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【感想】イヴァナ・チャバックのテクニックに触れて

さて、先週末の2日間、イヴァナ・チャバックのマスタークラスに参加してきました…!

壇上でイヴァナから直接指導を受ける「プレイヤー」ではなく、観客席に座る「オーディター」としての参加だったので、もちろん「イヴァナのテクニックを体験して」とは言えません。
でも、オーディターとしてエクサを試したり、一応12時間くらいはイヴァナの指導を見ていたりしたので、「イヴァナのテクニックに触れた」《個人的な》所感を書きたいと思います。

そもそも、事前にイヴァナの本『The Power of the Actor』を読んだ時に、私が抱いた大きな疑問は2つ:


1.ストラスバーグの「Emotional Memory(感情の記憶)」とどう違うのか。

イヴァナは本の中で「自分のトラウマや痛い記憶を駆使して、勝つ」と明記しています。
さて、ストラスバーグが自己体験を使うよう提唱して賛否両論生んだのは、演技の世界ではよく聞く話。私自身、一時期このメソッドを使って、気づいたら演技をすることが億劫になっていた経験があり、以降あまりこの領域には踏み込まないようにしています。
だからこそ、文中では似ていそうなイヴァナのテクニックがどう違うのかが、とても気になったところ。

結論、自己体験を使うこと自体は変わらないけど、それを以ってシーン中の目的(Objective)を達成する=【勝つ】ことで、爽快感を得られる。だから、危険ではないということだそうです。

実際、この手法で「演技って爽快!演技楽しい!」と思えている人もいるようなので、一つの選択肢としては有効みたい。

イヴァナは本の中でも「『Unresolved(未解決の)』経験を使うべき」、「自己の経験を代わりとして使うことで、カタルシスを感じる」と言っているので、一種のセラピー効果みたいな感じかな?と勝手に想像。シーンを演じきっても自分のメンタルヘルスには影響しない、またはむしろ向上しているケースもあるんだろうと感じました。

自分で試さないととやかく言う権利はないので、とりあえず試してみようと思いました🌟

(ただ、「絶対に自分の経験と過去の感情を使わないといけない」と思っている方がいたら…!他にも想像力に振り切る方法、実際の経験じゃなくて空想の経験を用いる方法(What If)、完全に相手や空間など自分の外にあるものに集中する方法…「効果的な」方法は他にもあることは伝えておきたい…!)

2.12ステップをどうリハに取り入れていくのか。

本を読んだだけだと、どうしても12ステップという長い旅路に圧倒されて、「台本をもらった…!どうやって進めていこう…!」となりそうだったので、実際にどうやってシーンワークが進んでいくのかが気になっていました。

面白かったのは、イヴァナ流のシーンの始め方:
1.Chemistry Exerciseから始める(14章)
2.Substitution(4章)と似たところをシーンパートナーに見つける
3.Scene Objective(2章)から始まるEmotional Diaryを声に出して互いにぶつけ合う
4.Moment Before(7章)に各自で向き合う
5.「Ready」と言い合ってシーン開始

この一連の流れを、誰の指示も受けずにシーンパートナーと2人の間だけで進めて行っていました。これは本になかった(?)気がするので面白かった。もしかしたら今後発売されるらしい改訂版に載っているのかも…!

また、Emotional Diary(感情日記)も、本で読んだだけでは「よし、やろう」となりにくい。
その場で強制的に(笑)「止まるなー!」と言われながらひたすら書き続けて、やっとその価値が分かった気がします。

思ったよりペンが止まりそうになったので思ったより頑張ってペンを動かして書いた。思ったより字が字になっていないほど汚かった。でも、それくらいで初めて「潜在意識」にアクセスできた気がするので、やはり実践の場は重要ですね(笑)

(3.その他諸々思ったこと)

  • 行動科学の深い理解:イヴァナがOverall ObjectiveやScene Objectiveを紐解く様子を聞いていると、セラピストの話を聞いているかのように、「なぜ人間はこう言うのか、こう行動するのか」が見えてくる。これは何度もそうか!とうなずいたし、行動科学をもっと勉強しようと思いました(笑)

  • 特定の身体状態を引き出す独自の手法:死に直面している時、酔っている時、ハイになっている時など…今回は「死にしている時」のエクサのみやりました。そういう特定の「身体的反応」が伴う状況を演じることもある中で、ちょっとした小技として使える引き出しが増えてよかった🌟

  • Substitutionオンパレード:代替するのは相手だけじゃなく、経験も全て。シーンに入る前だけじゃなく、シーン中もずっと。「全てをとことん置き換える」方式。個人的には、全部自分関連のことに置き換えると、逆に頭で考えすぎてしまうので(ex. このセリフは「父」と言っているけど私は「母」のことを考えている…!みたいな)、ちょっと苦手かも。


イヴァナの12ステップ自体、演技の基礎として幅広く使われているコンセプトも多いので、似たようなことがスタニスラフスキー、アドラー、ハーゲン等々でも見受けられます。
だからこそ、本を読んだだけだと、そこまで「真新しさ」が感じられなかったのですが…

それらのツールをどのようにリハに組み込んでいくか、コーチとしてイヴァナがどう役者から引き出していくか、そこらへんがやはり「○○流」を作り出すところ。
それはやはり実際に見てみないと分からないし、(今回はしていないけど)実際に指導を受けてみないと分からない。

だからこそ、マスタークラスに参加できたことはとても良かったと思っています!

▶イヴァナ・チャバックに興味がある方は:彼女のLAスタジオ
▶日本で認定講師からレッスンを受けたい方は:イヴァナチャバック・ワークショップ・ジャパン
(今回のマスタークラスも毎年やっているそう)

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