自由貿易、闇バイト、陰謀論、ネット社会。

ふだん読書をするなかで、気になった一節をGoogleドキュメントに書き留めておく習慣があるけど、その中から時代のキーワードになりそうなものから引用してみたい。

まず、自由貿易について。

“日本の食料自給率が下がった最大の原因は、貿易自由化と食生活改変政策である。自動車などの関税撤廃を勝ち取るために、農産物の関税引き下げと、輸入枠の設定を、日本の農業は強要されてきた。そこに、アメリカやヨーロッパが、輸出のための補助金をジャブジャブ出して、ダンピングを仕掛けてきたのだから、たまらない。日本の農業は壊滅的な打撃を受けてしまったのである。”
 「世界で最初に飢えるのは日本」

“アメリカは、自国の農業には手厚い補助金による支援を行っているが、貿易相手国に対しては徹底的な規制緩和を要求する。アメリカはそれを自由貿易とか、「level the playing field(対等な競争条件を保つ)」などと言っているが、実態は「圧力によって関税を撤廃させ、相手国の農業を、補助金漬けのアメリカ産作物で駆逐」しているだけだ。つまり、「アメリカだけが自由に利益を得られる仕組み」を要求しているに過ぎない。”
 前掲書

自由貿易とは保護貿易の対義語で、一般的に“善いこと”とされているが、現実はどうだったのか? 考えさせられる記事である。結局のところ、“自由貿易とは、アメリカの都合を相手国に一方的に押し付け、自分たちだけ得をすること”ということになるらしい。
 次期トランプ政権は、ほとんどの国に高い関税を課すことを掲げている。「関税を下げてもらいたければ、アメリカの製品(あるいは農産物)をもっと輸入しろ」と露骨に迫ってくる可能性がある。
 日本はこれから、アメリカ産の得体のしれない遺伝子組換え食物や、農薬を大量に使った農産物を輸入することを、ますます強要されるかもしれない。そうなれば、私たちの健康と安全は自分たちの食卓から脅かされることになるだろう。
 
次に、闇バイトについて。

“「闇バイト」を入り口に詐欺という「仕事」を軽い気持ちで始めさせ、やがて莫大な被害を生み出す。組織的「特殊詐欺」の片棒を担がせる犯行グループの手口に特徴的なのは、関わる人間を互いに分断し、手順を複雑化させている点だ。…
「証拠を残さないことで捜査網から逃れるという目的だけではない。個々の犯人たちの「犯罪意識」を希薄化させる効果がある。”
 『ルポ 特殊詐欺』

“「手っ取り早く稼ぎたい」。特殊詐欺の末端を担う男たちが口を揃えて言う動機だが、その思惑は早晩打ち砕かれ、追い詰められ、凶悪犯へと仕立て上げられていく。入るも地獄、抜けるも地獄というのが特殊詐欺の犯行グループの真実である。”
 前掲書

近年社会問題になっている闇バイト、あるいは特殊詐欺。特徴は、通信秘匿アプリなどを活用して犯行は巧妙化、狡猾化していること。逮捕されたとしても、末端のバイトばかりでなかなか首謀者にたどり着かないことがほとんどのようだ。
 結局、背後にいるのは暴力団とかの犯罪組織なのだろうか。暴対法で締め付けられて、近年はもう虫の息かと思われていたけど、こういったシノギに活路を見出しているのかもしれない。

陰謀論について。

“「無名だから発言の責任は負わなくていい、ウソであったとしてもだまされる方が悪いという文化は2ちゃんからできた」といい、それがQアノン現象につながっていったと分析する。”
『Qを追う 陰謀論集団の正体』

“膨張し続けたQアノンについて、ブレンナンはいま、何を思うのか。
「僕は、集合知というものを信じていた。大勢の人たちがいて、そこに質問を投げかければ、きっと正しい答えを導き出すのだと。でも、ネットの群衆は違った。そこに知恵はなかった。行き着く先は、陰謀論だった」” 前掲書

“2020年の米大統領選をめぐって、「票が操作された」などという根拠のない情報は米国にとどまらず、世界中にひろがった。米国の研究によると、特に日本語での拡散が目立ったという。”前掲書

“「Qアノンの信奉者は、あらゆることに疑問を抱いている。世界秩序や、現在のシステムを疑っている。プーチンについても『システムを覆そう、壊そうとしてくれている』とありがたがっている。トランプの代わりのような存在になっている、と言えるかもしれない」”前掲書

アメリカで、Qアノンのような陰謀論が流布するきっかけとなったのは、電子掲示板の書き込みからだった。そしてそれは、日本の“2ちゃんねる”をモデルに作られたものだったらしい。
 近年の、SNSを通じた陰謀論の拡散について、的確な分析がされているように見える。ネット社会の負の側面が垣間見える。

最後に、ネット社会について。

“ツイッターやフェイスブックでは、自由民主主義の水準に達するような会話は成立しません。これらのシステムは、本質的に著しく反民主主義的です。そして、誰がツイッターを通して米国の大統領になったかを忘れてはいけません。コミュニケーションのために、ツイッターを利用するのは邪悪に近いのです。”
 「2035年の世界地図」

そういえば、わたしもアメリカ大統領選を機に、Twitter(現X)をやるのをやめました。ネットを通じて、誰もが対等に自由に言論を行えると思うだろうが、現実にはどうだったのか? ということだよね。