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【生きていくという事】音楽業25年の私が2020年の1年間で蓄積していった「不安→希望→落胆→迷走」のループ、そして「怒り→新たな出発」

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不 安
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もともと2020年は、
私にとって特別な年だった

一人暮らしをしている息子が大学4年に入り、
一年後の3月に控える国試に向けて
勉強に集中する年となる為、

入学当初の大学の説明会でも、
バイト時間数の制限、
4年に入ったら、金銭面も含めた勉強環境のサポートを宜しくお願いします、
と言われていた。

その為、私は、この年に向けて、仕事や収入等を何年もかけて整えて準備してきていた。

よし!いよいよ始まる、はずだった直前の3月

緊急事態宣言は発令された。

不要不急の外出は控える様に

生活必須項目でもない音楽は、
あっという間に皆さんの生活からは排除され、

3月の時点で、私は既に収入は10分の1以下になった。

息子の生活のサポートをするどころか、
自分が生きていくのも危い

家賃も払えない
食費もない
光熱費も払えない

せめて繋いでおかなければどうしようもない
携帯電話と、車を走る為のガソリン
代を確保するだけで精一杯
もちろん、自動車保険代だって払えない

この目先のものを支払う為にどうすれば良いのだろう
息子の生活はどう支えたら良いのだろう
先ず、支払いをストップか延ばしてもらえる方法はあるのかをしらべるのが先か、
給付金があるのか調べるのが先か、
融資をとっとと申し込むの方が良いのか、
新たな仕事先を見つけるのが先か、

何から考えて良いか冷静な判断が出来ない

それでも、9クラスある音楽教室、東京、茨城、合わせて100名以上いる生徒さんへの対応に追われる目まぐるしい日々

先生、どうしますか
お休みの宣言を早々にして下さい
みんな戸惑っているので早々の決断をお願いします
発表会はどうなりますか

等の大量の質問が、

グループレッスン教室の代表の方々との打ち合わせ以外にも、
個人個人の生徒さんからも連絡が一気に来始めた

シニアクラスの方々からは不安と恐怖への悩み相談も来始めた

子供たちも前代未聞の出来事に不安定な精神状態になっている、
というご両親からのご相談

そして、
これを機に教室を辞めていく生徒さんも沢山出始めてきた

自営業を長年やってきていると、
ここまで続けてこれたのだから、
当然今までもいろいろな事があった

予想外な出来事なんて、よくある話だ

だがしかし、

今までとはわけが違う

今までは何が起きても
仕事上で充分に臨機応変に対処出来た

今回は、

音楽を職業として
何とか頑張ろうとしても

嫌がられた

そりゃそうだよね、
音楽やってる場合じゃないよね、、

と、同感しつつも、

いやいや、

私も自分の生活や命を守るために
息子の生活や命を守るために

気持ちを冷静にして
何とかしないとならない

今私が出来る事は、何でもやろう!
と思った。

給付金、融資申請、その他、支払いの対応等も調べたり申請準備の書類を作成したり集めたりしながらも、

別の職業は無いか、も探しながらも、

既存の生徒さんへ向けてのオンラインレッスンへの準備や生徒さん方へのお誘い、

今出来る事での新規事業を初めてみる、

等を同時進行で始めた

しかし、
新しいレッスン形態や、
新しい提案は、
なかなか受け入れてもらえない

こんな時だからこそ、
日々の不安やモヤモヤ等が安らげる為に
音楽は何か出来るはず!

と、ステイホームでも楽しく音楽遊びが出来る様なYouTubeでのテレワーク演奏をやってみよう!
という企画を思いついた。

テレワーク演奏動画は、
プロの方、
ある程度弾ける方、
が多いが、

初心者でも
子供でもシニアの方でも
みんなでYouTube上で顔を合わせたら
凄く楽しいのではないか、と考えたら
ワクワクしてきた

その為には楽譜がいる
生徒さんには無料で差し上げるとしても
そうだ、これを販売しよう!
これを新事業の中の一つとして始めてみよう!

そして、
夜な夜な1ヶ月かけて作成した「楽譜販売」という新しい事業での商品

先ずは生徒さんにプレゼント

お一人お一人お手紙付きで郵送したり、
ダインロードURLを送りました

喜んで下さった生徒さんも沢山いらっしゃったのですが、

同じくらい酷評も多く、

こんな緊急事態にピアノなんて!
非常識だ!
先生、これやらないといけないんですか?

