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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか179】12月(22)ケルン・アーヘン⑪
27日朝、三泊したケルンの宿をチェックアウトする。大きい荷物だけ預かってもらった。もう一度、ケルン市内を歩こうと思って。
まずは、最後に大聖堂へ行く。毎日一度は来ているが、25日、26日は、椅子席のあるところにはミサに参列する人しか入れなかった。祭壇近くまでゆっくり拝観する。高い高い天井を見上げていると、自分が浄化されるような気がする。まあ、そんなのは錯覚で、所詮俗物なんですけどね。それでも、良いものを見せていただきました、ありがとう、という気持ちにはなる。
10時前に大聖堂を出る。今日はどうしても行きたい場所がある。昨日行ったナチス博物館の近くにあるおもちゃ屋さんが昨日まではお休みだったが、今日から営業しているはずだ。
ドイツっぽい木のおもちゃがあればべべさんに買ってきて!という娘のリクエストを受けて、Googleマップさんで事前に調べたのだが、クリスマスの時期は休みのところが多く、そもそも市内中心部、歩ける範囲には少ない。郊外型の大型店がドイツでも幅をきかせているみたいだ。一昨日の街歩きのときに、Googleマップさんが教えてくれた店を三軒見て回ったが、繁華街の2つの店は洋服店とゲーム専門店に商売替えしていた。
残る一軒が、お目当ての店だ。昨日、閉まっているお店を外から覗いたところ、広くてきれいで、良さげな感じ。これもGoogle先生に教えてもらったドイツのおもちゃメーカーの製品がウィンドウに飾られていた。ただ、口コミでは評判が両極端だ。品揃えについては高評価だが、店員さんが高飛車で感じが悪いという声が多数ある。うわあ。怖いよお。でも、ここはべべさんのために、おばあちゃんは頑張る。
10時直前にお店の前に到着した。ビルの入り口前に、既に何人かの人が待っている。同じ入り口からカフェや自然食品のお店にも入れる作りになっている。ちょっとこだわりのあるお店が集まっているようだ。
私が着いてすぐにオープンした。入ってすぐの、パンとお総菜を扱うお店に行列が出来る。おもちゃ屋さんに向かうのは私だけみたい。
お店に入って、二人の店員さん、40代か50代の女性に、「ぐーてんもるげん」と挨拶する。「もるげん」と返事が返ってきた。笑ってないけど。この人たちが「例のあの人」か。
えーっと、赤ちゃん用のおもちゃはどこかな、ああ、見るものが全部かわいい、楽しい。電車もおままごとも積み木も楽器も、じっくり見たい。いかんいかん、今日はアーヘンに1時ぐらいには着きたいのだ。
奥の方、外に面する窓に近い方に、赤ちゃん用のおもちゃがあった。事前に予習した幾つかのメーカーの製品が並んでいる。その中でも、これがいいんじゃないかと思っていた、S社の歯固め、木の筒をゴムでつないで自在に動くボール型のもの、それがあったらベストなんだけど…あった!これだ! 良かった良かった、欲しかったものが見つかった。思っていたよりも小さい。べべさんの小さなお手々でも楽に持てるだろう。喜んでくれるかな。
もう一つ、定番の、木のアーチが入れ子状になっているものも買うことにした。優しい色合いのものを見つけて、一目惚れしたのだった。他にもいろいろ、見れば見るだけ欲しくなってしまう。べべさんの月齢を考えたら、今から何年後に使うことになるんだというものばかりだ。スーツケースに収まる量にも、それより何よりお財布にも限度がある。どれもなかなかのお値段がするんですもの。
いつまでもおもちゃを見ていたい気持ちを断ち切って、レジに進む。お姉さんに「びって」と差し出す。値段を言われたけど、勿論分からない。カードを出して、ぴっする。このあたりはフランスで買い物するときと同じだな。言葉が分からなくても、カードは使える。おもちゃは紙袋に入れてくれた。「めるしー、じゃなくて、だんけしぇーん」。あ、お姉さんが笑った気がする。
繁華街を通って、自分と娘にピアス、婿にはドイツメーカーのチョコレートを買う。一度宿に戻って、スーツケースに買い物を収め、駅に向かう。
さあ、ケルンにお別れだ。ずっと来たかった。きっともう、死ぬまでに二度とは来られない。いつも意識してないけど、あれが最後だったんだなってことが、毎日あるんだろう。何も後回しにできないような気になるけど、同時に、慌てても仕方ない気もする。