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何かを手に入れたら

今日のおすすめの一冊は、開高健の『開高健名言辞典 漂えど沈まず』(滝田誠一郎/小学館)です。その中から「漂えど沈まず」という題でブログを書きました。

本書の中に「何かを手に入れたら」という心に響く文章がありました。

《何かを手に入れたら何かを失う。これが鉄則です。》(『河は眠らない』文藝春秋)

 「何かを得るためには何かを失わねばならないという苛酷な鉄則は文明でも革命でも文学でも同様であるらしい。さまざまな国をわたり歩いてノン・フィクションを書きつづけた結果、知らず知らずのうちに私はフィクションの生理を怖れることを忘れてしまっていたらしい。」 (『白昼の白想』 文藝春秋 7頁) 

同じ意味のことを、フランス流に洒落ていうと、 まったく違った言葉になる。 「オムレツをつくるためには卵を割らねばならない」 (『夏の闇』新潮社 9頁) 

これはフランスの諺だが、“卵を割らないでオムレツをつくることはできない"と書いていることもある。

◆美輪明宏氏は、「何かを得れば何かを失う。この地球には『正負の法則』がある」と言っている。

そしてこう語る。

若い女の子には、自分の器量が悪いということを〈負〉だと思っている人もいるでしょう。だけど頭がいいとか、性格がいいとか、健康であるとか、器量は悪いけど、色が白いとか言われる女の子もいるのです。

ですから、やたらと人をうらやんだりしないこと。《正負の法則》を知っていれば、妬(ねた)んだり、うらやんだりする必要がなくなってきます

〈人間は、必ず平等にツケを払わなければならない〉という基本がわかってくると、逆に同情こそすれ、うらやましがることはなくなってくるのです。一番肝心なことは、悪いことが起きたからといって、嘆き悲しむことはない、ということです。

悪いことは長くつづきませんから。そのかわり、良いこともまた長くはつづかない。だから、良いことがあったときには施(ほどこ)しをするなどして、そこそこの〈負〉を先回りして自分で意識してつくるとよいでしょう。そうすれば予期しない、ものすごい〈負〉に襲われなくてすむようになります。(ああ正負の法則/PARCO出版)より

◆正負の法則でいえば、「何かを手に入れたら何かを失う」ということは、「何かを失ったら何かを手に入れる」ということでもある。

たとえば、有名人やタレントにあこがれる人は多い。しかし、有名になって華々しく表に出れば出るほど、その反作用はある。いわれない誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)や、嫉妬や悪口などだ。

禍福は糾(あざな)える縄(なわ)の如し」で人間の幸福や不幸は縄の表裏のようなもの。災いがやってきたら、次には福がやってくるということ。いたずらに右往左往することはない。

だから、幸運が舞い込んできたら、有頂天にならないこと。次にやってくる不運を最小限にするために、福を誰かに分けること。謙虚でいること。

「何かを手に入れたら何かを失う」という言葉を胸に刻みたい。

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