事実と意見―あるコンサルタントの体験②
前回はこちら→https://note.com/hironari_kawata/n/neac32b210afc
事実と意見の区別が難しいってどういうことだろう?
腑に落ちない感覚でいたら、表情に出ていたのか、先輩がいたずらっぽい顔をして聞いてきた。
「源頼朝が鎌倉幕府を作った。これは事実?意見?」
「えーっと、事実だと思います。」
「うんうん、そしたらそれは何年でしょう?」
「なんか最近は1192(いいくに)じゃなくて1185(いいはこ)で覚えるようになったと聞いた覚えが…」
「さて、じゃあ、幕府が成立した年は事実じゃなくて意見なの?」
答えに窮していると先輩はさらに問うてきた。
「たとえばさ、子供同士が喧嘩したとして、きっかけとしてA君が「B君が殴ってきた」って言うとするやん」
「はい」
「んでB君が『俺殴ってへんわ、腕が当たっただけや!』って言ったら、『殴った』は少なくともB君にとっては事実ではないよね。反対にB君も『だってお前がいらんこと言うからやろ!』とか言ってきたら、『殴った』ことはAB共通の事実だよね」
「はい」
「ということは僕らが日常的に使う『事実』に含まれる範囲って、結構あいまいじゃない?」
「あー」
「だから『事実を確認したい』と言っても、こちらが思う事実が返ってこない可能性は十二分にあるんだよね。あとは『なぜですか?』とか『どうして?』と聞くと非難と解釈されて言い訳が返ってくることもよくあるからさ、たとえば「何があったんですか?」とかできるだけ過去に実際に起こったことで、帳簿とかからも裏どりできる現象を聞くといいかもね。
とある有名コンサルは「問題」とか「課題」とかを安易に使わずに、「UDE(Un desireble Effect;望ましくない現象)」という言葉を使うくらいやしね。」
「それも含めてさ、『全てにおいて意図が重要』という点に帰着させたがる僕の癖があるんだけどさ、
①最終的にその問いを発することによって、あなたが得たい情報はなに?あるいはあなたが到達していたい状態はなに?っていう意図と、
②そのために相手にどんな行動をお願いしたいの?という相手へのリクエスト
この2つを明確にしておくと、コミュニケーションにおける齟齬はだいぶ減ると思うんだよね。そう言いながら①も②も曖昧なまま思いつくまま喋っているんだけどね」
「そーっすね、先輩話し出すと止まんないですもんね」
「いや、そこは『先輩、さすがっす』とか言うてくれへんのかい!」
ちゃんちゃん。