謝罪しない&自己責任②

来てくれた警察官は手際よく事故状況を記録してくれていた。

その様子を見て少しホッとして、「あ、そうだ」と気がついて保険会社に連絡を入れた。入っててよかった自転車保険。

保険会社との電話をしながら、相手方の保険会社の情報もと思い、話が通じるか一抹の不安と、込み上げてくる怒りを抱えながら、男に声をかけた。

「あなたの保険の情報を教えてください」

相手はきょとんとした顔をしていたので、腹立ちついでにこう付け加えた。

「恐らく100%あなたの責任なので、そちらで全額払っていただくことになりますよ!」

「責任?」
男は責任という言葉に反応したようだった。

「あなたはきっと今事故にあって、とても心も体も傷ついてらっしゃるんですね。」
「でもあなたのその反応は、あなたの中にあるニーズが…きっと健やかさや安全でしょうかね、それが満たされていないからなんです。」
「今回の事故は刺激にはなりましたが、原因ではないのです。」
「あなたのその反応はあなたのもの、あなたに責任があるのです。」

男はこう捲し立ててきた。

こいつは何を言っているんだ?
痛みが俺の責任?人にぶつかっておいてその言い草はなんだ。

あまりの怒りに頭がクラクラしてきたと思ったら、先ほどの警察官が男に声をかけた。

「あなたこの男性に対してとても失礼なことを言っていますよ。大きな事故で動転しているのかもしれませんが、落ち着いてください。この男性はあなたの任意保険の情報を聞いているので、ちゃんと答えてあげてください。」

お巡りさん、ありがとう!
そう目で会釈をして男を見ると、ようやく話が通じたのか、
車検証と一緒に保管されていたと思しき保険証書を車から出してきた。

証書をスマホで写真に収め、お互いの携帯番号を交換したところで、
救急車に乗り込んだ。

救急隊員の処置を受けていると、急に肩が痛み出した。さっきまでアドレナリンが出ていたのだろうか。とりあえず命が助かったことに安堵しながら、これから先のことを思うととても滅入りそうだった。


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