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それはそれとして

今日のおすすめの一冊は、樺沢紫苑氏の『言語化の魔力』(幻冬舎)です。その中から「切り替え言葉」という題でブログを書きました。

本書の中に「それはそれとして」という心に響く文章がありました。

「それはそれとして」は、「日本最大の仏教研究家」と呼ばれる鈴木大拙がよく用いた言葉として知られます。 彼の出身地の金沢には、「鈴木大拙館」という記念館があります。 私がそこを訪れた時、「それはそれとして」という大拙直筆の掛け軸が飾られているのを見ました。 

大拙の下には、多くの方が相談に来ていました。 大拙は、彼らの話を丁寧に聞いたあとに、「それはそれとして」と切り出して、自分の意見を述べ、アドバイスをしたそうです。 

「がたがたした次元は置いといて、もっと違う次元があるんじゃないか。それ以上のものが元にあるんじゃないか。 元とは本来で、分別視以前の状態のこと」 「それはそれとして」には、そんな意味があるそうです。

 「それはそれとして」という言葉は、問題の次元を切り替える言葉。 そして、それまでの話題、相手の考えや感情を、「否定」も「肯定」もしていないという点が重要です。 「あなたの悩みはわかりました。しかし、Bという考え方もありますね」 

普通の会話ですが、逆説の接続詞「しかし」を使うと、相手の悩みや感情を否定している印象を与えます。 言われた方は、自己否定されたような嫌な気分となり、アドバイスを素直に受け入れられなくなります。

 「あなたの悩みはわかりました。それはそれとして、Bという考え方もありますね」 こちらは、相手の悩み、考え、感情を、否定も肯定もしていません。 むしろ、「あなたの気持ちはよくわかりました。それはそれとして・・・・・・」という、そんな印象を与えます。 

相手を否定する言葉ではなく、相手を受容しながら、話をより高次元へと引き上げる、非常 に高度な心理テクニックです。 それを、誰でも、今から、使えるのです。 実際私は、鈴木大拙館を訪れてから、ネガティブ感情が浮かんだ時に、「それはそれとして」を独り言のようにつぶやくようになりました。 

「わー、原稿が間に合わない!……それはそれとして、今から30分だけ集中して原稿を書こう」 切り替え効果は、絶大です。 パニック状態にある脳を、リセットできるのです。 「それはそれとして」は、様々な場面で、自らの感情や思考を「切り替える」言葉として使えます。 

ネガティブな過去の記憶が蘇ってきた時には、「それはそれとして」のあとに、「今できるこ とは?」と続けて言ってみてください。 脳は「過去の出来事」「過去の体験」に執着しています。 

「過去」にフォーカスしている脳 の注意を、「今」「現在」に持ってくる。 つまり、「今にチューニングする」ことが重要ですから、「今できることは?」と続けるのです。 「それはそれとして、過去は変えられない。今できることをやろう!」 「過去」に限らず、「ネガティブ感情」を切り替えたい時など、いろいろな場面で使えます。

◆ 言葉によって、気持ちを切り替える方法は他にもある(本書より)。 

たとえば… 〇〇さんがあなたの悪口を言っているらしい、という噂を聞いた。 そんなとき、ムッとするが、心のなかで「そんな人もいる」とつぶやく。 不条理なことを言われたときの魔法の言葉だ。

 また、上司や先輩からの怒られたり、嫌みや悪口などのネガティブなことを言われたら、「ありがとうございます。(以後注意します)」と言う。 「ありがとう」と言われて不快になる人はいないからだ。 

心の中では、怒りや反撃の感情がうずまいても、「ありがとうございます」という言葉を言うことで、自分のネガティブ感情をマスキングすることができる。 戦わずに「スルーする言葉」だ。 

人間関係で、嫌な気持ちになったとき、そのたびにカチンときたり、いちいち相手に反撃したりしていては、そのうち満身創痍(そうい)になってしまう。 発した言葉や態度は、必ず反作用として自分にかえってくるからだ。

 「ネガティブ感情」を切り替え、自分をリセットしたいとき… 「それはそれとして」という言葉を使いたい。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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