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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか173】12月(16)ケルン・アーヘン⑤
夜の10時ちょっと過ぎに大聖堂に着く。正面ではなく、駅の側から近づいたら、北側の入り口に向かって列が出来ている。一番後ろに並んでいた、私より年配のおばあさんに、これは入る人の列?と英語で聞いたら、前に並んでいた若い人にドイツ語で確かめてくれた。違う違う、これは関係者の列、と言われたみたい(後から考えたら、聖歌隊の人たちじゃないかな)。参列者の入り口はあっちだよ、と正面入り口の方を指差される。おばあさんが、聞いて良かったわ~、みたいな笑顔で移動するのについていくと、正面には、既に長蛇の列が出来ていた。
待つこと20分ぐらい、いやもう寒いのなんの。なんでこれで雪じゃないんだろう。後ろに並んでいる人に肩を叩かれて、列が動いているのに気がつき、慌てて前に空いた間を詰める。
入り口で警備の人に挨拶、特に鞄の中のチェックとかはされなかった。大聖堂の中に入ったら、ほー、あったかい…ってほどあったかくないな。これだけの天井の高さでは、空気が暖まりにくいのかも。
参列者の席の一番後ろに、式次第的なパンフレットがあるので一部いただく。ドイツ語だけだが、ないよりいいだろう。演奏される曲名や作曲者、バッハとかの名前は分かる(のもある)。既に前の方の座席はびっしり埋まっているが、なにしろ広いので、まだまだ人が入れそうだ。聖歌隊が並ぶと思われるステージ状になっているところの近くに席を見つけて腰掛ける。
この音楽ミサからの深夜ミサは中継でもされるのか、テレビカメラが入っている。つまり、これはあれだな、「行く年来る年」だな。
聖歌隊が入ってきた。男性も女性もいる。若い人が多いけど、年齢はちょっと幅がありそうに見える。管楽器隊も聖歌隊と同じところに陣取る。パイプオルガンは、そこから参列者の頭越しに斜め上だ。奏者からは指揮者が見える位置になっているのかな。
11時半、管楽器の演奏からスタートして、聖歌隊、オルガン、そして合奏。私は中高の6年間カトリックの学校で過ごした。ドイツ語のタイトルを見ても何も分からないけど、演奏が始まると、あれ?聞き覚えがあるかも?と思う曲もあった。
いや、やっぱりパイプオルガンはいいなあ。数年前の教え子で、パイプオルガン奏者を目指して藝大に進んだ子がいて、高校在学中に彼が教会で演奏するのを何度か聴きに行った。彼に、今、私、ケルン大聖堂でパイプオルガン聴いてるんだよ、と伝えたい。うらやましがるだろうなあ。私の耳にはもったいない。彼に聴かせてあげたい。
曲によっては、歌詞が書いてあるものもある。どうも.Chorとあるのは聖歌隊だけで歌い、Alleとあるところは参列者も歌うみたいだ。あとで調べたらAlleは英語のallだった。おかしいなあ、大学で2年間ドイツ語やったはずなんだけど、そんなことも忘れている。
ドイツ語の読み方もでたらめだけど、まあ、基本、ローマ字通りでいいんだろ、と見様見真似というか聞き様聞き真似で歌う。「きよしこの夜」が最後の曲だった。
12時、聖職者が入場しミサが始まる。このタイミングで退出する人たちも少数いたけれど、せっかくだからと留まる。不信心者が紛れ込んでごめんなさい。周りの人の動きに合わせて立ったり座ったり。ここでも、Alleと書かれている部分は唱和する。
式次第に書いてある一通りの儀式が終わったのが午前1時半ぐらい、聖体拝領のために信者さんたちが並ぶ。すごい行列だ。これは全員が終わるの、何時ぐらいになるんだろう。信仰心がない者は、ここでご無礼いたします。貴重な体験をありがとうございました。
外に出たら、真夜中の凍える霧雨の中を、観光客に混じって、ホームレスの人たちが何人も物乞いをしていた。私にはこの人たち全員にあげられるものなどないけれど、それは私が一人のホームレスの人にピザをあげない理由にはならない。