『溶けた生き物の心臓の鼓動』
遠くで響く鐘の音が空に広がって色を染めていくとして、わたしはその色を知らなかった。知らない色が最も綺麗だと思っていたから、知らなくてもいい、知らなくてもいい、と積み上げて足跡をつけていく砂の熱が、溶けた生き物の心臓の鼓動と響き合っていた。見つめなくてもいい、見つめなくてもいい、とあなたは姿を消して、遠い遠い世界で漂う夢になる。誰も知らないものがあなたでした。沸騰した海の熱で砂漠が息を吹き返し、大きなくじらが飛んだ森の上で、拍手をした記憶が染まっていく。死ぬことと生きることがど