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プロのレースで言われたこと

 プロとアマチュアの線引きは人によっても違って難しいところで、インラインスピードスケートの世界ではいわゆるプロ制度みたいなのはありません。ほとんどはメーカーなどの抱えているチームとの個人契約、あるいは私設チームでサポートがあるみたいな感じです。

 その中で珍しく「プロ制度」をコンセプトに立ち上がったリーグがアメリカにあります。「National Speedskating Circuit」略してNSC(吉本ではない)

 チケットを売り、ショーアップされた舞台で、選ばれたエリート選手が賞金を目指して鎬を削る。

 揃いのデザインのスキンスーツ、同じ用具(映像のシーズン後から)を使って戦います。かっこいい!

プロとアマチュアの境目

 この映像に憧れて2014年の冬、単身渡米しました。
 初めて乗るアメリカのインドアリンク。路面も走路の形も、ルールもそれまで30年やってきたスケートとは違います。慣れるのに必死だったのはさておき、開幕直前、主催者のMiguelが急遽選手全員を集めて言ったことが未だに心に強く残っています。

”レースに勝った時、スカした態度はダメだ。下を向いたり、クールに何事もなかったような態度でゴールするな。 喜びを表せ、勝ったことが本当に凄くて嬉しいことなんだと表現しろ。それがリーグを価値あるものにする。"

Miguel Jose NSC founder

 これはどういう意味なのか。
 レースをしているのは10代〜20代がメインの若者集団です。中には少し斜に構えてクールを装う選手もいます。「こんなの朝飯前だよ」と。

 アマチュアレースでは全然いいし、舞台が世界選手権だとしてもどう振る舞おうと問題にはなりません。けれどプロのレースは違います。そこには賞金があり、出資するスポンサーがあり、お金を出して観ている観客がいます。
 その舞台で「このレースで勝つのは大したことじゃない」という態度は明らかにダメなのです。

 決して嘘の喜びをするわけではありませんが、「このレースに勝てて、すごい選手たちを差し置いて、価値ある勝利を手にして本当に嬉しい」と観客に伝わることが、会場をさらに熱くするのです。

 プロとアマチュアの境目の意見はいろいろとあります。お金をもらっているかとか、生活できているかとか、契約書があればとか、でもプロはプロの振る舞いがあるからプロなのだと僕は思っています。

 お客さんがいて、熱くさせる。自分の勝敗も大事だけど、属する場所のことも考えて行動する。事はゴールの瞬間だけの話ではないのです。レース前のプロモーション活動、ファンサービス、ひいては普段の活動までプロ意識があるかどうか。その意味ではプロって大変です。お金をもらってスポーツして楽しそうだな、とはいかないですよね。上手いだけ、強いだけではプロではないのです。

 その人がいるとなんだかワクワクする。何かが起きそうな気がする。自分もやってみたくなる。そんな選手がいいなと思うこの頃です。


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Hiroqui Totori
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