我妻善逸と行く吾妻線の旅
群馬県渋川市の渋川駅と群馬県嬬恋村の大前駅とを結ぶ、JR吾妻線。
群馬の山奥を縫うように進み、草津や万座といった有名な温泉地や首都圏の水瓶の役割を果たす八ッ場ダムにも近い、全長55.3kmのローカル線です。
そんな吾妻線ですが、善逸ファンが『あがつま』つながりということで善逸と旅をしてる人って果たしているのだろうか… 調べると、まずいません(笑)
『ならば!私が第一人者になっちまおう!』という思いつき企画で旅を始めることに相成りました。
善逸の誕生日・9月3日のきょう、旅の様子をお届けできることが嬉しいです。
今回も長丁場の記事ですが、どうか最後までお付き合いいただければ幸いと存じます。
・・・
さて、私はもともと首都圏には住んでいましたが、振り返ってみれば、群馬県をしっかり旅したことがなかったなぁということもあり、この機会に楽しんでみようと思い立ちました。
季節は8月。JR全線が乗り放題になる『青春18きっぷ』という魔法のきっぷが使える期間中。私が住んでいる山形から群馬に行こうものなら、本来であれば片道10,000円以上はかかるところ、およそ1/5の料金で楽しめる。なんと素晴らしいことだ、この機会を逃す理由はありません。
時刻は20:40。
仕事帰りの足でそのまま鶴岡駅へ。
睡眠よりもこんな夜に移動を始める理由は…
この一本が終電だからです。
田舎の終電は早いのです。
むしろもっと早くに終電になる地域もあります。
これを逃すと次の列車は翌朝5時すぎ。
旅のスケジュール的に始発に乗ったとしても、群馬到着は夕方を余裕で過ぎてしまうため、前日出発しないとフルで楽しめないのです。
深夜バスや新幹線、飛行機にすれば良いじゃんという声も聞こえてきそうですが、それでは青春18きっぷの旅の意味がありませんし、速すぎるものは便利ですが、呆気なくて旅情がないですからね…
󠄀ほんの少しだけ、暗い話をさせてください。
私にとって思い返すことも辛かった今年の春。
いじめに近い地獄のような前職での苦しみから3月いっぱいでようやく解放され、馴染みのある山形で新しい環境にて、のびのびと楽しく仕事と生活ができることの幸せを感じ、当たり前じゃなかった旅と遊び、そして暮らせる自由に気付かされた激動の日々を乗り越えてきました。
憧れや理想だけで飛び込んでしまい、さまざまなものを失ってしまった人生の大失敗から泣き苦しみ足掻き、いま、ようやく人生も旅も再スタートを切ったところです。
夜の日本海を南へと向かう列車の中で、善逸と車窓を眺めながら、新しい旅の始まりを特別な気持ちで迎えました。
旅ができるって、こんなに幸せなことだったのかと…
時刻は23:28、新潟へ到着。
遅延がありましたが、村上から乗り換えの列車が接続を待ってくれる措置が助け、本日の終着駅の新潟で、始発待ちをすることに。
会津若松に住んでいたころは、只見線や磐越西線経由でよく訪れていた新潟。
時間も時間なだけに、万代シテイのバスセンターカレーやナポリタンは楽しめませんでしたが、またの機会に。
さて、一夜明け、いよいよ吾妻線に向けスタート。
翌朝は日差し厳しくも抜けるような青空が広がり、旅のはじまりには有り難すぎる天気となりました。
上越国際や岩原(いわっぱら)など、名だたるスキー場が沿線に多い上越線。
冬は銀世界になりますが、夏には緑がいっぱいの山々と田園の風景を車窓から楽しめます。
途中、土合駅という日本一のモグラ駅を通過しますが、ここは下り方面のホームと地上改札との高低差が、なんと81mもあり、462段の階段で約10分以上歩かなければならない世にも珍しい駅なのです。
なんだかんだで、土合駅は伊之助が似合います(笑)
そうこうしているうちに、列車は群馬県に入り、みなかみ町は水上駅に到着。
途中の越後湯沢駅で車内改札があったのですが、乗り合わせた他のお客さんのほとんどが同業者。
渋川駅で降りるまで、なんと鶴岡から隣にいた御年配の女性と上越線で一緒の列車に乗り合わせるということもありましたが、青春18きっぷのシーズン、このきっぷを使う人間あるあるな出来事です(笑)
ついに、吾妻線が発着する渋川駅に到着!
