ゲーム紹介#06 トライアングルストラテジー ※ややネタバレあり
■概要
メーカー:スクウェア・エニックス
ジャンル:シミュレーションRPG
プラットフォーム:Nintendo Switch
発売日:2022年3月4日
・オクトパストラベラーに続く浅野氏チームによるHD-2D作品。クォータービュー(を基本とした)シミュレーションRPGで、タクティクスオウガ(以下TO)やファイナルファンタジータクティクス(以下FFT)の系譜。
■全体評価
・10点満点中8.5点。色々惜しい。
・UIの出来は宜しくない。バランス設計は微妙。ストーリーの出来は惜しい。
■ストーリー
・三つの国がある地域が舞台。北部の雪国エスフロストは製鉄技術に優れ、南東にある砂漠の国ハイサンドはこの地域で唯一塩を採取できる塩湖を持つ。そして中部に位置する交易の国グリンブルグ。主人公セレノアはグリンブルクの名家・ウォルホート家のお坊ちゃん。
・三国共同でグリンブルク領地の鉱山で資源採掘をするという合意がなされ、エスフロスト総帥の腹違いの妹であるフレデリカは政略結婚の駒としてウォルホート家のセレノアに嫁いでくる…という導入。
・イントロから覚えることが多く、複雑な内容が嫌いな人を拒む世界観設定。だがTOやFFTより分かりやすくしようという強固な意志は感じた。
■サウンド
・千住明先生による本人談世界レベルのサウンドが作品世界を盛り上げる。
https://www.famitsu.com/news/202112/27244680.html
音楽としての完成度は言わずもがな。個人的には木管の使い方などに特徴を感じた。
・ただゲーム音楽として聴くと少し上品すぎて地味なのでは?と思う部分はあった。真ルートをクリア後にOP曲がボーカルアレンジになるという要素があるのだが、そちらはえらい勢いでドラムは暴れギターが速弾きしまくっていた。
・劇中にはこういう俗っぽい要素があまりないのが地味に感じた理由の一つなのかな、と。
・中世の酒場とドリアンスケールの親和性は異常。
■映像
・HD-2Dの2作目として正当に進化している。オクトパストラベラーではドット絵を売りにしている割にキャラクターの動作パターンがあまり多くなく、FFで言うと5くらいの数の動作パターンしか無いような印象を受けた。
・見せ方もあるのかもしれないが、今作はドットアニメーションがかなり動いている感じがあった。「またこのポーズか…」みたいな違和感が払拭されていると思う。
■システム
3つのパートを行き来しながらゲームを進めてゆく。
◆バトルパート
・基本はTOやFFTの後継作という感じで、高さの概念のあるシミュレーション。魔法を撃ったら味方も巻き込まれたとか、弓矢で奥の敵を狙ったら軌道の関係上味方の頭に刺さったというようなシステムは廃された。
・キャラロストは無い。戦闘不能になっても次のバトルでは普通に復活している。が、特定のマップでは「このキャラが倒されるとゲームオーバー」という条件はある。
・ゲームオーバー後、経験値を引き継いで何度でも再挑戦できる親切設計。使用したアイテム等も使わなかったことになる。
・反撃は一部のキャラがアビリティとして持っている形で、反撃可能になるアクセサリ等は無い。そのため、経験値取得の機会に格差が生まれている。
・想定バトルというトレーニングモードでレベル上げ可能。マップ自体に推奨LVが設定されており、例えば推奨LV10のマップであればLV11まではどのキャラもすぐに育つようになっている。ただし推奨LV+1を超えるとほとんど経験値が入らなくなるので、極端なレベリングは難しい仕様になっている。
・キャラクターは結構多く、一部の尖った性能のキャラを除けばお気に入りのキャラを育てておけばクリアできるバランスになっているらしい。私は難しくて勝てなかったので1周目は数名に無茶なレベリングを施してなんとか突破した。
・装備品の概念はほぼ無い。各キャラ固定武器があってそれを鍛冶屋で素材を消費して鍛える形になる。防具は存在せずアクセサリが唯一の装備品となる。
・そのアクセを先に選んでどのキャラに装備させるか選択するという順序のUIは初めて見た。最悪の視認性だと思った。
◆ストーリーパート
・話が長い。知人でプレイした方の他ネット上の感想など誰もが言っていたがとにかく戦闘に入るまでが長い。世界観や情勢の説明をする上で仕方ない部分もあるのだが序盤は特になかなか戦闘に入れない。
