「成功体験より失敗体験」の真意
スタートアップの人事時代、助けられた本と言葉
私は個人事業主になるまで、3社ほど一般企業に勤めていて、主にリクルーターとして従事してました。一番濃い経験を積んだのは、2社目の某スタートアップ。IPO前後の2年半を過ごさせてもらって、毎日めまぐるしいスピードで変化していく会社・業界を体感し、正解のない中日々模索し続けました。
入社当時、人事部なんてものはなく、知見も何もない私。業界の近しい会社やIPOしてから少し経っている会社の人事担当の方にお時間いただき、色々とアドバイスをもらっていた時期がありました。(その際にお世話になった皆様、この場を借りて改めて御礼申し上げます。貴重なお時間を割いていただき、貴重なお話をしていただき、本当に本当にありがとうございました!)
その中でご紹介いただいたこちらの本。
タイトルの通り、急成長中の企業が陥るトラップが具体的に書いてある本です。
手に取ったのはIPO10ヶ月前くらい。まさかここに書いてある通りのことが続々と起きるなんて(当時も起きていたことはあった)・・!と、筆者はうちの現状を知っているのか!と驚いた記憶があります。
また、それ以外にも某上場IT企業の元役員・Aさんからは、「これからどんどん組織が大きくなるからこういうことには気をつけた方がいい」とこんなアドバイスをいただきました。
・こんな人と働きたい、よりも、こんな人とは働きたくないという最低基準の明文化とコンセンサス取りが必須
・事業問題の次は女性問題が勃発しやすい
・優秀でロイヤリティの高い人は絶対に転職しない(=ロイヤリティの生成が大事)
なんの経験もなく予測も難しいと感じていた私に取って、この本とAさんの言葉は非常に心の支えになりました。
危険を予測できるから、対策を講じられる。だけではなく、対策が外れても心が折れにくいんですよね。「あ、この時がきたぞ」と。
2年半、失敗を重ねて学んだこと
そしてこうしたアドバイスをいただいたにも関わらず、いっぱい失敗を重ねまくった私が思うのは四つ。
一つは、例えば人事施策一つとっても、B社でフィットしたから自社に合うとは限らず、〇〇の場合は××すれば良い、なんてことは殆どないということ。いわゆる、成功パターンは一つではないということ。
二つ目は、なぜその施策を打つのか?この施策に置いて成功とは何か?を言語化・明確化する重要性。(俗にいう制度設計というのでしょうか)
三つ目は、資料を丁寧に書く時間より、とにかく実行してすぐ失敗(の匂い)を嗅ぎ取って修正することが経験値をグッとあげるし、結果成功経験をもたらしてくれるということ。打率ではない。
最後に、「失敗体験を語ってくれる人ほど貴重な存在はない」
ということです。
職業が変わっても、同じことが言えた
さて、現在私は個人事業主として主にナレーターとして活動しているわけですが、企業で学んだこれらは全く同じだな、と感じる日々です。
例えば、練習をする中で「あれ、なんか自分の意思が弱い・・聞き手に取って説得力がない・・・」と思ったとします(実際に先週の出来事ですが)。自分の経験の中だけで原因を追求しようとすると「意味を理解する前に声に出してしまったのだろうか?聞き手を感じていなかったのだろうか?」とぐるぐる考えるのですが、そこを意識してもあんまり変わらない。そこで師匠に聞くと
「口型がでかすぎるんだ」
と一言。
「へっっ!?」
とわたし。それもそのはず。そんなこと教えてもらったこともないですし、これまで指摘されたことも一度もありませんから。あまり納得がいかずどういうことかと聞くと、あるレベルまで行くと些細なことで雲泥の差が出てくる、その中の一つにあるのが口型の大きさなんだそう。
ふーん。これは自分では絶対に気がつかなかったな、と。ここで気がつけてよかった、師匠がいてくれてよかった、と。
また、こういうこともありました。少し自分のレベルが上がったと感じ調子に乗っていた私。スラスラ読んでいたら師匠に止められました。「絶対にそういうことをするな」と。「みんなあるレベルまでくると変に勘違いしてスラスラって行きたくなるんだ。そうじゃない。そんなことしてるとすぐにてっぺんがくるぞ」と。