朝の涼しさから一転、カラッとした暑さが包みます。
無限列車編で盛り上がっていた頃は、荻野屋のコラボで売り子姿で峠の釜めし片手に笑っていた善逸でしたが、今や吾妻線で群馬を旅することになるとは思ってもいないでしょう(笑)
渋川駅のホームには、当時の三等客車を模した待合室があり、あの無限列車の座席のような見覚えのある姿に内心かなり興奮しつつ、善逸と記念撮影。
長旅にこの垂直は辛いだろうと思いつつ、現代の人間工学に基づいた快適な座席に技術の進歩を感じながら、駅の外に出ることに…
渋川駅に着いたのが午前9時を少し過ぎたところ。
しかし、吾妻線の次の普通列車は11:10と、1時間ほどの待ち合わせがあります。
せっかくの待ち合わせ時間を駅だけで過ごすのは勿体ないと思い、少し駅周辺を歩くことにしました。
渋川駅から歩くこと5分ほど。
着いたのは駅前児童公園という噴水や水あびができる公園。
そこにはデゴイチが静態保存されており、さすがSLにチカラを入れている群馬ならではの光景だと感じました。
暑さも厳しいため、渋川駅に避難。
ホームに出てみると、そこにはハッキリと『吾妻線』の3文字が書かれており、いよいよ乗るのだとワクワクが止まりません(笑)
やってきたのは211系。
東海道カラーが懐かしい名列車です。
駅のアナウンスや車内放送で繰り返し『吾妻線』というコトバを聞くたび、ひとり興奮している私は完全に不審者そのもの(笑)
平日の金曜日にも関わらず、車内は買い物帰りや草津に向かうお客さんでかなり混雑していたため、車窓を撮るのは憚られると思い、行きは暫しの我慢と相成りました。
ついに、善逸と吾妻線に乗る夢が叶いました。
渋川にいた時より明らかに風が涼しく、鳥や木葉の音が大変心地よい吾妻線。
今回の吾妻線の旅は、八ッ場ダムの最寄駅『川原湯(かわらゆ)温泉駅』と、吾妻峡温泉の最寄駅『岩島駅』を拠点に旅をします。
本来なら、終点の大前駅や万座・鹿沢口駅まで行きたいのですが、流石にスケジュールがあっぷあっぷになってしまうので、次回以降、少しずつ制覇していきたいと思った次第です。
川原湯温泉駅は、もともとここより更に麓にあったのですが、先述の八ッ場ダムの建設に伴い、高台に移転しました。周辺には日帰り温泉やお宿もあり、新宿から一本で高速バスも走る、交通の便には困らない駅です。
足がない私、歩いて八ッ場ダムに向かいます!
といっても片道30分は容易いもの。工場で毎日2万歩以上歩いて鍛えていますので、景色を楽しむ余裕もあります。
利根川水系の吾妻川、ダムに近づくたびに川幅が大きくなってゆきます。
山奥とはいえ、暑いことには変わりなく…
タオル片手に汗を拭いながら、焦らずゆっくりと歩いてゆきます。
歩くこと20分ほど、ついに八ッ場大橋が見えてきました!
八ッ場大橋から見えたのは、八ッ場ダムの姿!
写真ではなかなか伝わらないのですが、とても広いダム湖が広がっていました。
もともと八ッ場ダムがある吾妻地域は、このシーズン雨が多く、天候も変わりやすいのですが、私が訪れたこの日は青空が広がり、運が良かったなぁと2倍嬉しくなりました!
八ッ場ダムは首都圏の水瓶として、そして重要な治水設備としての役割を果たしています。
以前、地元の方でも経験のないような台風による豪雨があった際は、この八ッ場ダムが満水になりながらも被害を防いだ実績もある頼れる存在です。
炎天下のなか歩き、かなり空腹だったこともあり、八ッ場ダムのすぐ近くにあるうどん屋さんに立ち寄り、昼食をとることにしました。
地元のかたと待ち時間に談笑していたのですが、ここのうどん屋さんは本当に美味しいのよ〜!と太鼓判。
その一言に偽りなし。コシが非常に強く食べ応え十分な喉越しと麺の香りに、たいへん美味しくいただきました。やはり、地元のかたのおすすめは本物です。
このところの関東地方、雨がなかなか降らず、他のダムでは取水制限をとるかどうかというニュースも流れていたこともあり、八ッ場ダムも水位がかなり下がっていました。
八ッ場ダムに注ぐ吾妻川のダム湖は『八ッ場あがつま湖』という愛称が付けられています
展望台もあり、ダムと湖が一望でき、天気の良い日にはこのような絶景を楽しめます!
