シーンの魅力を外に届けるのは誰? JFFC後に考えるべきこと
熱狂の裏で停滞感を覚えたのは、私だけなのか。余韻に水を差すわけではないが、前に進むために考えたい。
フリースタイルフットボール日本一決定戦「JFFC 2020 supported by COMP」は、Ko-sukeの大会4回目の優勝、3連覇で幕を終えた。同大会は今夏に再び開催予定だが、“打倒Ko-suke”の構図がより鮮明となるだろう(もちろん、彼が出場すればだが)。
今大会を振り返る上で、noteの題材として初めに思い浮かんだのは、「Ko-sukeが絶対王者たる由縁」だった。ただ、これは今更言うまでもないし、一番伝えたいことでもない。それよりも、フリースタイルフットボールを広めるための話をしたい。
ちなみにプレーの解説は、kazuyabrianさんがやってくれている。
※本記事の内容は、日本フリースタイルフットボール連盟(JF3)の見解ではなく、個人の見解です。
現在のシーンに覚える停滞感
フリースタイルフットボールは、社会に届いているか。JFFCは、身内が盛り上がる大会で終わっていないか。シーンの普及・発展に携わる身として、この問題を考える機会は多い。
社会に届けるという意識は、全員が持っている必要はない。ただ、意識している人の母数が増えなければ、シーンは停滞する。誤解を恐れずに言えば、現在のシーンにはいささか停滞感を覚える。
人口増加や認知向上などプラスの面もあるが、フリースタイルフットボールの魅力が伝わりきっていない。もっと細かく言えば、JFFCや、それに出場する選手の魅力が届いていない。
ここでいう魅力とは、プレーではなくパーソナルな面である。例えばsenaは、足ペラがきっかけでJストールのスタイルを確立し、実績ゼロから予選1位に上り詰めた。
SYUN-YAは、フリースタイルフットボールを始めて間もない頃にKo-sukeと出会い、トッププレーヤーへの道筋を辿る。そのKo-sukeと今大会の初戦で相見えるも、師の背中はまだまだ遠かった。
AKIは、前回大会では組み合わせの運にも恵まれ、初出場ながら3位に入る。今大会では4位と順位を下げたが、本人の“本気度”は明らかに前回を上回っていた。
ストーリーには、人を引き寄せる価値がある
選手にはストーリーがある。このマイナーなカルチャーを始めた理由、今のスタイルに辿り着いた軌跡、JFFCにかける思い……。ストーリーが皆無なわけがないし、そんな生半可な努力ではJFFCに出られない。
そのストーリーにこそ、人を引き寄せる価値がある。ストーリーがあるからこそ、人は応援したくなる。ならば、それを伝えない理由がない。
異業種の話だが、元任天堂デザイナーの前田高志は、「『知ってもらう』ということは、ある意味お金よりも価値が高い」と述べている。
今大会では、選手が大会に至るまでの過程が見えにくかった。ここでいう過程とは、オンライン予選の出来ではなく、日本一への決意や、どれだけの努力を積み重ねてきたかだ。
フリースタイラーはInstagramユーザーが多く、ストーリーズで発信していたのかもしれない。ただ、ストーリーズは良くも悪くも消える。ライターという職業柄もあるが、私は伝えたい思いは残すべきだと考える。
Twitter、Instagram(投稿)、Facebook、YouTube、note……手段はいくらでもある。ライターとして、私がストーリーテラーになることもできる。ただ、選手自身の発信が最もダイレクトに伝わるかもしれない。
注目すべきバトルも、ただの一戦になりかねない
私自身も発信の重要性に気づいたのは、フリースタイルフットボールの第一線を退いた後だった。選手という立場にいると、内側(フリースタイルフットボール界)での地位を上げることばかり考えてしまい、外側(社会)に届けることに目が向きづらい。
以前の記事でも書いたが、フリースタイルフットボーラーはまだまだ希少性が高い。やっていること自体に大きな価値がある。誇って良い。その価値を最大化するために、プレー以外のパーソナルな面も押し出してほしい。
JFFCでは毎回、大会実行委員長兼MCの横田陽介が、バトルの注目ポイントを解説する。その中で、対戦する2人の関係性が紐解かれる。
またか......! フリースタイラーは数が多いので、同じカードはそんなに何回も見られないですが、この2人は前回のJFFC、直近のアジア大会、どちらも準決勝で当たっています。そして、どちらもIbukiが勝っています。「今回はどうにか勝ちたい」とAKIは言っていました。
あと、AKIは「Ibukiとのバトルはマジで楽しいから、また当たりたい」と。ここまで来て1つ目標は達成したので、もう1つの目標もがんばって達成できるように……。
(JFFC 2020 トップ4「Ibuki vs AKI」の前のMC)
これを聞いたら、誰もが“因縁の対決”と感じるはずだ。AKIへの期待も膨らむ。逆に、これがなければ因縁も何も伝わらず、ただの一戦になりかねない。
シーンの魅力を外側に届けるのは、誰なのか
日本人はストーリーを好む。高校サッカーや箱根駅伝を見ると、実況は選手やチームのストーリーを多く語る。そこで観客の感情移入が始まり、学生たちのドラマが最大化される。
フリースタイルフットボールにもドラマが詰まっている。それを内側で完結せずに、外側にも届けることができないだろうか。シーンの魅力を一番知っているのは、恐らく選手たちだ。そうでなければ、四六時中ボールを蹴り続けることもないだろう。
魅力を外側に届けるのは、JFFCなのか、選手なのか、それとも私なのか。JFFCは格好の舞台ではあるが、年に1度しかない。では、大会期間外は“空白”に終わらせてしまうのか。今一度、日頃のフリースタイルフットボールとの向き合い方を見直したい。
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