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壮大な思想と着目点に心動かされたアート
先日、麻布台ヒルズギャラリーの開館記念「オラファー・エリアソン展」を訪れました。
麻布台ヒルズ自体は、まだオープンしていないお店も多く、レジデンスなどは工事中で、見るところは限られていましたが、道路や街全体が真新しい様子は、郊外にある新興住宅のような印象を受けました。
「オラファー・エリアソン展」は、麻布台ヒルズの中でも端の方にあって、神保町から行ったほうがアクセスはしやすいのですが、全く逆の方から入ったおかげで、様々なエリアをくまなく見て回ることができました。
オラファー・エリアソン展は、2020年に東京現代美術館で開催されたものが印象に強く残っていて、またそれらに触れることができるのかと思うとワクワクして出かけました。
今回の作品は、東京現代美術館の時よりも作品数は限定され、規模も小さいものではあったのですが、感動したことがいくつかありました。
このような心動かされる体験はあまり日常になく、とても貴重なものだったと実感しています。その中からいくつかご紹介します。
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《終わりなき研究》
同じものは2つとない振り子によるスパイラルな線状のデザイン。その振り子の振りの大きさによって、一つとして同じものはありません。また、それぞれに重りがあり、その重さによっても違ってきます。世の中には同じ時というのは存在しないように、「今」この瞬間を表しているところに、この世界が具現化されていると感じた作品でした。
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《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》
小さな多角形が組み合わされたメタルが一筆書きのようにつながっているオブジェです。こちらは、タワープラザの吹き抜け部分に展示してあります。
展示会場のビデオでオラファー・エリアソンがインタビューを受けながら解説をしていました。壮大な思想と着目点に心動かされた内容でした。記憶を辿って書いてみます。
ものを焼却すると、有害物質が大気中に放出されます。その中に、亜鉛があります。本来、亜鉛は、大気中にあるものではなく、地中にあるものであるのに、このような焼却という現象によって、大気中に浮遊し、私たちの体内に入ります。その亜鉛を使用し、彫刻やアートに閉じこめることによって、体内に入ることを防ぐことができる。
オラファー・エリアソンは、私たちを取り巻く世界との関わり方に疑問を投げかけ、再考をうながす作品で知られ、近年は気候変動などの社会的課題への積極的な取り組みでも世界的に注目されているアーティストです。
人間と自然環境との間に生じるもつれに焦点を当て、未来を形作る上で私たちが共有する責任について問いかけています。
すべてのものごとは、たとえ安定しているように見えるものでさえ、
大きなスケールで見れば動きのなかにある。
私たちの惑星、太陽、そして太陽系は、天の川を駆け巡り、
中央のブラックホールを取り囲むように動いている。
同時に、よくよく目を凝らせば、この世界は種々の構成要素から成り立っており、
それらはまだ見ぬ「現実」の足場でもある。
今のところ、私たちは夢のレベルでしかこれにアクセスできない。
アートとは、想像力を駆使して、不可能を可能にし、
見えないものを見えるようにすることなのだ。
―
オラファー・エリアソン
他にも興味深い作品がありました。お時間のある方は訪れてみてください。
麻布台ヒルズギャラリー開館記念オラファー・エリアソン展
相互に繋がりあう瞬間が協和する周期
Olafur Eliasson: A harmonious cycle of interconnected nows
2023.11.24FRI–2024.3.31SUN
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/olafureliasson-ex/
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