「36歳の少女」(リアル35歳の少女)
発達障害の妹が突然家を飛び出した。何かある度に「ひとり暮らしをする」と言い出す向きがあったけれど、本当に勝手にひとり暮らしを始めた。
過去に二度もひとり暮らしに失敗して、その度に症状が悪化しているというのに。しかも主治医の許可もなく。ほとんど暴走だ。
暴走しているのは薬の影響もあると思う。何年も服用している薬を一錠増やして一週間経過したら、活発になったから。普通は飲めば落ち着く薬らしいのだけれど、妹の場合は増やす毎に躁状態になる薬だと思う。勢いがつく。
言い出したら家族の意見なんて聞かない。自分の意見を絶対押し通す。暴れても、叫んでも、何をしてでも意見を通そうとする。
その性格を分かっているから、母は妹を止めなかった。それは母の策略でもあった。足が不自由なのに歩き始めたから、最寄り駅まで絶対辿り着かずに、途中で疲れて断念して、保護されるか、結局家に戻ってくるだろうとそれを狙って止めなかったのに、馬鹿だったのが父。
父は車で妹を追いかけて、駅までどころか借りている部屋まで送り届けてしまったのだ。親馬鹿だし、馬鹿だし、甘いと思う。父は妹が保護されて入院になることを極端に恐れている。それを阻止するためなら何だってする。警察を始めとする外部の人たちは早く入院させたくて躍起になっているのに。自由を奪われてかわいそうだと父自身も狂ってしまう。結局父も発達障害の傾向が強いからこうなるんだ。自分のエゴで妹を自由に泳がせておきたがる。
父が逃亡を手伝ったとお世話になってる看護師に伝えると驚いていたらしい。当たり前だ。普通、本当に愛情を持っている全うな親なら、ひとり暮らしじゃなくて、入院先を探すだろう。
入院を頑なに拒絶している父は、せっかく私が物書きや音楽を楽しむための避難場所にしていた城を妹に引き渡すように、あっと言う間に連れてきてしまった。
いい迷惑だ。たしかに私の仕事はどこででもできる仕事だけれど、でも、だからってせっかく作り上げた城をこんなにもあっけなく、陥落されるとは思ってもいなかった。
妹の目に触れるとまずいものを手あたり次第、袋や箱につめて、大慌てで車に詰め込んだ。自分が嫌なものは何でも投げるし、破壊する。特に私のものは気に入らないと壊すのが得意なので、とにかく大事な宝物は壊されないように、車に避難させた。
音楽関係、雑貨関係は部屋からほとんど撤去した。ほんの数時間で全部を片付けることなんて不可能だから、とりあえず後は壊されても仕方ないと諦められるものは残して、車で慌てて実家に帰省した。
こんなことになるとは思っていなかったから、一週間前にBUMP鑑賞会を終わらせておいて本当に良かったと思っている。もうあの部屋で何かを書くことはないかもしれない。そう思うと少し寂しい。孤独な空間だったけど、ひとりで集中するには適していたから。
今回、変な手伝いをしてしまったのが父。父にもうんざりしている。妹に首をやられて、首が曲がってしまって治ってもいないのに、前職をやめさせられた原因も妹なのに、どうしてこんなにかばうのか。娘しかいない男ってつまらない。外に女でも作れる甲斐性のある男の方が、家族に依存しないだろう。父を見てると父とは逆のタイプの人しか好きになれない。だから男運なんてない。
ここで35歳の少女の話とつながる。発達障害の妹は25年ぶりに眠りから覚めた主人公のぞみと同じく純粋過ぎるし、同世代と比べて幼い。そんな妹を構うことばっかりの母はたえに似ているし。(あそこまで冷酷ではないけれど。)私はまなみに近い。まなみの説明にアダルトチルドレンって書いてあるし、まさに。好きな人にストーカーまでにはならないけれど、歪んだ恋愛観はまさに。父はのぞみたちの父とは少し違う。あんなに妻の言いなりになれるほどへたれじゃないし。言いなりになってくれる人の方がまだマシ。我が強すぎて、自分の意見ばっかり押し通そうとするし、本当は家庭を持たないでほしかった…独身でいるべきタイプ。歪んだ愛情押し付けてくるから、歪んでしまった。何もかも。
なぜ発達障害っぽいかと言うと、まず幼少期木から落ちてひじを折って、うまく治っていない。酔っ払って、自転車に乗って、土手から落ちて耳を切って、それも縫い目がいまだに分かる。定年退職後に、他人様の家の木に登って、枝を切っていたら、また木から落ちて、今度は腰の骨を折り…。そして妹にやられて首の骨もズレているとか…。全身怪我だらけ。これってADHDじゃないかと思う。かなり多動で落ち着きないし。自己中だし。他にも細かな怪我は数知れず。そんな自分は棚に上げて、家族には厳しくて甘い。一緒にいると疲れる。人からあまり好かれないし。
ドラマと違う点はゆうとくんみたいな助けてくれる存在がいないこと。うちにもゆうとくんみたいな人がひとりいてくれたらいいのに。
でもうちのネタだけで十分ドラマ作れると思う。きっと脚本書ける。そのまま事実を淡々と書くだけで物語にはなります。
私の城は砂の城だった…すぐに跡形もなく消えてしまう儚い城だった。あっけない落城。これが最後の光。今となれば幻。
でも過去に二度もひとり暮らし挫折しているから、母いわく長くはもたないだろうと。城が燃えてしまう前に、奪還できるかもしれない…
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