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福岡の園バス置き去り事故から考えるべきこと
みなさん、こんにちは。
カタグルマの大嶽です!
さて、福岡県中間市の保育園バス内での死亡事故について、見解を述べたいと思います。
まずは、故人の親御様には心よりお悔やみ申し上げます。
また、もし私自身がその立場だと思うと、悔やんでも悔やみきれません。
間違いなく、園のことを恨み続け、一生心の傷として残ることでしょう。
問題があったと考えられる点
この事故の経緯を調べた際に、明らかに状況として問題があったのは以下の点です。
・園長1人がバス乗車していた
・朝8時にバス乗車したことを確認しており、それにもかかわらず降車の確認をしていなかった
・欠席の連絡がないにも関わらず、担任保育士はそれに気づかなかった
・バス送迎の運用ルールはリーガルチェック済で存在していた
・理事長が会見で説明、謝罪をしていなかった
・中間市の監査では何も指摘はなかった
・園長1人がバス乗車していた
→これは絶対にあってはなりません。そもそも複数の職員が乗車していない状況があり得ません。
ごく偶に、ドライバーがおらず、園長がバスを運転するケースありますが、それも本来はよくありません。
いくら人手不足とは言えども、保育補助やドライバー補助を採用することすらも出来なかったのでしょうか?
・朝8時にバス乗車したことを確認しており、それにもかかわらず降車の確認をしていなかった
→1つ目の原因とも重なりますが、1人で運転し、乗降者させてる状況で、必要な確認が出来なくなるリスクをはらみます。
運用ルールが徹底されているならば、最後部まで確認するという習慣化がされてもおかしくないのですが、それが出来なかったのは、それもされていなかったと言わざるをえません。
・欠席の連絡がないにも関わらず、担任保育士はそれに気づかなかった
→保育園は欠席の日は欠席連絡が保護者からあります。稀にその欠席連絡を忘れる親もいますが、それならば当然担任から連絡をします。
しかし、今回は供述によると、担任が勝手に欠席扱いしていたと言います。
これは絶対にあってはならない対応で、担任自身の行動も当然許されないのですが、これらを他の職員や園長に相談、確認する組織文化がなかったことも大きな問題のように思います。
・バス送迎の運用ルールはリーガルチェック済で存在していた
→記事を見ると、運用ルールは弁護士が作成していたとのこと。しかし、それが徹底されていなかったのは、運用ルールの共有、定期的な確認など、リスクマネジメントへの意識が不足していたのは間違いありません。
ルールやマニュアルがただ存在するだけになっている園がたくさん存在するのが現実です。
・理事長が会見で説明、謝罪をしていなかった
→今回、保護者説明会は園長が対応したとのこと。一般企業では社員の不祥事は経営者である社長が会見も含めて対応するのが常識です。
しかし、理事長は園長に任せたのでしょう。ましてや今回は当事者が園長です。
尚更、経営陣が出てきて話をするのが筋です。このあたりからガバナンスやコンプライアンスの脆弱さを感じてなりません。
・中間市の監査では何も指摘はなかった
→言うまでもなく、認可保育所は行政管轄かつ行政の委託事業です。
もちろん中間市も監査をしていたのですが、年1回の監査で、そこでは把握ができなかったのだと思います。
園長が1人で送迎する状態にも関わらず、市が把握していなかった行政の管理体制にも問題が及ぶのは当然のことと思います。
以上、私が記事を見て感じたことで、これ以外にも問題はあるのでしょうが、これだけを見ても、管理体制が杜撰だったのは見て取れます。
課題を整理する
改めて、この園の状態を整理すると、
・人手不足状態だった
・園の運営管理体制が不十分だった
・法人としてのガバナンスが不十分だった
・市(行政)の管理体制にも問題はあった
ということなのでしょう。
園が増え、人手が不足し、マネジメントが出来ない園長が増え、統率の取れない園が増え、質が低下する中で、毎年園での事故件数、発生率が増えてます。
そして、厳格に運営管理をしている園もたくさんある一方で、このような痛ましい事故が起こると、さらに厳格な管理をする必要が出てきます。
有名なハインリッヒの法則では1つの重要事故の背景には29の軽微な事故、300の異常があると言われます。
つまり、このような事故が起こるということはこれだけの数の異常があるということです。
これから園で出来ること
そこで、是非とも以下を検討していただきたいと思ってます。
・園バスはどんな理由があれど、2名以上の職員乗車を必須とする→少なくとも加算対象の給付金制度を作る
・欠席連絡のない家庭には必ず連絡を入れる
・リスクマネジメント研修の徹底→監査対象
・園バス乗降チェックリストを監査資料とする
最後に私からの提案
そして、個人的には以下を提案したいと思います。
・年々負担の増える採用コストを抑える制度
・研修環境
・支援員制度の拡充が必要
・園バス乗降センサーやカメラ設置の必置
だと考えます。
採用コストに関しては、人材紹介コストに多額のお金を払う文化をとにかく無くしたい。
明らかに園や法人におけるコストが膨らんでます。
人材紹介会社からは反感が出るでしょうが、手数料に上限を設けたり、祝金制度の廃止などは出来ないものでしょうか、、
その分を園の質を高めることに活用できるはずです。
また、研修は近年イーラーニングが格段に標準化しましたが、受けて報告して終わり、ではなく、その効果測定をして、その効果や状況を踏まえて監査で管理、指導していく形にしてほしいと思ってます。
当社システム、カタグルマでも、研修計画上の全ての研修を自己評価の内容とリンクさせ、その課題の点数が把握できるようにすることで、研修の有用性を把握できるようにしています。
今後は研修受講履歴と自己評価の点数推移を繋ぎ、どう変化したのかを管理できる機能をリリースする予定です。
支援員制度は、現在の子育て支援員は支援員研修を受ければ認定されますが、そこに例えば「1年以上の現場経験」のある方を「正支援員」、そうでない方を「準支援員」とし、正支援員ならば、認可保育所でも75%までの保育士等配置として配置カウントできるようして、配置人数を増やせるように出来ないものでしょうか。
今回、事故の起きた園の園長も、しきりに「人手不足」と話してたようですが、それによって誰も配置出来ないならば、一定の基準を超えた方が少しでも増えた方が良いに決まってます。
朝の時間帯の保育者の採用が難しいのは周知の事実ですが、正職員を朝の時間帯に入れると今度は夕方が手薄になります。
ここに朝夕の特例がありますが、その運用も支援員研修が必須など、簡単ではありません。
この時間帯に配置をするのは、子育て期の方では難しく、やはり無資格で特に年配の保育補助を入れざるをえなくなります。
なので、そこに対して、高齢者等活躍推進加算だけでは心許なく、9:00まで、17:00以降などで、「朝夕保育補助設置推進加算」を新設して、処遇改善に充てていけないものでしょうか。
最後に、園バス乗降センサーやカメラ設置の必置です。
ここに設置加算をつけてほしいと思います。
長くなりましたが、今回の痛ましい事故を通して、
「かわいそう」
「園の管理がダメなんだ」
だけで終わりにせず、一人一人が考えていることに対して、声を上げていかなければならないと思ってます。
未来を担う子どもたちのために、質が高まることを祈るばかりです。
ではまた。