を増やすことは容易ではない一方で、新興国は日本を含めた先進国と異なり人口動態が若く、長期的に食料品や衣服の更なる需要増加が見込めるため、それらを生産する農地の需要も増えると考えられます。南北戦争の時は高騰した綿花を栽培するために片っ端から買い占められました。
本邦において農地そのものを買うには、農地法の定めにより原則として農家でないとできませんが、ETFならボタン1つで取引できるので良いと思います。現物は有事の際に国に没収される恐れがありますが、いざとなったら急いで換金すれば良いのでおすすめです。

暗号資産

本邦においては支払手段の1つとして定められていますが、国際的には金融緩和により値上がりする等の理由からコモディティの1つと捉えられています。資金決済法による定義はこう

1号暗号資産
物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(但し法定通貨、通貨建資産、及び電子決済手段を除く)

資金決済法第2条第14項第1号

ここで注意すべきなのは、あくまで「財産的価値」であって「財産」ではないということです。公式には資産としての価値を認めているものの、権利未満の表現を用いているため有体物ではなく財産権が生じないことが分かります。なお、自民党もこれを「価値記録」と称しています。要は単なるデータであって物ではないためウォーレン・バフェット氏が無価値であると批判するのも一理あります。ですが円やドルなどの法定通貨も不換紙幣であって、通貨が暴落しても政府は保証してくれないので結局はどちらも同じです。

Bitcoinを発明したサトシ・ナカモト氏によると開発した経緯は以下の通りであって、まさしく紙幣からの逃避を想定して作られたと言っても過言ではありません。長いけどこう

旧来の通貨が抱える根本的な問題は、システムの稼動に信用を必要とする、という点に行き着きます。通貨価値の下落を防ぐには中央銀行への信用が不可欠ですが、法定通貨の歴史を紐解くと、信用破綻の事例は枚挙にいとまがありません。お金を預けたり電子送金したりするには銀行への信用が必要になりますが、銀行は信用バブルの波に乗って準備金をほとんど残さずに私たちの預金を貸し付けます。私たちは銀行を信用してプライバシーを預ける必要があります。個人情報を盗んで口座の預金を奪おうとする犯罪者から銀行が守ってくれると信用する必要があります。その巨額の間接経費がかかるために小額決済は不可能になります。
一世代前には、複数の利用者でタイムシェアするコンピューターシステムで似たような問題が起きていました。強力な暗号技術が登場する以前は、ファイルの安全性はパスワード保護に依存し、システム管理者が情報のプライバシーを守ることを前提に信用する必要がありました。私たちのプライバシーは、管理者がプライバシー原則を他の観点と比較検討した結果、無視されたり、上級者の命令によりプライバシーが侵害される危険が常にありました。その後、強力な暗号技術が一般化され、信用は必要なくなりました。データの安全性は、理由を問わず、どんなに優れた言い訳があっても、何があっても、他人によるアクセスを物理的に不可能にする形で実現しました。同じことを貨幣で行える時代なのです。暗号証明に基づく電子通貨のシステムにより、第三者的な仲介者への信用が不要となり、安全な貨幣が実現し、より容易な取引が可能になります。
(中略)
Bitcoinは法定通貨のように誰かが価格調整をするのではなく、供給が決められて価値が変動します。Bitcoinを使う人が多くなればコイン1枚の価値は上昇します。そこには正のフィードバックループがあり、多くの人が使えばBitcoin価格が上昇し、上昇したBitcoin価格が更に多くの人を引き寄せる可能性があります。

p2pfoundation.ning.com

Bitcoinは法定通貨ではないので強制通用力を持ちませんが、その発行量がどんどん少なくなる仕組みになっているので紙幣を刷りまくればその価格が上がるのは当然です。勿論その他アルトコインも同様です。逆に政府や中銀が円やドルを弱くなるよう仕向けているとも言えます。

←Bitcoin Ethereum→
どちらもボラが激しいので半値になるのは当たり前

ただし現在主流である暗号資産の大部分に欠点があり、例えばトランザクションを公開しているのでその取引履歴が全世界にダダ漏れしています。つまり匿名性が欠如しているのです。また、本邦においてはあらかじめ身分証を提示しない限り取引所を利用することができないため、政府等は決済履歴を含めた全ての行動を簡単に把握でき、個人に容易に課税できるという問題があります。実用性の観点からしても不完全で、Bitcoin1回の取引で平均的な家庭の50日に相当する電力を消費するためインフレに繋がりかねません。

という訳で長期的にはBitcoin以外の新たな暗号資産が誕生すると思いますが、それまでの間に円やドルが減価すると見るなら余計なバブルが弾けたところで買っても良いと思います。ただBitcoinの時価総額は1.6兆ドル程度で金の約1/10なので市場規模は小さく、また金利やインフレで綺麗に動く訳でもないから、待ってるうちに買い場を逃す可能性もあり難しいと思います。

