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ABC XYZ
大発見したんですよ。
まあ、興味のない人にはどーでもいい発見なんですけど、
まずはこの曲をお聴きください。
ある時、糸井重里さんがツイッターで、フランク永井のヒット曲
『西銀座駅前』(1958年)
の話をされていました。
「ABC XYZ」それが、口ぐせのガイ。RT@hironobutnk 有楽町にやたら陽気にやってくるフランクなガイwww
— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) February 10, 2016
で、出だしの
ABC・XYZ そいつがおいらの口癖さ
って佐伯孝夫の書いた歌詞、60年前の歌ですからね、今の時代からするといかがなものか、みたいなことをおっしゃっておられた。で、この歌、なにぶん古いもので、サビは
いかすじゃないか
なんですよ。
糸井さんは以前にも
「今時、“いかす” なんて言葉、佐野元春ぐらいしか似合わないんじゃない?」
たまに、「かっこいい」などのように、いつまでも生き続ける流行語出身の表現もあるけどね。「いかす」は、死んだとも生きてるとも言えそうにゾンビ化している。たまに言ってみたくなる、「いかすね!」「いかしてるね!」佐野元春とか似合うんじゃない?
— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) December 23, 2015
というようなことをのたまわれていたんですけど、
ここで大発見。
佐野元春の曲に、
『ぼくは大人になった』(1991年)
というのがあるんですよ。
お聴きください。
この歌の出だしは、なんと
ABC から XYZ
で、サビは
とても いかしてるぜ
なんですね。
これ、そんな偶然あるわけない。
1956年東京神田生まれ。母親がレコード喫茶のマスターをしていて、銀座が庭だったような佐野元春が『西銀座駅前』という歌のことを知らないわけないんですよね。子供の頃、流行歌でしたからね、ムード歌謡ではあるけれども、きっと耳にしたはずなんです。
となると、『ぼくは大人になった』とわざわざ題名をつけたこの曲で、大人になった佐野元春が、その時点で30年以上昔の、この歌に生きていたコトバに、新しい命を(わざとちょっとダサさ込みで)吹き込もうとしたんじゃないかな、と思うんです。
サウンドは、ムード歌謡とはぜんぜん違って、イギリスの3ピースロックバンド「フリー」の『ALL RIGHT NOW』とか、ジミ・ヘンドリクスとか、あとちょっとオーティス・レディングの『ドック・オブ・ベイ』を彷彿とさせるんだけれど。
まあ、こういう風に、リスペクトと引用があって、そして真剣なパロディをする、その結果、言葉をアップデートできる創作物ってあるんだね、
って今日は大発見した気分なので、初めてnoteという道具に書きました。
ほんとに興味ない人にはどうでもいい話ですわね。おほほ。
ではまた〜
と書いたのが2016年。きょうは2020年11月29日、4年後にまさかの追記です。
うそです。無料です。
この記事を書くきっかけになった糸井重里さんのツイートでしたが、その糸井重里さんが作詞された沢田研二が歌う『TOKIO』(1980年)に
欲しいなら 何もかも
その手にできるよ A to Z
という歌詞があった!
なんたる見落としかと。なにか音楽史上のミッシングリンクが発見されて繋がっていく感じです。
すると、糸井重里さんからはこんなお返事が。
TOKIOの「AtoZ」は、たぶんカーリー・サイモンの歌詞のなかにあって、かっこいいなと思って覚えていたんです。 https://t.co/6lUzGmCuk7
— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) August 10, 2020
こうして、にんげんが創るものの系統樹は、言の葉をしげらせていくのだなあと思いました。
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