といった具合に、ナレーション業においても先に紹介した本の「7つの罠」ならぬトラップがたくさんあるのですね。
そういうことを知っている状態で練習をするのと知らないままするのでは結果がまるで違います。
でもだからと言って、師匠のやり方が全部自分にフィットするとも限らないから面白いな、と思います。
一つ目の
〇〇の場合は××すれば良い、なんてことは殆どないということ。いわゆる、成功パターンは一つではないということ。
です。
例えば50音。不器用な私は、声が「ねれる」まで1年ちょっと時間がかかりました。師匠の説明では、やり方を習得できなかったのです。(師匠の説明が悪いということでは全くありません)
ようやく「このことか・・!」と理解できたのは毎日何時間も50音だけに向き合って数ヶ月が経ってからでした。
習得方法は割愛します(参考にならない方も多いと思いますし、何より説明が難しいので)が、私が某スタートアップで学んだこと「成功パターンは必ずしも一つではない」ということを体感した出来事でもありました。
自分のやり方は自分で見つけなければならない。
そして二つ目の
なぜその施策を打つのか?この施策に置いて成功とは何か?を言語化・明確化する重要性。(俗にいう制度設計というのでしょうか)
も、実感します。
例えば、「何のために今この練習をしているのか?」の問いに対して「具体的」に答えられない時って絶対に上達しません。
どんな些細な練習も、具体的に目的を持ち、その目的達成はどういうことなのか?を言葉にすることができます。できないときは、練習なんてしないでお散歩したり映画を観たり、運動した方がいいくらい。
(これは、最近始まった幼児教育・保育の無償化や、税率還元キャンペーンや、数年前のマイナンバーカードなどの政策にも言えますね。何のためにやるのか?ゴールは何なのか?が文書を読んでもいまいちわかりません・・・)
三つ目の
資料を丁寧に書く時間より、とにかく実行してすぐ失敗(の匂い)を嗅ぎ取って修正することが経験値をグッとあげるし、結果成功経験をもたらしてくれるということ。打率ではない。
に関しては、一つ思い出があります。
先に述べたように、不器用な私は50音の習得が遅く、迷走していた時期がありました。その過程で、大失敗をしてしまったのです。週に一度のレッスンで、やっと習得したわ〜!と思い込んでいたやり方で、朗読を始めた私。案の定師匠に止められピシャリ。「勘違いしている」と。
あの時は、まるで幼稚園生がお母さんに怒られた時のようにシクシク涙が出そうでした。「あんなに具体的に練習して身につけたのに、勘違い・・・?!」と。
でも最後に師匠から
「それだけ徹底的に練習したから具体的に間違いが見つかったんだ。1週間で発見できてむしろ良かったよ」
と言ってもらい、少し救われたのを覚えています。
早く失敗できて、良かった。
正解は自分で作っていくもの。でも失敗体験はパターンがある
今世の中には、婚活にしてもSNS運用にしても資産運用にしても企業施策にしても「〇〇すれば上手くいく」的なノウハウ本、マニュアル本が溢れているように感じます。確かにそれは一例として参考になることも大いにあると思います。
でも、あたかもそれが正解かのような書き方や、信じ込んでしまうのは抵抗があります。
正解は自分で作っていくもの。
そして失敗はパターンがあるから、師匠や先輩の失敗経験に素直に耳を傾けて損はない。
そう思うと、失敗体験を語ってくれる人ってとっても貴重ですよね。あんまり語りたくないことでもありますが。
私も、成功体験ではなく失敗体験を語れる大人になろうと思いますし、それは同時に、具体的に行動して失敗して起き上がって修正して成功する、ということが付いて回ることだとも思います。
そんな大人になって、子供達に勇気を与えられる大人になりたいな、と感じた今日この頃でした。それでは、また!