資源国通貨

資源国通貨は通貨であってコモディティではないですが、コモディティ価格との関連があるので一応書いておこう。
資源国通貨と言えば豪ドルや加ドルが代表的で、他にルーブル、南アランド、リンギットなどが挙げられます。例えば豪州の鉄鉱石価格が上がれば支払により多くの資金が必要になるため、豪ドルが上がりやすいという関係があります。逆に資源輸入国は資源価格上昇によって交易条件が悪化し、より多くの資金を支払うことになるため資本流出による通貨安を招きます。最近ではロシア産ガスを拒否したユーロ圏ではガス価格が高騰し、電力代が跳ね上がったためユーロが叩き売られました。いや、ユーロよりも安い円というのは非常事態なんですが。

←貿易収支が落ち込み交易条件が悪化 EURUSD→

資源国は資源価格と通貨の上昇により景気が良くなるので羨ましい限りです。円を持つ日本人と原油を持つロシア人を比べた場合、有事の際にどちらが強いかは明らかです。

しかしインフレだからと言って一概に上がる訳ではなく、その抑制のために市場から資金が吸い上げられる時は株と一緒に下がる性質もあるので、やはり景気が悪化したところで買い入れるのが良いと思います。

左上:AUDUSD 右上:CADUSD
左下:USDRUB 右下:USDZAR
ルーブルは戦争で急落、金ペッグ示唆で急騰した

ちなみに米国の現状を確認してみると、GDPが緩やかに下落しながらも景気後退入りはしてない状況なのに財政赤字は6.3%にも達していることが分かります。この状態で景気が悪化すれば経済成長が鈍化するため歳入が減り、逆に支出が増えるため、財政赤字の拡大と金利上昇が予想できます。

債務の心配をされてるので経済が盛り上がらない
財政赤字は中長期的に拡大

米国株は米国債と同程度のバリエーションとなっており、S&P 500の株価収益率は約25倍と高く、ここから3割以上下げて初めて過去の平均的な水準に戻るため極めて割高です。つみたてNISAにぶち込んでいる人は今後の金利と企業業績をどう考えているのでしょうか。

今後も低金利は持続するのか?

アメリカはGDP比6%以上の財政赤字を垂れ流しながら、同時にGDP比4%もの金額を利払いに充てているので要は資金がなく、借金を返すために借金を重ねる悪循環に陥っています。債権者にとってはほぼノーリスクで金利収入が得られるので喜ばしいですけど。
今は財政問題やスタグフレーションなどが懸念され市場全体がぐらついてますが、同時に金利も下がっているためまだ危機に直面したとは言えないです。しかし、市中の預金準備と紙幣と硬貨の和を増加させても改善できなければ一度沈むしかないので、少なくともそれまでは資源国通貨も下手に触らない方が良いと思います。

左上:S&P 500 右上:日経平均
左下:DAX 右下:新興国の塊

まとめ

コモディティとその関連商品について書きましたが、このように賭け方は色々あるので好きにやってみたら良いと思います。恐らくどの国も長期的には通貨安を容認せざるを得ないだろうから、コモディティであれば何を持っていても大丈夫でしょう。ただオレンジジュースをいくら持っていても車や飛行機は動かせないので特段の理由がなければ原油よりも資金配分は小さくすべきだし、変動の激しい暗号資産に大金を賭けるのも避けるべきだと思います。

残念ながら我が国日本はGDP比200%以上の負債を抱えており財政が詰んでいるので、インフレによって債務を帳消しにするだけでなく、戦後の財産税のような資産没収又は為替管理のような措置が取られる可能性があります。国民は馬鹿なので痛い目を見るまで分からないだろうし、まだ殴られ足りてないように見えるけど。もしそこまで考えるなら現物が良いと思いますが、原油は押し入れにしまえないので無難なのは貴金属だと思います。

ところで、先日発表されたiPhone 16eに対して価格を理由に不満の声を多く耳にしました。しかし相手が受け取るドルは変わらないので、物価が上がったというより我々の財布の中にあるものが下がったのではないでしょうか。

SIMフリー版(左)は多少高い

通貨の下落というのはその逃避が進むほど速くなり、通貨を最後まで持っていた人が大損を被るため、ババ抜きのようなものと見なすことができます。日本は長年にわたり低金利を続け貨幣と信用を創造しましたが、不況に陥ればこれ以上金利を下げられず量的緩和を選ぶしかないので、日本経済の強さに関係なく上げられるだけ上げていると捉えることができます。僕よりも経験があり国語力の高い人は別の解釈があるのでしょうが、理由はどうであれ今の市場では円に買いが集まっています。
信用とはいかに上手く人を騙せるかなので、誰かが円を買い支えてくれるうちに逃げるべきだと思います。

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