#スローシャッター マガジン Vol.6 旅を愛する紳士たち(田所敦嗣)
スローシャッターマガジンVol.3では、本ができるまでを書かせていただいた。
本が作られる過程で著者が直接関わる作業というのは、全体からすればほんの僅かで、他の作業に関しては、多くのプロが行き交う場面をたくさん見てきた。
編集の打ち合わせが大詰めとなったとき、最後に著者がすること。
この本がどんな本なのかを表現する「帯」を書いてもらうという、大切な仕事があった。
泰延さんからは、
「スローシャッターは、田所さんの本です。田所さんが書いてもらいたいと思う人に、お願いしてみてください」という言葉をいただいた。
以前、noteの複数の読者の方から「スローシャッターの短篇は男っぽい」という感想をいただいていたことが、深く印象に残っていた。
旅、人、仕事。
いくつかのテーマを思い浮かべたとき、僕は帯を、二人のジェントルマンにお願いしようと決めた。
お一方は、椎名純平さんである。
もうお一方は、前田将多さんである。
お二人が「スローシャッター」に共通すること。
それは、旅を愛し、自由な旅の再開を待っているということである。
純平さんは歴史的な厄災以前、年間100か所以上全国各地でライブの旅をし、2022年の再開後は、Live tripと名付けられたライブ映像をファンに届けている。
将多さんはカナダ・サスカチュワン(Saskatchewan)でカウボーイ経験を得たのち、旅に必須となる孤高のレザーアイテムを顧客へ提案し続ける。
著者がしたことの中で、自分の本に帯を依頼するということが、最も緊張した。
ありがたいことに、純平さん、将多さん、共に快く受けていただいた。
後日になり、ご両名から素敵な言葉を受け取った。
帯のデザインも上田豪さんのもと、最後は藤原印刷さんの手によって、初版の帯が完成する。
小さな記憶が多くの人の手によって一冊の本になり、帯には紳士たちの言葉が本を後押ししてくれるかのうように添えられ、スローシャッターという本が完成した。
書き始めたころ、誰にも向けて書いていないはずだった。
編集、装幀、校正校閲、印刷、帯。
全工程の現場にいるプロが「いい本にしましょう」と話し合い、日夜作業にあたる人々の熱に触れていると、一人でも多くの人に届いて欲しいと思うようになった。
そしてそれが本になった瞬間、著者の手を離れていく。
製本を終えた本は、長い旅に出る。
小さかった鮭の幼魚が川を降り、広く深い海へ向かう様に。
その先に何があるのかはわからないが、よき旅であってほしいと願う。
明日の週末は、『スローシャッター』の発売日です。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
どうか、素敵な週末を。
田所敦嗣/Atsushi Tadokoro
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イベントのお知らせ
12/23(金) 20:00〜 下北沢 本屋B&Bにて
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12/29(木)19:00〜 梅田ラテラルにて
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