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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか60】生後まもなく(2)お七夜②

 足型・手型を取るための、色紙?画用紙?が要る。赤い色は、普通は赤い墨汁で付けるんだろうか?そんなものがボルドーで売っているとは思われないから、この際、絵の具で良かろう。学童用の絵の具なら、そんなに悪い成分が入っていることもあるまい。娘が調べたところ、今どきはインクレスで足型を取るツールもあるとのことだが、それはオンラインでしか買えないだろう。それでは間に合わないので、ここはアナログで、紙と絵の具を買いに行こう。お七夜の準備なんてところまで頭が回っていなかったので、泥縄も良いところだ。

 婿より私の方が欲しいもののイメージを明確に持っているということで、私が行く。一度行ったことがある、繁華街から近いショッピングモールだ。日本で言ったらイオンみたいな、専門店+大型スーパー。トラムから直結で行けて便利である。
 水彩絵の具と紙、あ、できたものを入れるための額も欲しいな。日本であれば、売り場のあたりをつけるのも簡単だし、商品の説明を確認することも楽勝だ、日本語だもん。そうした一つ一つの、当たり前に、あっという間にできていたことに、時間が掛かる。それでもなんとか、学童用の文房具が並んだコーナーで絵の具と画用紙を選んだ。でも、額が見つからない。Google翻訳さんで「絵を飾る額」を出して、店員さんに聞く。「ぼんじゅーる、むしゅー。これはありますか?」「ああ、あっちにあるよ」。あっちという単語が分かるの、大事だな。部屋を飾るランプや造花などと一緒に額が売られていた。
 それから、頼まれていた細々とした雑貨を探す。ゴミ箱とか、べべさんのお尻を拭くコットンを濡らすための水を入れる容器とか(フランスでは、お尻ふきにウェットティッシュではなくて、化粧用のコットンのお化けみたいなのを水で濡らして使う)。結局、この店では見つからないものもあって、もう一軒の店にも回ることにする。3時前に家を出て5時までに帰るつもりが、6時過ぎになってしまった。

 帰宅し、夕食の準備。鱸の尾頭付きと、鯵フライ、さつまいもの天ぷら。さつまいもは、中国、韓国、日本の食材を扱っている店で婿が前日に買ってきてくれたもの。こちらのスーパーで売られているさつまいもは「なんか違う」と娘が言うので、買ったことがない。お祝いだから、ビールも開けちゃえ。まあ、娘とべべさんは飲めないんだけど。食後にはケーキも。まあ、べべさんは食べられないんだけど。

 さて、本日のメインイベントの時間がやってまいりました。手型・足型チャレンジです。
 10色入りの絵の具セットを買ってきたので、娘夫婦も片手ずつ、手型を薄い水色で、背景として押すことにした。数枚で練習。次に、べべさんの足型、これは赤で、親のものよりも濃い色で。はい、まず右足から。娘が抱えているべべさんの右足を捕まえて、絵の具を筆でぺたぺた。土踏まずもない、かかとに角質もない、つるっつるの足の裏だ。小さいからすぐに塗れる。はい、紙にぺったり。おお、上手上手。きれいな足型が取れた。続いて左足。これもおっけー。いいじゃんいいじゃん。親が練習した紙の全部に押しておこう。

 問題は、手型だ。ちゃんと指を開いてくれるはずもない。娘と二人がかりで、こじ開けつつ、赤く塗る。ぎゃん泣きしても、赤く塗る。婿が、黙って見ている。この親子は一体、僕の子どもに何をやっているのだろう。これって、どうしてやらなきゃいけないものなのか? そんなに重要なものなのか? という顔である。
 うん、多分ね、手型まで無理することはなかったよね。きっと、足型だけで十分だったよね。大泣きしたべべさんは、そのまま沐浴に直行、更に大泣きすることに相成りました。沐浴担当の婿は、丁寧に赤い絵の具を落としてくれました。すまんて。

 翌日、絵の具が乾いた紙に、私がべべさんの名前と生年月日をフランス語と日本語で書いて、額に入れて完成。おてては握り拳だったりするけど、あんよはきれいな形が残りました。これを写真に撮って、日本の家族や親戚に送りましょう。べべさんの名前のお披露目です。これから、末永くよろしくお願いします。

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