と、怒られた

こんな勝手にわけわからないものを送られても、
と、
苦情のお手紙と共に送り返して来た方もいた

私は、

この状況に、怒りが湧くわけでも無く、

止まらない涙を拭うわけでもなく、

しょんぼりと、
抜け殻の様になってしまった

遡る事2011年の東日本大震災の時は、

まだ水道も通っていなく、小学校まで毎日水を汲みに行ったり、
ガソリンが無いので自転車でどこまでも走ったり、
震度4以上の余震が毎日続いたり、
まだまだ生活が元に戻っていない状態でも、

意を決して早々に始めたピアノレッスンは、

生徒さんやご家族だけで無く、
近所の方々にも大変喜ばれた

心に日々蓄積されている恐怖や不安感を押し殺している我慢も、

ピアノの音色は、
スッと涙を流させてくれた
安らぎと希望をもたらさせてくれた

音楽、って本当に改めて
素晴らしいな、
この様な純度の高いものを扱える仕事につけて
私は幸せだな、
ありがとう、
これからも、みんなの為に、
大切な家族の為に、
そして、自分の為に、

大事にしていこう

と思ったのでした。


しかし、

今回は、

音楽は、

役に立たない、どころか、

提供しようとすると、
嫌がられる


とても傷ついてしまった
自分でも信じられない程落ち込んでしまった

しかし、
ピアノレッスンどころでは無い、
という意味も当然ながらよくわかる

命が絡むのだから当たり前

いやいや、今は落ち込んでいる場合ではない
気持ちを切り替えて
私は1分でも早く資金繰りを何とかしないと、
という事に集中せねば

緊急事態宣言が出てから1ヶ月後の4月

支払い絡みのやり取りに疲労困憊となる

いつ頃になりますか
お約束はいつ頃ですか

お約束?!
いつ頃?!

そんなの、、、

わからないんだよーーー!!!

この頃は、もう精神的にぐちゃぐちゃでした。

この頃は
こんなに長引くwithコロナ生活になるなんて
まだ知らない

もうじき終わるかも知れないし、
もう元の世界には戻らない様な漠然とした予感もあった

この漠然とした予感が
私の中で絶望感と焦りを生んだ

それは、
職を失う恐怖

私の仕事は人との対面が殆ど。
オンラインも全く無いわけでは無かったし
スカイプ時代から利用しているので
出来ないわけではない
しかし、今月、来月に急にオンラインにすり替わるものでもない
生徒さん全員に話をしても、
そんなに反応は良くないのだ

何れはオンラインは新スタイルのレッスンとして確率していくとは予感出来るけど、

それでも、全部がオンラインレッスンに変わるとは考えにくい

新事業を構築するか
別の職業を探すか

そして軌道に乗るまで融資を考えるか

とりあえず可能性のある事、
少しでも思いつく事は全部動こう!

融資や給付金

審査の為の書類集めや作成も結構時間を取られる
そんなに簡単に目処が立つわけではなかった

今回非常にネックだったのは、
私自身、難病を持っているので
コロナ禍において
昔のように
とりあえず何か別の仕事場に飛び込むのは
命の危険を感じてしまい
とても飛び込む勇気が持てなかったのでした

こんなに沢山動いても
まだ何の成果も出ないまま
あっという間に1ヶ月が立ち

また、お支払いの話し合いの時期がやってきた

いつ頃ですか?
いつならお約束出来ますか?

・・・

もう、わからなすぎて
身体中が爆発していまうのではないか
と思う程に動悸が起こり、
電話口でパニックになってしまった

私だって
払いたいけど
この1ヶ月だって
死ぬほど動いたけど

今月の収入はたったの4万円だったんだよー!!

この状態で、
一体、何を話せば良いのですか
一体、どんなお約束が出来ると言うのですか

この頃は
すっかり不眠症になってしまい
眠れない
眠ってもすぐ起きてしまう

常に息子の顔が浮かぶ

情けない

こんな情けない親で
本当にごめんなさい


夜中に、 

ウォーーーーッッッ!!!

という、

とても人間とは思えない程の唸り声を出しながら
うなされた事もあった

ホームレスも浮かび始めていた

今思えば
この1年の中で
精神的に一番辛かったのは
このコロナ初期ですね

数ヶ月が経ち、
コロナ禍は今後も長引く、
という感触を得たところで
融資は取りやめました

今だけやり過ごせば良い訳ではなく、
多分、元の世界には戻らない
少なくとも1、2年は。

そして、この様な出来事は、
今後の人生
また別の内容だったとしても
起きるかも知れない

そう思ったら
現時点で、
返済計画など立てられる自信もない中
多額の融資を受ける気にはなれなかったのでした

持続化給付金は助かりました

一気に支払いを済ませ、
生活の補てんであっという間に終わってしまった

本来なら、この間に、
新事業の準備等をすれば良いのが、

そこまで補える程の金額ではなく、

別途、中小企業診断士の方の相談会等にも足を運びながら事業者向けの給付金を探ったが、
私の事業が該当するものは一つも無いという事らしいので、

沢山の時間を費やして、
いろいろ調べたり書類作成したり集めたりしたが
空振りに終わった

振り出しに戻った

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希 望
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この時点で、時は7月

