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モーパッサンの「1本のひも」

今日のおすすめの一冊は、栁平 彬(やなぎだいら さかん)氏の『やる気を引き出す元氣の心理学』(ぱるす出版)です。その中から「いつもほっとさせてくれる人」という題でブログを書きました。

本書の中に『モーパッサンの「1本のひも」』という心に響く文章がありました。

モーパッサンの短編小説に「1本のひも」というお話があります。 ある農夫があるとき、村の混雑するマーケットで1本のひもを拾います。ちょうどその日のその辺りで財布を無くした人がいたのです。 そして、何かを拾ったこの農夫が疑われるはめになったのです。

農夫は近くの町の警察まで連 れて行かれ、そこで拾った一本のひもを取り出して見せたのですが、それでも信じてもらえませんでした。 ところが翌日、財布は見つかり、同時に濡れ衣も晴れるのです。

人々は農夫にあらぬ疑いをか けたことをケロリと忘れてしまいます。しかし、その農夫だけは違っていました。以後、長い 年月を彼は畑を耕すことすら忘れ、1本のひもを拾って濡れ衣を着せられたこと、ひどい仕打ちにあったことを人々に話し続けたのです。 

最後に死ぬ時も農夫は、1本のひものために人生を無駄にしたことを罵りながら寂しく息を引 き取ったというお話です。農園は、荒れ放題になっていました。 

「自分だったらそんなひもなど拾いはしない」と思うかもしれません。しかし、本当に1本のひもきれも拾っていないと言い切れるでしょうか。というのは、私たちは知らず知らずのうちに何本ものひもを拾い、後生大事に抱え込んでやる気を失っていることが多いからです。 

前に働いていた会社での不平不満をその後の人生でも語り続けたり、 「上司がもう少し私の能力を認めてくれたなら」とか、子どもは子どもで、「学校の先生が教え方が悪いから国語や数学が嫌いになったのだ」とか、 「あの人がもう少し私の気持ちを分かってくれたらこうはならなかったのに」 などと、色々なひもを拾っているうちに段々やる気を失っていくのです。

ひもが首にまとわり つき、息苦しくなり最後には息ができなくなってしまうのです。 ここで、そうしたひもを思い切って捨ててしまい、「よし今日もやるぞ」と自分を励ましてみ ると、日曜日でも朝からやる気が出ます。

実際のモーパッサンの小説は、疑いをかけられいくら抗弁しても誰一人として信じてくれない農夫が、ノイローゼのようになって死んでいく、やるせない暗い物語だ。しかし、栁平氏はそれでも、嫌なことは忘れた方がいいという。

嫌なことを引きずれば引きずるほど、せっかくの大事な自分の人生が台無しになる。終わったことをいくらぼやいても、その事実はくつがえることはない。だからこそ、大事なのは未来。過去にあった嫌なことはきれいさっぱりと忘れ、今から、これからのことを考えた方がいい。

今日のブログはこちらから☞人の心に灯をともす


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