人材を手放したくない介護派遣会社

今年から看護師派遣としてある施設で働いている。キリスト教系の社会福祉法人。施設長のことを“支配人”と呼ぶような高級老人ホームである。
 わたしはそこで介護職の正職員として就職したいと希望して、応募していた。

履歴書を送付してから2〜3週間、まったく音沙汰がなかったのだが、つい先日施設の介護サービスの課長から直接話しがあった。
 まず、心配されていた派遣会社からの紹介手数料はかからないということだった。その上で「まずはパートからのスタートになるけど、それでもいいか?」と。
 すっかり諦めていただけに、思わず面食らってしまった。とりあえず時給はいくらくらいになりますか? と訊いておいた。あとで「看護師さんの時給に較べたらずっと低くなって申し訳ないけど」と、わざわざ知らせにきてくれた。
 現在、派遣看護師として時給1900円で働いている。そこの介護パートは時給1200円足らずからである、諸手当込みで。それでも、わたしは承諾することにした
 最初はパートとして試用期間というわけじゃないけど、数ヶ月続くのだろうか。それからどこかのタイミングで、常勤に登用されるのだろう。そこがいまいち曖昧な点ではあるけれども、いつ常勤になるかはわたし次第だといわれた。

いままで介護派遣でいくつかの施設を渡り歩いてきたが、ここで働き続けたいと思えるような施設はそうそうあるものではなかった。せっかくここで働いてみたいと思えるなら、そこに執着してみようと思ったのだ。
 問題は、派遣会社の「レバウェル」につぎの仕事を探してもらっていて、面接(顔合わせ)の日取りもすでに決めてしまっていたことだった。気が重いけれども、急ぎで派遣会社に伝える必要があった。
 派遣会社のほうは案の定、あの手この手で人材を引き留めようとすることがよく分かった。
 「時給の方はいくらになりますか? 駅からはどれくらいかかりますか?」
 「最初はパートでということでも、ずっとパートのままかもしれませんよ? そういうケースを私たちは見てきました」
 「もし正社員になることをご希望でしたら、私たちにもご就業先で就職した実績があります」 等々。
 もっと他に言い方があるのではないだろうか? たとえば、「私たちとしては残念ではあるかれども、このたびはご就職おめでとうございます」とかさ。

今の時代に、人材派遣会社は社会にとって欠かせない存在になってる面はあると思うし、人材のヨコの移動、人材流動性を高める役割を果たしているといえる。その一方で、人材派遣業はどこか“奴隷商人”さながらという風で、ろくでもない業種だなと感じています。