幸運な事に、
新事業の楽譜販売は好評で
スタートにしては
私の想像以上にお買い求めして下さってくれて、

YouTubeテレワーク演奏企画も
外部の私も知らない方が沢山参加して下さり、
もちろん、私の生徒さんやご家族の方も参加して下さった方々もいて

私の動画編集の能力ギリギリの人数40名と26名による2つのグループが出来、

地域や年代、プロアマ等の垣根を越えて、
返ってスケールの大きいYouTube上での一期一会アンサンブル演奏が出来た

自分の作り上げたコミュニティによって
傷付いたり無気力になったりもしましたが

また逆に、
自分の作り上げたコミュニティの中で
私を支えてくれ、励ましてくれたのも
生徒さんや生徒さんのご家族でした、

ステイホームで
不安だらけの日々ですが、
ピアノを弾くと落ち着くんです、
ピアノを習っていて本当に良かった、
ありがとうございます、

とおっしゃる方

先生のレッスン受けたいから、と、
オンラインレッスンに初挑戦してくれたシニアの方々

差し入れを下さった方、

そして、

先生、いま一番大変だろうから、
と、現金を下さった方

生徒さんのお父様で
私と同じく個人事業主の方々と情報交換したり、励まし合ったりしたのも
かなり心強かったです。

びっくりした出来事と言えば、

普段プライベートでの交流は全くない、
とあるシニア教室の女性の生徒さんからある日連絡があり、

「私は給付金10万円頂いても使わなくても良いので、
大変な先生に使っていただこう、と思い
これで電子ピアノを購入して下さい
もし余ったら、先生の好きに使って下さい」

とおっしゃります。

もう、、何と言ったら良いのか、、

自分が使わなくても、
ご家族やお孫さんや
大切な方々もいるというのに、

私に寄付して下さるなんて、、

そしてこの様なお言葉を頂きました。

「この事によってのしがらみは今後一切ありません。
私の気持ちなので、
先生にプレゼント出来れば
私はそれで満足です。
なので、どうか先生は受け取るだけにして下さい」

この方は、元から素敵な方だと思っていましたが、
本当に敬意を表する気持ちしか出てきません。

私も、こんな素晴らしく素敵な愛溢れる女性になりたい、と心底思いました

そして、何より、
子供たちの笑顔

オンラインでも、対面でも
生徒さんたちの笑顔に
私は沢山元気をもらいました

ずっと迷っていた発表会も
YouTube発表会としてやってみよう!
と、前向きな気持ちも出てきました。

各教室を私という撮影隊が、カメラと照明とお花台を持って2ヶ月かけて、渡り歩いた。

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それ以降、
私は新しいレッスン形態も
皆さんに受け入れられる様になり
新しい生徒さんも沢山入ってきて、
今のところ満員となりました。
楽譜販売も順調

対面レッスンの収入は不安定なので、
収入源の中心に置くのをやめました。

そのおかげで、
度重なる緊急事態宣言があって
レッスン会場に使用している場所がお休みに入ったり、生徒さんがお休みになったとしても、
少ない人数の方でも
来て下さる方がいるのならばレッスンをしよう!
という私の中の心の余裕が出てきました。

まだ、コロナ以前の頃の収入には戻ってはいないので、
まだまだ軌道に乗った、という状況には立っていないけれど、
新しいスタートは私は落ち着いて来た

・・・と思っていたのですが、、、

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怒 り
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先月、
2021年7月7日に、

茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で行われる
日本最大級のロックフェス
「ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)
が中止となるニュースが飛び込んできました。

代表の渋谷陽一氏の文書が発表され、
読んでいくうちに、
胸や喉が詰まって苦しくなってきました。

ご興味のある方は、
検索すればすぐ出てくるので読んでみてください

開催まであと1ヶ月、という直前に、
茨城県医師会および県下26の医師会等による中止要請を受けた、との事でした。

「今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期を検討すること」

医師会からのこの文章では、
何をもって感染拡大とするのか、
とても曖昧な表現の為、
ロッキン側としては、判断もできない為、
実質、中止の決断をする一択
しかなかった、という状況だったらしい

