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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか51】退院まで(1)Day0

 朝8時半、生まれたという連絡が入った。母子ともに元気であるという。とにかくホッとした。この後、娘たちが分娩室から入院の部屋に移り、私が面会できるのは何時ぐらいになるんだろう。病院のルールでは、婿は24時間出入り自由、それ以外の家族の面会時間は15時から19時ということになっているけれど、生まれた当日ぐらい、大目に見てくれないかな。昨日だって、本当は一人しか付き添えない陣痛室に入れちゃったし。

 とにかく病院まで行って、ロビーとかで待ってればいい。自分の朝ご飯もそこそこに、ご飯を炊いて、娘がリクエストしたおにぎりとカフェインレスのお茶を持って、病院に向かう。
 最初は10時ぐらいに行くつもりだったけど、まだ時間が掛かりそうだということで、11時頃に到着。日曜日の病院、一階ロビーは薄暗くてスタッフも誰もいない。ちょうどその頃、ご一行様は分娩室から病室に移動し、婿がロビーまで迎えにきてくれて、予想通り、面会時間ではなくても病室まで行くことができた。このあたりのゆるさが素敵。

 まあまあ、なんて小さいんでしょう。よく頑張って出てきたね。偉かったね。世界は安全で、安心してよくて、あなたはこの世界で、お母さんとお父さんと、他にもいっぱいの人に愛されて生きていくんだよ。で、写真撮っていい?

 疲れているだろう婿が一度帰宅する。今日は選挙の決戦投票にも行かなくちゃいけないしね。シャワー浴びて、一度ベッドで横になるといいよ。本当にお疲れ様、そしておめでとう、新米パパさん。

 婿と交代する夕方まで、べべさんと娘のケアにあたる。娘は昼食に私が持ってきたおにぎりを食べ、私が病院食を食べた。うーん、戦いのような量のマッシュポテトだ。これは全部食べきれない。フランス人産婦さんは完食するのかな。

 娘と二人、べべさんを見ながらのんびりする。娘が、ベビーベッドに寝ているべべさんを見ながら、「自分の子どもって、こんなに可愛いものなんだね」と宣う。
 あんた、そんなことも知らなかったの。私は、それが伝わるように接してこなかったということだろうか。今から挽回できるかな。娘が大学進学で家を出て以来、こんなに長い時間を一緒に過ごしたことはない。初孫も然りながら、娘と過ごすという点でも、貴重な時間だ。

 夜、寝過ごした!と言って慌てて病院に戻ってきた婿と交代して、一足先に帰る。一人の夕食は、にんじんと卵のオムレツで簡単に済ます。婿は遅い時間まで病室で過ごし、帰り道でハンバーガーを買ってきた。昨日の私パターンじゃん。毎日、こんな食生活ではいけない。明日からはちょっと考えよう。

2.Day1 月曜日 
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(1)病院にて

 初めてべべさんと二人の夜を過ごした娘は、夜中におむつ替えやら授乳やらで大変だったようだ。初日から母子同室なのね。だからみんな個室なのかな。部屋にはシャワーも壁掛けテレビも付いているけど、冷蔵庫は共用の「家族室」にある。

 今日は、婿が朝、病院に行く。その後、出生届を出したり、買い物をしたりしなければならないので、私が交代する予定。午前中にスーパーに行き、プルーンを買う。娘の鉄分と食物繊維補給にいいはず。婿と私の夕飯のために、緑黄色野菜とタンパク質が必要だ。ブロッコリーを買う。
 娘はいつも骨付きの鶏もも肉を買い、小分けして冷凍して使っている。鶏むねよりも、そっちの方が安い。たまには他の肉か魚を、と思って物色するが、お値段が…。1キログラムあたり10ユーロを超えると抵抗感があって手が出せない。私の日常のベースラインは100グラム68円の鶏むねだからな。うーむ、今日は常備しているツナ缶を使って、ブロッコリーの茎とにんじん、じゃがいもと玉ねぎでグラタンにしよう。本当に、こういうところが我ながら呆れるくらい、金遣いが渋ちん。

 スーパーから帰り、プルーンを保冷剤と一緒にタッパーに入れ、いざ出発。病院の手前にあるパン屋さんで、生ハムとチーズのサンドイッチ(バゲットに挟んであるもの)を買う。妊娠中、生ものを控えていた娘が、出産したら食べたいと言っていたから。自分の昼食用にサラミのサンドイッチ、それから甘いアーモンドペーストのパンも一つ。しめて12.30ユーロ。これなら、1キロ10ユーロ弱の鶏むね買ってもばちは当たらんなあ。明日こそは、清水の舞台から飛び降りるつもりで、えいやっと鶏むね買おう。お金の価値観が為替レートの影響もあってバグっている。

 婿と交代して、午後はずっと病室で過ごす。べべさんの泣き声はまだか細く、おとなしい。少し目が開いている。両親どちらに似てもそうなるはずの、きれいな二重だ。髪の毛はふさふさ。ふさふさすぎて、出産の最中に頭から採血ができなかったらしい。両親どちらも天然パーマだから、この子もきっとくりんくりんの髪の毛になるだろう。
 鼻は私に似ちゃった、と娘が言っていた。婿は細くて高い鼻で、娘は私と同じ、おぺちゃ。でも、赤ちゃんてみんなおぺちゃでは? 口元は婿に似ている気がする。髪と目の色は、真っ黒ではなくて鳶色。これは婿の色かな。婿よりは色が濃いかな。娘が写真を送った人によっては、「婿さんに似てるねー!」と言う人もいるらしい。まだまだこれから、印象が変わっていくことだろう。

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