介護派遣、契約を更新しない申し訳なさについて。
日本国内に130箇所の施設を運営している大手有料老人ホーム、派遣契約を来月いっぱいで打ち切ることにした。
ここのところずっと、継続するかどうかを悩んできて、その末に決めたことである。
その際に感じてしまうのは、現場に対して「申し訳ない」という感情である。というのも、ここのところ職員がずっと減っていって、現場では“単発派遣”だらけになっていて、もう日々のシフトを回すことさえ一大事という有り様になってきているからである。
毎日が“薄氷の上を歩く”ような、そんな危なっかしい日々。実際、転倒事故は頻発しているし、入居者も落ち着かなくなってきている。
日々のリーダー、毎月のシフトをつくってる介護リーダーの苦労は計り知れないものがある。この状況の中で、さらに職員が抜ければどうなるだろうか。ますます現場は逼迫するし、そのしわ寄せは他の職員に行くことだろう。
介護電場では、そういう“足の引っ張り合い”みたいな心境に陥りやすく、なんかいやだなぁと思う。
しかし、こうなった原因は職員にあるわけではもちろんない。いちばん問題なのは、介護職員を十分に確保できる見通しもないくせに、老人ホームばかりやたら建ててきた介護経営者たちの驚くべき無能さである。
ここでいう介護経営者とは、現場の施設長よりもはるか上にいる、事業の運営の策定に携わっている輩たちである。さらに、老人ホームなど箱物ばかり作らせてこれを規制してこようとしなかった国にも、怠慢があったと思っている。
「需要があるから」などと口にして施設の数ばかり増やせば、施設当たりの職員はそれだけ手薄になり、ケアの質はどんどん下がり、職員にとっての働きやすさはどんどん悪化の一途をたどるのは自明だと思うのだが、どうだろうか?
この状況で個人にできることはほとんどないように思える。せいぜい、少しでもまともな施設を見つけようとするぐらいか。
派遣で働くかぎりは、こういうダメな施設を転々としていく人生になりそうな予感がある。かといって、いまの介護業界の惨状があるなかでへたに正職員/常勤にでもなれば、負担ばかり押し付けられて心身をすり減らし、病気になる恐れもある。とくにわたしなんかは、まだ不眠症が治ったわけではないのだ。
世間でいわれているテクノロジーとかICTとやらは、期待されているほど解決策にはなりそうにもない。介護現場で介護ロボットなんて見たことがない。介護記録にいたっては、手書きの記録をタブレット上に新たに打ち直すという二度手間で、無駄な作業ばかり増えている。
むしろ、組織づくりのあり方から見直されるべきで、現場が中心で動くチーム、自主経営組織を追求するべきなんだと思う。上からの押し付けが現場に混乱と悲惨を招いているのだ、それならばボトムアップで現場から問題を提起して解決していく組織に、いいかげん転換したらどうだろうか? と思います。
そのためには、経営陣と現場の職員たちが、腹を割って思っていることや感じていることを対等に話し合うところからスタートすべきじゃないのか。