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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか72】生後まもなく(14)義母様①

 べべさんが生まれて3週間、7月下旬に、婿の母上、妹二人、祖母様(母上の母上)ご一行がいらっしゃった。ちょうどバカンスシーズンなので、ボルドー近郊のAirbnbで3泊なさるとのこと。婿の父上は数年前に他界しておられる。祖父様は猫の世話があるので自宅を離れられない。女性4人で、車で遠路はるばる、べべさんの顔を見に来てくださる。

 正直、私は緊張していた。とても緊張していた。これが婿の家族に会う初めての機会である。そして、ひょっとしたら最後の機会になるかもしれない。悪い印象を残さないようにしたい。できれば、娘をよろしくお願いしますという気持ちが伝わるように、おもてなししたい。

 婿はピザでも買ってくればいいよ、と言うが、何かしら箸休めになるものぐらいは作ろう。…と言ったら、「おばあちゃんは箸は使えないと思う」と婿。うん、箸休めって、箸で食べるのはマストじゃないから。婿の日本語は達者だが、やはり限度はある。
 「おばあちゃんは、ピザはあんまり食べないかもしれない。健康に気を遣う人だから、果物が好きなんだ」とのことなので、それなら果物を幾種類か用意しておこう、と買いに行った。

 しかし、私の思惑通りにはことは運ばなかった。何しろ、手強いレベルで自由なのである、フランス人。

 金曜日、早朝自宅を発ったご一行様は、車で午後、ボルドーに到着した。「移動で疲れてるから、まずはエアビーに行って休憩、その後、夕方遅くにうちに来る」と聞いていた。が、そこから、「やっぱりビーチに行く」、「ビーチが混んでるから、このままそっちへ行く」「あと10分で着く」と話が二転三転した。

 婿は几帳面で、時間に遅れることは嫌い、という人である。だから、婿が育った家庭も、おそらくフランスの中では、punctualな方ではあるまいかと思うのだが、それでこれなら、フランスの一般、平均、中央値ってどうなのよ。
※後日談:しかし、その後、べべさんを連れての外出のときに、婿の外出準備が娘や私から見るとのんびりというかぎりぎりというか、先回ってやれる準備をしておくということがないのを見るにつけ、この人もやっぱり特別なフランス人ではないのかも、と思うようになった。

 結局、この日は夕方の滞在で、ご飯も出さず、ペリエだけ。ばたばたしてて、果物を出すこともできなかった。でも、とにかく初めての顔合わせで、にこやかに過ごすことができて良かった。
 帰り際、70代のおばあさまから「la biseをしてもよいか?」と聞かれた。頬にキスするフランス式の挨拶ですね。おばあさまを先頭に、全員の方とbise。受け容れられたように感じられて、嬉しかった。

 土曜日は、婿がご一行様を案内してボルドー市内観光。それも出発が何時になるかは、朝の起きたとこ勝負で、事前に決めておくとかはしない。
 夕方、途中でメロンやチーズやハムを買い込んで、ご一行様がおうちに到着した。生ハム+メロンが妹さんたちの大好物だそうで、今日は買ってきてくださったもので軽食。昨日いただいたスパークリングワインが冷えてる。お母様セレクトのチーズも生ハムも美味しい美味しい。お母様は、ざっくばらんな、決断力、行動力に満ちた方だとお見受けした。私より幾つかお若いながら、頼りになりそうな感じ。

 そして、事件が起こった。

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