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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか56】退院まで(6)Day2②

 薬剤師のお姉さんが教えてくれた薬局は、歩いて10分ぐらいのところにあった。入り口の人に「ぼんじゅーる」と挨拶して店内に。ここも先ほどの薬局と同じ造りで、入り口には普通のレジ、一番奥に薬剤師さんのいるレジがあったのだが、中が曲がりくねっていて、最初はそれと分からなかった。
 取り敢えず手近なスタッフに聞くかと思って、品物を並べていたお姉さんを捕まえて、「あー、これはもうないわ」というのを英語で聞き出す。まぢですか。ここでも売り切れですか。
 でも、このお姉さんのあっさりした答えっぷりが、なんか引っかかるな。やっぱり薬剤師さんを探して聞いてみよう。

 店の奥まで行ったら、薬剤師さんが5,6人いるレジ、ありました。お客さんが大勢並んでいる。平均年齢高め。処方箋を手にしている人もいる。フォーク並びで、順番に空いたレジに呼ばれる。私の順番が来た。一番左、髪の毛を後ろでちょんまげにしている、眼鏡のお兄さんだ。
 最初からもう一度、「ぼんじゅーる、むしゅー。これを探しているんですけど」「ちょっと待ってねー」。コンピューターの画面でチェックしてからバックヤードへ。で、やっぱり手ぶらで戻ってきて「ごめんなさい、売り切れてて」。

 が、そこから何か別のことを話すお兄さん。「申し訳ないんですけど、英語でお願いできますか」「あー、英語は得意じゃないけど、頑張るね。あのね、今、この薬売り切れてるんだけど、注文してくれたら明日には入荷できるよ」「え、それじゃお願いします」やったー。
 「おっけー、お名前を教えて」「いざわです」「えーっと、い、ざ、わ」(お兄さん、ごめん、フランス語のアルファベを言われても、私の頭はついていけないけど、まあいいか)「名字は?」(うーん、今のが名字だったんだけど、まあいいか)「ひろみです、えっとエイチ、じゃなくてアッシュ…」「大丈夫!僕は日本のアニメとか漫画とか読んでるから、ヒロミ、分かるよ!」(平凡な名前で良かった。でも、この人が知ってるヒロミって誰だろ。私の知ってるヒロミといったらエースをねらう人だが、世代的に違うだろう)。
 「お金は今日払う?それとも明日?」「あ、今日払います」「じゃあ、これがレシート、こっちが注文の控えね。明日の10時には届くからね!」「明日は直接、ここへ来ればいい?」「うん、あそこに妊婦さんとか障害のある人の優先レジがあるでしょ、あそこに来てくれればいいよ」「おっけー、本当にめるしーぼくー」。

 私は、「ISAWA HIROMI」と書かれた控えを手に、店の外に出た。うん、確かにヒロミは大丈夫だ。お兄さんが明るくて親切だったおかげで、ミッションはコンプリートできなかったけど、気持ちがずいぶん軽くなった。
 ユニクロに回ってみたが、やはり授乳ブラはなかった。残念。8月末に日本から来る夫に買ってきてもらおう。繁華街からトラムに乗って、病院に向かう。病院にしばらくいて、べべさんをかまってから帰宅する。雨が降っている中をバスで帰る。今日は完璧なバス移動。やはり何事も経験である。

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