開園直前の事業中止に関して想うこと
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
カタグルマの大嶽です。
さて、先日保育園幼稚園向けの某Saas企業様の経営幹部合宿に外部アドバイザーとして参加させていただきました。
参加者は11名、うち私以外にもサービスをご利用されている理事長、園長先生が2名外部で参加。
時間は8時間、ぶっ通しで行われました。
前職のコンサル会社ではよく「合宿」をやってましたが、久しぶりに「合宿」の雰囲気を感じ、改めてその良さを感じました。
普段は話せないこと、詰められていないことを出来るだけ本音で話すこと、時にはぶつかり合っても前に進めることが出来るのが合宿の特徴ですね。
実はスタートアップやベンチャーは現在、合宿をかなり積極的に取り入れてます。
その理由は、今お伝えした通り、異空間、非日常の中で、普段話ができないことを語り合う場として重視しているからです。
さて、この合宿のアジェンダは
・マーケティング・セールス戦略
・プロダクト開発
・これらの推進体制
がメインで、特にマーケティングに関する知見として、私も30分ほど保育業界の動向、事業者の課題と進むべき方向性のお話をさせていただいたり、同じSaaS事業者としての経験踏まえて、SaaSのマーケティング戦略についてのディスカッションに参加させていただきました。
生々しく経営データや指標を公開いただいたのですが、当社と比較した際に、何が優れていて、何が課題なのか、そのあたりがよくわかります。
※ちなみに当社カタグルマは、解約率、CAC(顧客契約単価)が低く、契約率、エコノミクス(マーケティング効率の総合指標的なもの =LTV/CAC)が高いです。
さらには、マーケティングやセールス施策だけでなく、プロダクト開発における推進体制の作り方なども大変学びの多い時間でした。
そして、改めて保育園幼稚園向けにSaasで価値提供をしていくためには、
・寄り添う→相手をよく知ること
・支援者マインド
・半永久的にお付き合いする覚悟
が必要だと感じます。
売りつける、売ったら終わり、上手くいかなければ撤退、、などのマインドでは絶対に上手くいきませんし、そもそも業界の方々に失礼です。
保育園でICTの補助金制度がスタートしてから、保育業界向けに登降園管理や保護者連絡ツールを開発すれば売れる!ということで、参入してシステム開発したベンダーを見たことがありますが、今どうなってるかと言えば、全く導入が進んでいません。。
業界と関係する方々に対する敬いの気持ちが大切だという事です。
上から目線だったり、事業者を否定したり、軽んじて接していると、その雰囲気は相手に伝わるものですからね。
さて、ここからが本文です。
先日ある親しい社福の経営者からLINEでメッセージがあり、
「某政令指定都市で新年度開設予定の認可保育所が今年に入り、急遽開園を中止になった」
という内容でした。
ネットで調べれば具体的内容が出てくるのですが、あえてここでは伏せたいと思います。
この件、保育業界にいる方ならば、極めてイレギュラーな事態というのは理解できると思います。
また、その理由として、
・住民の反対があった
・人材が集まらなかった
だと思う方が大半だと思います。
しかし、違います。その原因は、
「園児の入所希望が集まらなかったから」
です。
政令指定都市で、かつ最寄駅を見ても、まだまだニーズがありそうな地域でこのようなことが起きたということです。
しかも、入所希望が0人だったとのことです。
実は当事者の法人の理事長は私の知り合いで、まだ直接聞けてないのですが、(聞きにくいですが、、)工期が遅れ、募集活動も手付かずだった、ないしは4月に間に合わない可能性があり、入所申込の対象にならなかったという原因が考えられます。
しかし、どうやらそうでもないとのこと。
仮にそうであっても、0人ということは考えにくいですね。
実は記事を見ると、一次利用調整結果が極めて厳しく、事業継続に重大な支障をきたす可能性が高いことが理由とのことでした。
つまり、今回の件、分かりやすく言えば、
「募集結果の不振による経営リスク回避のための直前の事業停止」
ということです。
首都圏の大都市で認可保育所開園に関して、このようなケースをこれまで見たことがありません。
ちなみに、仮説ですが、定員が少ないため、ここは近隣に本園のある分園の新規開設だと思います。
つまり、0-2歳対象なので、保育ニーズが高い年齢ということもあり、尚更気になるところですが、実は私の経験ですと、本園から距離のある分園というのはあまり人気がありません。
小規模保育と同様に3歳から本園に移らなければならないことが主な理由です。
私自身も娘が分園に2年間通い、そこから本園に移った、まさに同じ経験をした人間ですが、本園に移ると何だかアウェイ感が出たりしますし、子どもも本園で仲良しな子が固まっていて、馴染めない子もいました。
実は娘が通っていたこの分園も再来年度閉園することが決まっています。
理由はもちろん、園児が集まらないからです。
※ちなみに千葉県流山市は人口増加率全国トップクラスにも関わらずです、、明らかに供給過多になりつつあります。
話しは少し逸れますが、先日ある学校法人のまだ若い理事長から、
「うちは数年前に幼稚園から認定こども園になり、駅前に小規模保育も作って時代の変化と共に対応してきたのだが、これから先の展開が見えない、どうしたら良いですか?」
というご相談を受けました。
その一つとしてさらに小規模保育も含めた分園を作るという選択肢もあります。
しかし、もはや2019年以前のように、立地が良ければ園児が集まるという可能性は低くなっており、小規模保育や分園を出しても、先ほどの事業中止ということが起こりますので、自治体調査頼りの供給必要エリア設定だとしても慎重に精査しなければなりません。
今後の事業戦略は「両利きの経営」で言えば、
・深化
・探索
に分類され、どうしても市場が停滞すると、「探索」つまり、「何か新しいことをやらないといけない、、」という心理で、新規事業や新機能、新園、M&Aによる新会社などに目が行きがちですが、
・深化7:探索3
くらいのバランスが丁度良いので、経営者としても時間と意識の70%は「深化」、つまり既存園の充実、質向上、アップデートに比重を置くべきです。
「強い本業、強い本園づくり」
が最優先、具体的に言えば、本園において、
・商圏内園児数シェアで最低でも地域内トップ3に入っていること
・明確なオンリーワンがあり、それがこれまで最大の入園理由になっていること
のどちらかを目指さないまま、事業分散すると、本業、本園が揺らぎます。
中小法人はこの考え方を見失うと間違いなく危険です。
大手法人のような施設展開を真似て、無理して拠点展開を目指すと痛い目に遭います。
彼らがそれをできるのは、スケールメリットによる効率化で、会社として事業やオペレーションの平準化、標準化、本部機能への投資をしているからです。
よって、中小法人にとって大切なのは、
・保育理念の再定義・浸透
・理念に基づいた保育特徴の再定義
・保育の振り返り・改善の仕組み化
・子どもの成長の可視化
・職員の業務負担軽減
・事務費と一部事業費のコスト削減
・人材育成の個別最適化
・保護者との関係性づくり
・子育て支援機能の強化
など挙げればキリがないのですが、これらを一つ一つ高めていくことです。
これらにおいて、全てうちの園では完璧なんてことはあり得ませんから、改善すべき課題に対して時間もお金も投資することが最優先です。
ではまた。