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浅草での出来事

浅草を歩いていたら
前から男がすれ違い間際に
「あの、すみません 僕東京出てきたんだけど仕事うまくいかなくて、これからふるさとの宮城まで歩いて帰ろうと思うんだけど、お金なくて、腹減ってて、500円でいいんで恵んでもらえませんか?」
と話しかけてきた。

男はぼさぼさの頭でひざ下までの短パンにスニーカーを履いていて、見るからにホームレスという風体ではなかったが、このままだと坂を転げ落ちるようにそうなるだろうと思われた。

「別にいいけど、働かないと。東京だったらどんな仕事でもやる気になればあるじゃないか。」と私は財布から千円札を取り出し男に渡しながら言った言った。それはその男になんとしても這い上がってほしいとの思いから出た言葉だった。
男は「区役所行ってみます。どうもありがとうございます。」と言い去って行った。

その後私は歩きながら、自分のこの言動が正しかったのか、そうではなかったのか考えた。いつの世も社会からはじき出された人はいて、行政はそれをなくすことはできない。今のこの国の仕組みは果たして最善な仕組みなのだろうか、思いは逡巡し答えは果てしなく深い闇に紛れ込むように感じた。


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