見出し画像

オーディションに明け暮れてー2021年の振り返り

今年は、何と言っても「オーディション」の一言に尽きる一年だった。
パリに来て初めてのオーディションは、2月初旬のロミジュリ。
それを皮切りに、一年を通して、数えきれないほどの応募メールを送り、何十個かのオーディションはした気がする。

「役者は世界で最もNOと言われることが多い職業だ」と言われる。
確かにメールを見返してると、全く返信のなかったものや受からなかったものも多かったけど、世間で聞いていたよりNOと言われる日々は苦痛じゃなかった。
むしろ、オーディションに明け暮れて、毎日のように結果メールを待って、一喜一憂する一年はすごく楽しかった。ドSなのかな?w

今年は、芸能の神様とご先祖様が見守っててくれたのか、ご縁のあったオーディションも多かったからかもしれない。
ロミジュリのジュリエット役、ブレヒト演劇「バール」のヨハナ役(来年公演)、学生・アマチュア短編映画が複数(来年公開)、映画エキストラ(来年公開)、そして実はディズニーランドパリのパフォーマーも最近受かったり。
紹介だったり、自主プロジェクトだったりで、オーディションなしで出演した演劇・映画も。

オーディションを重ねた中での一番の学びは、役者としてのタイムマネジメントが、会社員としてのタイムマネジメントと少し違うところ。

会社員だった時は、プロジェクトに応じて「期限」があって、期限までにTO-DOを余裕持って計画していけばよかった。

役者になると、「オーディションまでまだ一週間あるし~」と余裕構えてたら、急に他のオーディションやリハが入ったりして、一瞬で全く時間がなくなったこともあった。
「期限」までに間に合わせる、ではなく、オーディションが決まったら速攻準備して、むしろ余裕すぎるくらいスケジュールに余裕を持たないといけない。
まだ全然できてないけど…。

「役者は、ずっと仕事がない時期が続き、ある日急に仕事が降ってくる」とよく言うけど、それを身をもって実感した。

さて、今年思い出に残ったオーディションエピソードをいくつか。
(ロミジュリは既にたくさん書いたので割愛w)


一番楽しかったオーディション:ディズニーランドパリ

一度やって見たかった憧れのオーディション(笑)
朝8時、ズラーっと何百人並ぶ列に友達と参戦。
演技(午前)とダンス(午後)の二部制で、9時から16時過ぎまでフル1日。

朝8時の長蛇の列

詳しいことは書いちゃいけないらしいので、簡単に。
午前はとにかく進みが早くて、数人ずつのグループを次から次に見て行っては、その場で合格者の番号だけ呼ばれる。
「このグループからは…2人。198番と201番。」
「このグループは、残念ながら全員失格です」みたいな雰囲気が続く。
そんな中、友達と一緒だった私のグループは…
「君たちなら永遠と見ていられるよ。全員合格。」
うわーっ!とか声上げてめちゃ青春してた(笑)

午後のダンスも、振り付け教えてもらうスピードが速すぎて真っ青。
新しく友達になったダンサーの子にすがりながら「もう一回ここの振り付け見せてー(泣」って必至に覚える。
グループごとに正式に見られるのは【一回】のみ。
結構自信あったのに、やっぱり本番で頭真っ白になって、半分くらい間違えて真っ青
でも、最後に自分の番号を呼んでもらえた時には、泣くかと思った(笑)

400人くらいから始まって、最後は20人くらいだったかなあ。
何より、当日できた友達と、丸一日オーディションで助け合って励まし合ったのが良い思い出。

オーディションを共にした仲間

最悪だったオーディション:無能すぎる監督の学生映画

ある学生映画のオーディションに行ったら、帰りに「うちのもオーディション来なよ!」と急に他の学生監督に拾われて、急遽オーディションすることに。そして、その場で役をもらう。が、撮影前日に役を降板してくれと頼まれる。

後日聞くと何やら、チーム内でもめている中、その人が勝手にキャスティングを決めてたらしい。その後、またその人にプロジェクト呼ばれたりしたけど、やっぱり完遂せず。本当に良いことない人だった。

