新薬開発(ブライトパスの治験結果を受けて)
2018年5月17日に主要評価項目を達成できなかったブライトパスバイオ(旧グリーンペプタイド)4594。まず、このパイプラインについて触れていきたいとおもいます。
以下の「ペプチドワクチンは実用化可能なのか。グリーンペプタイドの挑戦【日経バイオテクONLINE Vol.2324】」の記事からの引用になります。
まず、富士フィルムに導出済みのITK-1について導出条件から、
契約一時金:なし
マイルストーン:フェーズIII終了時点で1億円
承認申請時点で8億円、承認取得時点で11億円
ロイヤルティー:5%
という条件でした。直近でこの1億円は受領しています。5月17日時点(707円、時価総額 295.78億)の企業価値に対して、このphase3成功によって得られる金額はマイルストーンでは19億円と正直5月17日時点の時価総額の10%にも満たない金額です。phase3成功したらS高?するかもしれませんが、それはパイプラインの価値ではなく「思惑」によるものとなります。導出済みというのは自社開発中と異なり安定する一方で収入について明確に定まるため思惑が働きにくくなります。ブライトパスにとって今回の治験が成功するということはGRN-1201といった同時に走らせているペプチドワクチンへの弾みとなりうる大事な場面でした。つまり、成功したら他パイプラインでの思惑が走っていくということ。思惑相場はS高連発ではなく、窓開けずの上げが多いです(ラクオリア創薬 4579参考)。ITK-1は膠芽腫の一件もあり正直中間解析をパスしていてもなんか怪しい...という感じはしていました。(AMEDのHP内に膠芽腫についての報告がありました:https://www.amed.go.jp/content/files/jp/houkoku_h28/0103012/h26_011.pdf)
もし、5月18日がS安の場合は値幅が700円以上なので150円、707-150=557円と時価総額は233.03億(-60億円超)とパイプラインの価値とかなり割に合わない時価総額の下落となります。イベントトレードとして最適なのは大きな価値のあるパイプラインで、それに対し時価総額が低く、イベント通過による価値の最大化が図れる場合チャレンジすべきです。元々のパイプラインの価値自体が時価総額と大きな乖離がある場合、パイプラインの評価価値分に時価総額は収束していくと考えられます。思惑も大事ですが、バイオにとってはパイプラインの価値こそがその企業の本質になるので適切な精査が求められます。今後の動きについては、iPS細胞絡みでリバするのかどのように動くのかはわかりませんが、バイオは決算ではなく、イベントトレードは要注意というわたしもとても勉強になる良い経験でした。
ブライトパスのパイプラインについては、以下の通りとなり、メラノーマについての結果が待たれるところになります。問題は今回の治験結果の通り、テーラーメイド型の癌ペプチドワクチンの失敗から他パイプラインの厳しい状況におかれている可能性が高いことを示唆します。以下のパイプラインの状況、今回の治験結果を考慮すると収穫期(バイオベンチャーとしての黒字化、導出、治験成功による上市等)はまだまだ先になる可能性が高いかと思われます。ブライトパス社のパイプラインより引用)https://www.brightpathbio.com/pipeline/
ITK-1:癌ペプチドワクチン(膠芽腫、前立腺癌とも失敗)
GRN-1201:癌ペプチドワクチン(非小細胞肺がん、メラノーマ)こちらについては、clinicaltrialにて検索をかけると(https://clinicaltrials.gov/ct2/results?cond=&term=GRN-1201&cntry=&state=&city=&dist=)のように出てきます。メラノーマのphase1はEstimated Study Completion Date : March 2018。非小細胞がんのphase2はまだ募集されておらず、Estimated Study Completion Date : March 2021。
GRN-1301:ネオアンチゲン(薬剤耐性獲得腫瘍特異的遺伝子変異)ワクチンはまだ基礎段階。
iPS-T:iPS再生T細胞療法(rejT)はまだ基礎段階。