インラインスケートの誤解(エッジの話)1
よく似たスポーツ
アイススケートとインラインスケート、とてもよく似ています。
形も似ているし滑り方も似ている。
そもそもインラインスケート自体が、演劇の舞台でアイススケートの表現をするために発明されたものなので似ていて当然ですね。
でも氷の上に刃を乗せて滑るアイススケートと、アスファルトにウレタンのタイヤを転がすインラインスケートはやっぱり違うところがあります。そこを無視してしまうと、スケーティング動作の誤解につながり、ともすると上達の妨げになったりすることもあります。
アイススケートとインラインスケートの違いをとてもよく表しているのが次の動画です。どちらもBart Swings 選手の滑りです。インラインでは何度も世界チャンピオンになり、アイススケートではオリンピック金メダリストになりました。それぞれの競技で現時点でのベストなスケーティングと言っても良いと思います。
共通する部分の多い両スポーツですが滑り方には違いがみられます。この違いがどこからくるのか、用具の特性から理由を考えてみたいと思います。
インラインスケートにはエッジがない
どちらのスケートの動作練習でもよく出てくる言葉が「アウトエッジ」「インエッジ」(またはアウトサイドエッジ、インサイドエッジ。どちらも同意)です。「アウトに乗る」「インに乗る」という表現も同様の意味で使われます。
ではエッジとはなんでしょうか。またエッジに乗るということはどんな意味と目的があるのでしょうか。
模式的に図説すると上記のような感じです。(※フィギュアスケートなどでは直角ではなく抉れるような形状だったりするようですが、解説のため直角の角で表現します)
包丁の刃のように薄いアイススケートのブレードですが、先端は角がある矩形であり、足の小指側の角に乗ることを「アウトエッジに乗る」と言い、親指側をインエッジとしています。
そしてこのエッジに乗っている状態が、アイススケートでは最も抵抗が少なく、ブレることなく安定し、スピードが持続する状態です。また、面でなく角の小さな点に体重の圧力がかかることで氷が溶け、水になってブレードが滑っていきやすくなります。
逆にブレードが地面に垂直の状態、フラット面に乗ると、氷に箱を置いたのと同じで引っかかる箇所がないまま左右にブレてしまいます。
そのためアイススケートでは、エッジに乗る=ブレードが倒れることが必須の動作になります。
ところが、インラインスケートには角も刃もありません。
そしてインラインスケートのタイヤは、頂点がもっともアールがキツく(尖っている)、サイドに向かってアールは緩やかになっていきます。従って頂点の時が最も接地面積が小さく、サイドになれば(倒れれば)接地面積が増えていき、摩擦抵抗も増えていきます。
この点に於いて、アイススケートとインラインスケートの動作は真逆と考えた方が良いのです。ここを無視したままインラインスケートの動作練習にアイススケートの動作練習を当てはめてしまうと困ったことになります。
エッジは、アイススケートの動作説明で使われている用語をインラインスケートでも似たような動作の説明のために援用しているものです。けれど、似たものは似たものであって、同じではないのです。