・ルート分岐については、「信念の天秤」という名の多数決で決まる。
・この作品、TOで言うカオスフレーム、真女神転生で言う属性値のようなものがカウントされており、Benefit、Moral、Freedomの三種が各属性となる。極端に利己的に進めていた場合など、反対に位置する選択肢の方に進めなくなったりすることもあるようだ。
・天秤に参加する主要メンバー以外の仲間の加入条件はほぼこの属性値で管理されており、戦闘マップ中で説得して仲間に引き込むような加入パターンは無い。
・これがまたちょっとドラマ性を損なってるような演出で、どのキャラも詰所に歩いてきて「軍に加入させてください」と言ってくるパターンしかほぼない。
・生死不明だったキャラとか、シナリオ上結構重要っぽいキャラも徒歩で訪ねてくる。なんかFF8の魔女アデルが徒歩で視察にやって来た時のような違和感だ…
・その他そうやって加入したキャラ達のバックグラウンドや展開などは挿話というカテゴリで説明されるので、やはり戦闘マップでの熱いやり取りみたいなのは少ない。
・ただこの作品最初に書いたように話してる時間がとにかく長いので、この上各キャラのエピソード用の戦闘マップとか用意されてたら多分マジでテンポ悪くなってたと思う。良し悪しですね…。
◆RPGパート
・キャラを操作して街の中などを探索、アイテムを拾得したり情報を集めたり人との会話選択肢で属性値が変動したりする。きちんと人の話などを聞いて探索しないと表示されない選択肢などもあり、天秤の結果に影響を及ぼす。
・蛇足とまでは言わないがこれもゲームテンポの鈍化に一役買っている。問題点をいくつか。
・ドロップアイテムが見えづらい・収拾しづらい。
このHD-2Dのグラフィックというのは基本的に背景がキラキラしてて非常に綺麗なのだが、ドロップアイテムの目印もキラキラしているので何度も誤認した。視点変更必須の分かりづらい位置にアイテムが落ちていたりするのも問題。
また物語は一方通行なので、取りそびれたドロップアイテムは二度と入手できない。回復アイテムくらいならまだしも、希少なアクセサリとかも普通に落ちている。2周目以降で回収は可能だが、ルートによっては通らないマップもある。
…とまぁこのようにRPGパートはややストレスの元になっていたと言わざるを得ないかな。
■総評・感想(ネタバレあり)
◆ストーリー
・善し悪しだがストーリーもシステムも全体的にコンパクトにまとめてある印象。主要キャラ以外ははっきり言ってモブである。
・TOやFFTとかは当時小中学生だったキッズにはさっぱり背景の政治的思惑とか分からないだろうし、あれらに比べるととても分かりやすくストーリーを語っている点が好印象。
・ただ、本当に優等生という感じで松野氏シナリオのような「さっすが~、オズ様は話がわかるッ!」とかキチガイの姉とか「殺してやるぞアルガァァス!」というような戦争の闇をえぐるような尖ったテキスト感は無い。主人公夫婦もやはり優等生でキャラ面に特筆すべき特徴が無い。
性格的にも立場的にも戦闘能力的にも微妙なロランが一番印象に残った。というかある意味こいつが主人公だろう。アヴローラ将軍がコーデリアにほだされる流れはどう見ても性急で描写不足の印象。
・あと魔王とかモンスターが跋扈するような世界観ではないので、でかくて派手なボスキャラみたいなのはいない。一応あるルートのラスボスはでかいのだが、本当に人間が巨大化するだけ。あれは化け物にしても良かったと思うぞ。
◆システム
・キャラ育成の幅も広すぎない…というか近年のゲームと比較すると狭いくらいか。死者の宮殿みたいなやり込みダンジョン等も無い。
・これは私がシミュレーション下手であるせいなのだが、ノーマルでクリアしようとしても苦戦した、というか推奨LVではとてもクリア出来なかった。ので、大半のプレイ時間はレベル上げに費やされた感がある。
◆まとめ
・地味。堅実という言い方も出来る。
・天秤のシステムが斬新かと言えばまぁ珍しいよねと言う程度なので続編は同タイトルでは多分出ないと思うが、TO・FFTの系譜としてのドット絵クォータービューSRPGの作品は今後も出たらいいなと思うのでした。
80時間くらいやったしなんだかんだでかなり面白かったです。
おわり。
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