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ポテト男爵

フライドポテト、フレンチフライ、チップス、フリットなど、様々な名を持つベルギーの主食。世界中で愛されるポテト(世界無形遺産にも申請中?)。その魅力に迫るべく、私の友人で、ポテトを愛する”ますみや”氏に話を聞いた。

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年末のまだ昼食には早い時刻、私とますみや氏は大井町の駅前で落ち合い、近くの某ファーストフード店に入った。私はコーヒーを、ますみや氏はバーガーセットを注文し、席に着いた。

バーガーが運ばれてくると、ますみや氏の顔色が変わった。

「しまった、玉葱を抜いてもらうの忘れてた・・・」

ますみや氏はそう言って、バーガーを分解すると、肉の上に塗られたケチャップの中から玉葱を取り出し始めた。なんでも、玉葱のシャキシャキとした食感が気に食わないとのこと。野菜が嫌いというわけではないらしい。炒めたり、みじん切りにしたりして、食感を無くせば食べられるのだそうだ。

ますみや氏は、玉葱を抜き終えると、バーガーを元の形に戻してから頬張り始めた。もう片方の手ではFate/Grand Order (FGO) の画面を忙しなくタップしていた。私たちはしばらく世間話をした——と言っても、ほとんどは私のFGOにおけるサーバントのレベルの低さについて説教を受けていたのだが——ますみや氏は、バーガーを食べ終えると、いよいよポテトに手を伸ばした。

そこで、私は言った。

「ポテトについて、意見を伺いたいのだが」

ますみや氏はポテトを頬張りながらぶっきら棒に言った。

「ポテトの批評に言葉はいらん」

私はいきなりのクライマックスな回答に戸惑いながらも、ダメ元でもうひと押ししてみた。

「じゃあ、今までで一番美味しかったポテトは・・・?」

「ポテトに貴賤はない!」

私は、恥ずかしながら“キセン”という言葉を知らなかったので、またも戸惑ってしまった。ますみや氏は続けた。

「素面で話す話でもないなぁ、発言にも照れが出てしまう」

ますみや氏は急に照れくさそうにし始めた。そうは見えなかったのだが・・・私は気を取り直して質問を続けた。

「ポテトの美味しさは、どこにあるのだろうか?」

「塩・油・炭水化物、全てが美味しさの源だろう?」

即答だった。ますみや氏は、ポテトの最後の一本をつまみ、私の顔の前に掲げて言った。

「君もポテトを食べるのだ」

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2017.12.30 大井町の某ファーストフード店にて

ますみや氏:東方同人を中心に活動中

カバー写真:ヒロム


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