これから台風シーズンとなります。
このところ、毎年のように特別警報が発表されるような異常気象が続く昨今。首都圏の水瓶としての役割だけではなく、これからも命を守る存在として、八ッ場ダムには活躍してほしいと願いつつ、川原湯温泉駅に再び30分ほどかけ戻ってきました。
吾妻線には先頭車にポツンと2人掛けの小さなクロスシートがあり、車窓を楽しめる数少ない座席がありますので、乗ってみたら探してみてください。
昼過ぎになり、少し雲も出て日差しが和らいだでしょうか、気温は上がりつつも心地よさは残る吾妻線。夏の避暑にはもってこいの路線です。
岩島駅から向かうは『道の駅 あがつま峡』
道の駅に温泉が併設されているステキなところなのです。
岩島駅からは関越交通さんの路線バスが通っており、バス一本で道の駅に向かえます。私のような足がない人間には有り難い限りです。
バスの時間を逆算して旅をしていたのですが、限られた時間にも関わらず、ここまで滞りなく旅ができていることに幸せを感じながらバスを待つことに。
地元の人に馴染み深い、地域の路線バス。
こうした小さなバス停はエモさがあって好きです。
来たバスは大型のハイエースでしたが、運賃表示器や交通系ICにも対応している便利なバスで、快適そのものでした!
地元のおばあちゃんが乗り降りする、長閑な光景にホッコリしつつ、道の駅が近づいてきました。
ついに、道の駅 あがつま峡に到着!
山間に突然現れる立派な駅舎、2014年オープンということもあり、真新しく立派な佇まいで、駐車場も広く、キャンピングカーなどの大型の車両も余裕で停められそうな広さでした。
当初、なかなかクルマでないと到達が難しいと思いましたが、時間さえ合えば、吾妻線とバスを乗り継げば来れるアクセスの良さでした。
道の駅に温泉がある有り難さもさることながら、隣の産直では地元の食材やお土産まで買える。道の駅ならではの姿です。
ここ、道の駅 あがつま峡の温泉『天狗の湯』は、なんと源泉掛け流しという贅沢さ。旅の疲れも吹っ飛びそうです!
館内は広々としており、畳敷きの大広間で大の字になって寝ている地元のおじいちゃんや、世間話に花を咲かせるおばちゃんなど、まさに地元に愛されている憩いの場という感じ。清掃が行き届く清潔感あふれる館内、スタッフの皆さんも笑顔で迎えてくださり、とても温かい気持ちになりました。
よく温まる温泉に浸かり、大広間で帰りのバスの時間まで暫しのんびりさせてもらいました。
ふと、大広間の横に地元のかたが作られた手芸販売のミニコーナーに目がとまりました。
・・・これは、まさか?!
善逸の羽織柄のマスクではないですか?!
やはり『あがつま』だけにご存知の方もいらっしゃるのかもしれないと、一人ニヤニヤしてしまいました(笑)
館内には、道の駅はもちろんのこと、東吾妻町に関する様々な観光パンフレットが置いてあり、私も記念に沢山いただきました!
帰ったあとに読んで、次来る時の参考になりますね!
今の時代、ネットで調べられるものですが、絶対に見落とす穴場だったり地元のかたのオススメポイントは、やはり紙媒体が役立ちます。
バスの時間が近づいてきました。産直で買い物をした帰り、東吾妻町のマスコット『水仙ちゃん』に出会いました。どこかしら、善逸の髪の色と似ていて親近感が湧きました(笑)
道の駅を後にし、バスで吾妻線の群馬原町駅まで戻りました。ここ、群馬原町駅が東吾妻町の中心部となる原町界隈です。大型のスーパーやドラッグストアがコンパクトに集約されており、買い物には不自由しない感じでした。
夕暮れとなり、オレンジと濃い青に染まる東吾妻町の風景、山々の影と相まって雰囲気が最高潮に達していました。
今回は限られた時間で、東吾妻町を中心に初めて善逸と巡ってみました。
次、来る時には吾妻峡や吾妻渓谷の紅葉などを楽しみに、また時間や予算をつくって必ず訪れたいと思います!
旅の途中、お世話になった東吾妻町の皆さま、本当に温かい出会いをありがとうございました。感謝する次第でございます。
・・・住んでみたくなっちゃった。
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