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倒れる

学生の頃、朝礼で倒れる子がいた。
貧血か何かでスゥッと倒れてみんなで心配する。先生が慌てて飛んで来て、
場合によってはお姫様だっこで運ばれていく。本人としては非常に辛いだろうし不謹慎とは思うが、私は少しばかり倒れる女子に憧れていた。まるで悲劇のヒロインのように映っていたのだ。しかし骨太で有り余るほどの血液を所持していた私は決して倒れることはなかった。寒風の日も灼熱の日も大根足で大地を踏み締めグラウンドに立ち続けた。

そんな私も寄る年波かコテンと倒れる事件があった。商業施設で長いこと座り込みピクミンにいそしんでいたのだが「キノコが遠すぎます」と言われて急に立ち上がったのだ。そのとたんに視界がぐるぐる回り始め足元がおぼつかなくなった。もう一度座ろうとしても前後がわからない。よく聞くブラックアウトという感じではなく視界は見えていたが何しろ回っている。闇雲に二、三歩踏み出したのが運の尽きで、体制を保てず不様に倒れてしまった。

もちろん誰もお姫様だっこなどしてくれないが(物理的に不可能)近くにいたおじさんがすごく心配して「大丈夫⁈どうした⁈」と声をかけてくれた。きっと私は喋れない…と思ったのに「ハイ!全然大丈夫です!」と予想外に野太い声が出る。「少し休んだ方がいいよ」と最初から座っていた椅子に戻され5分。急激に腹が減り始める。もしかしてお腹減って倒れたのか私?

ゆっくりと立ち上がって数歩あるくが大丈夫そうなので近くのタイ料理屋へ行った。いつもの癖でシンハーとパッタイを頼む。心配してくれたおじさんにはめんぼくない気もするが腹が減っては戦はできない。特に戦の予定もないが。

その後は何の問題もなく一万歩あるいて帰った。憧れの朝礼倒れ女子になったかと思ったが、ただの腹減り女子だったようだ。特に怪我もなくて良かったが非常に恥ずかしいことはわかった。すべての倒れ女子、倒れ男子に謝りたい。

#朝礼
#倒れる
#ピクミン

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