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別れのエレファントマン

デヴィッド・リンチ監督が亡くなったそうで、作品にはあまり縁がなかったなぁ…と思っていた。「ブルー・ベルベット」が音楽以外は趣味ではなく(だいたい道に落ちてる耳を拾うって)続いてリンチ作品と間違えて観たクローネンバーグの「裸のランチ」もなーんコレ?の一言だったのでリンチ界隈には近付かなかった。のちに間違いに気付いてクローネンバーグ作品だけど「デッドゾーン」は好きだったなぁとか見直したがリンチは省みず。

ところが亡くなったことがきっかけで様々なリンチ情報を見る。そして知らなかったが「エレファントマン」が彼の作品であったことに気付いたのだ。

かつてデートといえば映画だった。「エレファントマン」はデートに相応しくない映画TOP100ぐらいには楽勝で入る。だがバカな高校生は内容などよく調べてないし、なんか流行ってるから行こうってぐらいのノリだった。内容は暗く、衝撃的で、3日はどんより
できるほどの重さ。私はすっかり主人公のジョン・メリックに感情移入していたのでボロ布を引き摺り、世間を恨んでいた。

その時、私の横を歩いていたデート相手のD悟という男が「ア〜イム、ジョ〜ンメ〜リック…」とエレファントマンのモノマネをはじめ、「似てる?」と小首を傾げてきた。ちょっと…それってどうなのよ…と私は思った。そういうところだ。そういう空気の読めなさが積み重なりつつあり、この前のデートでは隙をついて別れを切り出そうとしていたのだ。それなのに封切り間もない「ブルースブラザーズ」を観て2人して盛り上がってしまい、別れ損なった。この時の彼のベルーシのモノマネは悪くなかったし。おなじベルーシ出演作でも「1941」ぐらいだったら盛り下がって別れられたかもしれない。

いずれにしろ「エレファントマン」終わりは別れのチャンスだ。彼は他にも長嶋監督やキヨシローのモノマネを乞われてもいないのに次々と繰り出し私をイライラさせた。

それにしても別れの理由というのは難しい。フラれる時は一瞬だが、振る時はなかなか頭を使う。相手の悪いところは言いたいが言わない。人格否定は相手の傷を深めるし、逆ギレのもとである。こじれた場合は連打して蜂の巣にしてやるが、まだ浅き交際ぐらいでその必要はない。

すぐバレる嘘もダメだ。他に男ができた、というのも嫉妬の炎を煽って良くない。隠し通してなるべく綺麗に別れたいものだむずかしいけど。

私は「ソフト部に入るかもしれないから忙しくなる」の一本槍で通した。事実友達に誘われていたが、入るか否かは私の胸三寸。とりあえず別れに漕ぎ着けられればこっちのものだ。ダメ押しで「私、女の子といるほうが楽しいみたい。もしかして女の方が好きなのかなぁ」と夕焼けを仰いでみた。これも全く嘘ではない。私は肉体的にはヘテロだが、精神的にはバイに近い。初恋の相手も女の子だし、この先だって何が起こるかわからない。

D悟は「ダメ押し」の方にドン引きだった。「そ、そうか…残念だけど、頑張ってね」と足早に去って行った。

私はソフト部に参加してみたが、あまりの足の遅さにすぐ補欠となった。そんなつもりはないのだが、私が走り出すとコーチが「ここはお花畑じゃねえ!」と怒鳴る。やむなく幽霊部員となって校舎をさすらっていた。

「エレファントマン」の話が全然関係ない方に行った。私はいまもお花畑の中をギャロップするようにあちこちフラフラしているのだろう。アイム マロン アジオカ…。


#デヴィッドリンチ
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