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鴨川慕情①

私にとっての鴨川といえば、京都より安房である。16歳年下の愛するM子がいるからで、LINEでも頻繁に短冊みたいに長いメールを送り合うし、隙あらば会いたいと思っている。それなのにコロナは来るわ、私は入院するわで4年も会えていなかった。

この冬は妙に元気(家事はできないが外出はできる)だし、娘っ子JもM子に会いたいというので、思い切って東京湾を渡ることにした。高速バスで約2時間半。海ほたる(ハマコー)のおかげで近くなった。お迎えにきてくれたM子は全く変わりなく、やわらかモヘアのハグもふわふわで超嬉しかった。

M子と仲良くなったのは島ホステス時代である。19才の娘が入るというのでケバいタイプかな?と勝手に思っていたら清楚な雰囲気のM子が来た。が、一緒に席に着くと「M子、19才。床事情はいたって普通です」とシレッと自己紹介し、客よりも私が恋に落ちてしまった。何より「床事情」というワードセンスがいい。床事情はアクロバティックです、とか床事情はゴビ砂漠です、とか応用も効く。騒がしいタイプではないがポツリ、と面白いことや毒を吐く。そのままヤギ屋でアフターとなり、あっという間に仲良くなった。

私の場合、恋も友情も始まる時は突然だ。見えない磁石で惹きつけられるように進行は早い。長く生きるほどにタイプはわかっているのだろうが、言葉で表すのは難しい。M子とは「前世での伴侶」とか言ってるけれど、実は少しアリかな、と思っている。

M子にはJもザリガニもすぐになついた。特にザリガニはM子との入浴をこのうえなく好み、先に風呂に入っては「おーいM子、早く来いよ〜」と威張っていた。が、いざM子が来ると「ワン!ワン!」と仔犬になってじゃれついていたそうだ。3才という若さを最大限に活かしていたのだろう。

M子との会話は8割が下ネタだ。前は子供達に多少の配慮もしたが、今となってはJも一緒になって笑ってくれるので気楽である。M子ほど下ネタの趣味が合う人はいない。下劣さの中に知性があり、具体性と客観性がある。それぞれの生々しい話はほとんどしない。するとしたら遥か昔の話だが、ようく乾いてミイラ化してからの出荷だ。若い頃はもう少し直近の話をしていたが、今はわたしのネタがない。情熱もない。仕方ない。

鴨川にはもう菜の花が咲いていた。ミニ電車なども走っており、その日が初日だったのかテープカットならぬ菜の花カットをやっていた。よくわからない鯛のようなゆるキャラがいたのでヒレ部分を思い切り掴んだら「ひ」と声がして人間の手の感触がした。いやそれでもあれはヒレだ。おもくそ掴んで悪いことをしたと思った。

           (つづく)

#鴨川
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#小旅行

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