考22 インラインスケートのウィール(タイヤ)の選び方と種類[スピード競技]
そんなに選択肢は多くないんですが、レースでどう選んだら良いのか、それぞれの特徴を見ていきます。
あの人にベストなウィール≠自分にベストなウィール
考えてみれば当たり前ですが、強い人が付けているからといってそれがベストな選択肢とは限りません。体重も骨格も違うし滑り方の癖も技術も違えば、ウィールから得られる性能も違ってきます。
どんなにオススメがあったとしても、結局は自分で履いてみるしかないんです。もちろん参考として意見を聞くのはアリです。でもそれだけで決めるのはちょっと早計です。ここで書く内容も「そんな感じなのね」と頭の片隅に置くくらい、どちらを買うか迷った時に最後にちょっと参考にするくらいにしておいてください。
MPC Black Magic
ウィールの2大メーカーMPCのフラッグシッププロダクトです。
市場で一番オールマイティなウィールです。特に真ん中の硬さ(XXFirm、XFirm、FirmがありXXが一番硬い)のXFirmはどんな路面で使っても「失敗ではない」と思えます。僕の場合はこれを基準に他のウィールを比べています。 Black Magic(以下BM)で滑れない路面は逆によほど特殊な路面と言えます。
参考:FIRM (82 to 84A), X-FIRM (84 to 86A), XX-FIRM (86 to 88A)
トラックはもちろん、ロードでも使えます。マラソンで使っても失敗はしない。長持ちするし、すり減っても性能の劣化は少ないです。
最も柔らかい黄色のFirm(プリントのMAGICの部分の色でも硬さを識別できる。XXF=青、XF=緑、F=黄)は、雨天のロード路面でも多少のグリップが見込めるので、降ったり止んだりなどの微妙な天候の時に重宝します。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★★☆ ※気温による
アスファルト路面 ★★★★☆
東京ドーム(文京区) ★★★☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★★☆☆
MPC TRACK ASSULT
BMより新しく、トラックレース用に開発されたウィールで、BMよりもグリップを強めに設計されています。(硬さのレンジはBMと一緒です。)
走行安定感があり日本の選手に人気で、また強豪韓国でも根強い人気があります。江戸川区水辺のスポーツガーデンのローラーコートで開催される大会での使用率が高いです。(気温や体重にもよるので一概にベストというわけではありません)
もちろんトラック以外でも使用できますが、少し減りが早いかもしれません。優しい滑り心地になるので少し荒いロードを快適に滑りたいときにオススメです。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★★★ ※気温による
アスファルト路面 ★★☆☆☆
東京ドーム(文京区) ★★★★☆
成増北第一公園(板橋区) ★★★★☆
JUNK WHEEL ROAD REAPER
MPCのサブブランド的なJUNK WHEELブランドです。
名前にROADとありますがアスファルト向きというわけではなく、地面をガシガシ掴んでいくぞ的なニュアンスのネーミングです。パワー系スケーター向けの印象があり、日本で使う人はあまり多くありません。
設計思想としては路面をを確実に捉えて、一歩一歩パワーをしっかり伝えて進んでいくようなウィールで、トラック・ロード問わず短距離で人気で世界記録も出ています。重たいと感じることもあるかもしれませんが、グリップを重視する人はマラソンでも使用可能なようです。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★☆☆
アスファルト路面 ★★☆☆☆
東京ドーム(文京区) ★☆☆☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★☆☆☆
JUNK WHEEL VOODOO
まだ出始めたばかりのウィールですが、南米の選手を中心にじわじわと広がってきています。
うまくまとまっています。グリップもあり且つ回転する感じも良く、JNNKブランドの中のBM的な位置に来るのかもしれません(BMと同じウレタンを使っているようですし)。コントロールもしやすく、特別マイナスな要素は見当たりません。ロードでの感触も良さそうで、オールマイティウィールと言えそうです。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★★☆
アスファルト路面 ★★★★☆
東京ドーム(文京区) ★★★☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★★★☆
アメリカのMPCと市場を二分するのがドイツのPOWERSLIDE を母体とするMATTERです。じっくり乗り込む感じのMPCに対して、サクサクと足が入っていくようなイメージです。滑り方によって好みは分かれると思います
MATTER G13
登場以来長年にわたって愛好者を支えてきた名作です。近年はトラックはMPC、ロードはMATTERの傾向が若干見られますが、トラックでもしっかり活躍しているので性能が劣るというわけではありません。
マラソンやロードレースでは大きくシェアが伸び、アスファルト面での強さを証明しています。耐久性も高く、河川敷を走ったり街を走ったりしても長く楽しむことができます。
ただウェット路面には極端に弱いので、天候が微妙な時はオススメできません。
硬さは3種類ですが、MPCと表記が違います。
参考:F0 (88a), F1 (86A), F2 (84A)
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★★☆ ※気温による
アスファルト路面 ★★★★★
東京ドーム(文京区) ★☆☆☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★★☆☆
MATTER CODE WHITE
トラック向けに投入されたウィールで、強いグリップ力が特徴です。
短距離でもしっかりと地面を捉えて確実に力を伝えてくれます。一方で体重が軽い人や滑り方によっては長距離でも使えます。
日本人選手はF0(最も硬い)を選ぶことが多いですが、パワーのある選手、体重が軽い選手は柔らかいものも選択肢に入ってきます。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★★★☆
アスファルト路面 ★★★☆☆
東京ドーム(文京区) ★☆☆☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★☆☆☆
ROLLERBLADE HYDROGEN PRO
製造はMPCのOEMですので、ハブ(内側の部分)も共通ですしウレタンの特性はMPCに近いです。
公式ではありませんが雨天でも使えるという噂が出ています。実際に使ってみると「まあまあ」という感じで、レインタイヤのように自由に滑れるというわけではありません。
滑り心地は優しく、ロードを中心に愛好者を増やしています。
■ オススメ度 ■
水辺のスポーツガーデン(江戸川区) ★★☆☆☆
アスファルト路面 ★★★★☆
東京ドーム(文京区) ★☆☆☆☆
成増北第一公園(板橋区) ★★☆☆☆
これら晴天時のウィールの他に、雨用ウィールが2大メーカーから1種類ずつ出ています。
MPC STORM SURGE / MATTER TORRENT
残念ながらMATTER TORRENTは使ったことがありませんが、評判は上々のようです。またSTORM SURGEはウェットでもドライと同じ感覚で滑ることができます。
ただし、路面が乾くと途端に滑れないレベルで重くなりますので注意が必要です。
またウェット路面を走る限りは表面があまり削れず、一本で何年も長持ちします。一つ持っておくと雨上がりのスケートが楽しくなってくるかもしれません。(厳密にはウレタンが劣化しますので、レースに出るような場合は買い替えが必要です。)
ウィール選択で考えること
レースに出る際にどうやってウィールを選べばいいのでしょうか。
最終的には「一番速いタイムが出る」ことが選択の条件になるわけですが、どのタイミングでタイムが出るのかとか、レース内での攻防もあるので操作性なども無視できない要素です。
気温(路面温度)も大事な要素です。
温度によってグリップは変わりますので、一つのウィールが常に最適とは限りません。事前にテストできる場合はレースと同じ時間帯で滑走し、グリップ感やタイムを確認します。
感触だけを頼らないことも大事です。
気持ちよく速く滑れたと思っても実はタイムが遅いことは良くあります。比べる時は客観的な数字を使います。
しっかり準備をして行けば心にも余裕ができて良いレースができます。
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