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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか39】パリでかるたを(4)フランスかるた会

 朝、パリの大きなバスターミナルに到着した。セーヌ川沿いの広い公園の一角にあり、夜遅くにはちょっと怖そうな感じがする。帰りのバスは夜の11時過ぎに発車だが、早めに来た方が良さそうだ。トイレと自販機があることを確認して、バスターミナルを後にする。
 パリは小雨が降っていて寒かった。晴れていれば、その辺の公園で座って朝ご飯でも良かったんだけど、これはちょっと暖かいところで落ち着きたい。トイレも行きたいし。そこで、カフェで朝食をとる。朝食セットはクロワッサンとバゲットとカフェオレとオレンジジュース、バターとジャム付き。はあ。人心地がついたところで、バスティーユ広場近くの練習会場を目指す。

 途中で街角の写真を撮ったり、昼食用のパンを買ったりしながら、教えられた練習会場のある建物、パリ市が運営する教育、文化関係の公民館的な場所に着いた。建物全体の入り口は閉まっていて、練習時間までにはまだ30分ぐらいある。近所の公園やシナゴーグを見て回る。雨のせいで公園のベンチに座れないのが残念だ。
 建物に戻ったところ、ちょうど中から人が出てきた。入れるのかな?と思って、扉を押したら、入れた。この扉は建物の中庭に通じていて、ここから複数の施設や居住エリアの入り口が分かれているようだ。
 でも、ここからどうしたらいいのか分からない。ガブちゃんが教えてくれた「会長さん」に電話してみる。この時点で私は、「会長さん」には日本語が通じると信じていた。違った。向こうも、フランス語が話せない相手からの突然の電話で困っただろう。それでも、「じゅまぺる ひろみ いざわ」と名乗ったら分かってくれて、その後はお互い英語で何とかなって良かった。「10分ぐらいで行くから!」と言われて、ホッとする。

 10時過ぎ、現れたのは、日本語ぺらぺらの若い二人だった。えっと、「会長さん」って結局誰だったんだろう?

 お二人に連れられて建物の中へ。一階のオフィスで鍵などを受け取り、ロッカーから練習に使うグッズを出す。このあたりは日本のかるた会でも同じだなあ。公共の施設を使用する団体あるある。違うのは、使用する部屋=会議室の床が畳ではないこと。当たり前か。机や椅子を片付けて、折りたたみ式の畳を床に敷くところから始める。そのうちにもう一人来て、4人で最初の試合を始める。その試合中に、更に4人来て、今日の練習は私を入れて、総勢8人。全員、30歳前後のコーカソイド(ちょっとミックス?も)。日本への留学経験者が多いようだ。

 昼食休憩を特に取らずに、試合の合間におなかに何か入れて練習を続ける、というのも、日本の練習でもよく見られる。こんなこともあろうかと、パンやおやつを持ってきて良かった。ただ、流石に深夜バスからの練習で眠くて、途中で教えてもらった、通りの向かいの店でコーヒーを買ってきた。このお店はパンもケーキも美味しいとのことで、次回はここで昼食を買おう。

 試合の開始で互いに「お願いします」と礼、終わったら「ありがとうございました」と礼、そのあたりは勿論、日本と一緒だ。私との試合では、試合中のやりとり、「〇○の札をこちらに移動します」とかも日本語で話してくれた。しかし、フランス人同士の試合では、いわゆる「揉め」、「私の指の方が先に札に触りました」「いえ、今のは私の手がこう入ったときに、あなたの手が遅れて来て…」みたいなことがフランス語で行われていて、おお、フランス語で揉めとる!と感動してしまった。試合の合間の会話でも、フランス語の中に「むすめふさほせ」とか「札分け」とか日本語のかるた用語が混じって、新鮮だ。
 朝、最初に会った女性は、B級公認読手の資格を持っていて、この日、2試合で読んでくれた。資格を持っているだけのことはある。日本語ネイティブと遜色のない発声で、非常に取りやすかった。

 ここ数年、かるたが最優先ではなくなっていたんだけれど、ここへ来て、若いフランス人に交ぜてもらって、本当に楽しかった。趣味といえるものがほとんどない私だが、かるたがあって良かった。若い人とがちの5試合はハードだったけどね。

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