介護業界の進歩のなさについて
近年、AIだのチャットGTPだのとテクノロジーの進歩がニュースで取りざたされる中で、そんなものとまったく縁のない珍しい業界もある。介護である。
たしかに福祉施設の仕事はAIや機械化に向かないとされているが、できることはいくらでもあるのではないか。たとえば、転倒リスクが高かったり、とにかく落ち着きのない利用者の見守りなどである。
夜勤などで、誰かのケアに入ると他の入居者のことがみれないことはいくらでもかる。そんな時に、たとえば昆虫〜小動物くらいのサイズ感の介護ドローンを絶えず巡回させて、転倒の危険の大きい利用者を遠隔からモニター越しに観察できれば、どれほど負担が軽減されるだろうか。
介護の仕事はマルチタスクで、業務の中断は日常茶飯事であり、とくに転んで怪我をしないかと絶えず気にしつつ神経をすり減らしながら現場の職員は働いている。そうした現場の負担を軽減するための方策がなぜ取れないのだろうか? といつも不思議に思う。
この数年の間に、常勤と派遣で複数の施設で働いてきたけれども、介護ロボットも介護ドローンも見かけたことはない。
他には、ナースコールがある。忙しい時間帯に、これをしょっちゅう鳴らされるのはかなりのストレスであり、現場はたまったものではない。「ナースコールを無制限に利用できる時代はもう終わった」とわたしは考えています。ナースコールそのものを廃止するか、もし利用するのであれば、有料にして回数に上限を設けるべきでしょう。
あとは、利用者の“お誕生会”などといって、誕生日を祝うということにもじつはちょっと違和感を感じている。現場で働く身としては、「いや、祝ってもらいたいのはこっち(介護職)の方だよ…」と正直に思うのである。
それは、わたしに奉仕の精神?が足りないのかもしれないし、この仕事にそもそも向いていないと思っているけど、多くの介護職はかなりの不満を感じながら日々働いているはずである。そうした不満を解消して、現場の士気を上げるための方策がなぜ取れないのか? とふと思う。経営側は利用者の方ばかりを向いて、現場をなおざりにしていることが問題ではないのか?
「いまはまだこの職場にいるけど、今後はわからない」、不満が積もり積もってあっさり仕事を辞めることはべつに珍しくもないだろう。それじゃあ給料を上げればそれでいいのか? そんな単純なはなしではない。
今後、職員が確保できなければ、利用者が文字通り“放置される”ことになるだろう。老人ホームにいながらにして、介護放棄されネグレクトされ、ろくにケアを受けられずにほったらかしにされることは、今後ますます増えてくでしょう。すでに訪問介護は崩壊していると思っているけど、施設介護のほうも半ば崩壊しかけていると感じています。
かつて介護は家族が担うものとされ、それが介護保険制度が整備されて施設でみることになったものの、これからは再び家族が担っていかざるを得なくなるのではないか。