この事に対して、様々な声が上がっています。

私は、モヤモヤもやもやモヤモヤもやもや・・・

何に向かってモヤモヤしている、
という明確さが出てこないままニュースを見ていると、

ロックバンドのワンオクのTakaさんが

「しょうがないとか残念とかで許してくれる日本の音楽好きもミュージシャンも本当に優しい。ただな。もうそろそろみんな怒るよ」

とインスタのストーリーに投稿したそうだ

世間の反応はいろいろ

同感!と言う声もあれば
反発の声も多い

私は、
この「もうそろそろみんな怒るよ」に
酷く反応してしまった

それは、実際のフェス開催がどうのこうの、
という事ではなく、

イベント開催は、企画から開催当日まで
長い月日の準備期間、
関わる人員も相当数いる

今回のロッキン2021は
一年がかりの準備期間、
フェス開催会場の近隣の方々への承諾願い
アーティストだって40名予定
関連グッズも作成している

なのでこれまでに既に億を超える支出が発生している

開催1ヶ月前というものは、
本番目の前で準備の9割方終わっている状態

ここで中止という事が
どれだけ多額の損害が出るかは簡単に想像がつく

その辺り、
全く認識出来ていない様な医師会側の文章に
私のモヤモヤが止まらない

しかし、
このモヤモヤかきっかけで
私の中で激しく「怒り」みたいな感情が
止めど目なく出て来始めた

わかってるよ
今、ライブなんてダメで当然でしょ!
って。

わかっているから、
アーティストだって、
私みたいな音楽業の人々は

昨年、
絶望を感じながらも
収入源が全く無くなっても
それでも前を向いて踏ん張ってきた


そう、
ここで私は早々に気付いた

この「怒り」の感情は、
全部が今回に向けてのものでは無い、
という事

「そろそろみんな怒るよ」のTaka さんの言葉によって、もともと持っている「自分の怒りに着火した」ということだ

この1年間、
いやもしかしたらもっともっと長い年月において

仕方がない、
音楽は生活必需品でもないし、

音楽を仕事にしている人は
音楽の持つ楽しみを提供してなんぼ

という固定概念に囚われていて

マイナスな事を世間に言ってはいけない
そんな考えすら持ったら悪影響がある

なんて自然と思う様になっていて

その時その時に押し込めていった我慢が
どんどん蓄積していっていたと思う

音楽は目に見えないので
とても儚い

準備に半年や一年かけて作る
イベントやコンサート、発表会

当日は形として見えない音楽というものが
作り出され

終わった後の片付けの時
次の日

準備期間も含め、
あれは夢だったのではないか
と思う

頂いた花束やプレゼントやお手紙などを見て
初めて実感する

時間をかけて作っては消え

まるで砂浜に作るお城の様だな

といつも思っていた

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「希望→落胆→迷走→不安」のループ、そして「怒り」
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昨年の一年は
お城を作れる砂浜が無くて

やっと見つけては
慣れない新しい砂で時間がかかりながらも壊れない様に慎重にお城を作るが
あっという間に壊された

虚しさを抱えながらも
希望を持ち、また、新しい砂浜を見つけお城を作る
しかしまたあっという間に壊された

壊したのは
自然の波かも知れないし
誰かの意図的なものかもしれない

そんな私の中の奥の奥に長年蓄積してきていた「モヤモヤ」が
昨年一年間で少しづつ浮き彫りになり、
今回のTakaさんのメッセージを目にしたことによって「怒り」という感情として完全に姿を現したのだと気付いた

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新たな出発
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そうしたら不思議です。
気付いただけですが、
スーッと落ち着き、
霧が晴れる様に視界が広がった。

こういうのを何というのでしょう。
浄化された感覚というべきか

相変わらず、
日常の問題は山積みだし、
何なら、親の介護問題も加わってきていたりして、
どうなることやら、
なのですが、

何となく、
以前の活力が戻ってきました

さて、この先どうなることやら♪
どんな展開が待っているやら♪

と、以前の様な、人生を楽しむ力が戻ってきました。

今開催されているオリンピックを観ていて、

何で私はスポーツが好きなのか、
という事も思い出したのも一つですね。

スポーツは、自分の限界を超えていく、という挑戦をしてる。

昭和、平成の時代でいうスポコン魂って、
自分を痛めつけながら、根性!根性!で我慢の先にある未来を見て限界を超えていっていた人達も多かったかも知れない

でも、令和の今の時代は、
その限界の超え方はちょっと古いかも知れない。
どんどんtrial and errorを繰り返し、
執着せず、
今この瞬間を精一杯楽しみながら生き抜き、
そして、自分の限界を超えていきたい!


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