フランスには学生・アマチュア映画に出演する機会はたーくさんあるけど、ぜひ一緒に働きたい人もいれば、時間の無駄でしかない人も多い。
最初は私も是が非でも!って感じだったけど、今は冷静にこちら側からも選別するように。

ハッとしたオーディション:仏映画のエキストラ

お金持ちのカクテルパーティーにお呼ばれされた日本人ゲスト役でオーディションへ。
あるゲストが、超失礼なことをしてきて、それに反応するっていうオーディションだったんだけど、キャスティングディレクターからの「もっと大声で怒って」という指示がどうしてもうまくハマらず。

幸い、どちらにせよオーディションには受かり、撮影日へ。
他の日本人ゲスト役の人達と話していると、「私もあの時の指示は納得できなかったな。キャスティングディレクターに『ハイクラスの日本人はそんなすぐに大声で怒鳴りません』って伝えたら、『あら、そうなのね』って理解してくれたよ」と。

それまで【キャスティングディレクター>役者】のマインドセットでいた私はハッとした。
役者が提供できるものは、演技だけでなく、必要に応じて率直なフィードバックだと。

実際フランスには、日本人役なり、日本を舞台とした演劇・映画の機会が思うよりたくさんあるけど、日本の文化や言語のコンテクストを理解せずに作っちゃってる人も少なくない。
フランスにいる日本人役者として、しっかり自分の文化や言語を正確に伝えていくのも、重要なアセットなんだな。

一番忘れられないオーディション:ガチな仏演劇

年末最後のオーディションは、ひょんなことから応募したフランス演劇の100%フランス語でのオーディション。

いつかはフランス語で演技してみたいなと思っていたので、初トライと自分に言い聞かせて、飛び込んでみた。
これがこれが、全くの新しい経験だった。

私のフランス語は一応B2レベル。
ただ、スピーキングになると、まだA2くらい(下の上的なw)
正直、監督の指示も理解できるか不明だったけど、意外と一次オーディションは楽しく進んで、なんと二次オーディションに行けることに。

と言っても、ちゃんと言語も演技も納得させられてたら、一次で決まるはずだったらしい。
監督も「もう少しひろみがフランス語のセリフにどこまで慣れられるか見たい」と。

二次オーディションはなんと、人生初めて、【2時間】の模擬リハーサル
しかも、グループオーディションではなく、私だけ。
普通、監督がオーディションで1人に2時間も費やすことはあり得ない。
それだけ監督は、私の言語の壁を見越して私も試そうとしてくれたし、私も期待に応えたかった。

でも、1年ちょっと前に始めた言語では、努力でもカバーできない範囲がある。
事前準備の台本理解、セリフ覚え、役作りは、通常の2倍かかったけど、とりあえずやりのけた。
でも、当日、パートナーのセリフを聞きながら、監督の指示も念頭に置いて、エネルギー高めで、演技してると、やっぱり言語の壁が立ちはだかる。

・セリフが飛んでも、英語ほど自然にアドリブできない
・イントネーションを直されても、5分後には間違った言い方に戻ってる
・一番演技を楽しんでいる時ほど、細かい冠詞が抜けたり、難関「r」続きの言葉で口ごもる(préfèreraitとか鬼すぎ)

あんなにエネルギーも頭も使ったオーディションはなかった…。
オーディションで怯むことはない私だけど、さすがに今回は、自分に役が務まる感じがしなかった

結果、監督からすごく長い丁寧なメールが来て、やはり役は他の人に渡すことにしたとのこと。
どうしてもフランス語で発音するのが難しい単語があり、時々リズムが崩れること、観客のことを考えると、どうしても演劇の足かせになってしまうことが理由だった。

でも、演技なり人なりは本当に気に入ってくれてた模様。
「君ならフランスで役者のキャリアを築けるから、今後もフランス語頑張ってね。今後一緒に働きたいと思う」って言ってくれたのが、涙が出そうなほど嬉しかった。


来年の目標は明白。
引き続きフランスで日英仏の役者実績を増やすことと、
フランス語を継続的に強化して、今度こそフランス語演技にも挑戦できるようになること。

2022年も、怖いもの知らず、全力疾走で行きまーす!


いいなと思ったら応援しよう!