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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか134】10月(25)フランス語学習⑧

 さて、10月後半のバカンスを前にしたアドバンスクラス、娘抜きで参加した結果、私は全くのお客様状態…にはならなかった。それもこれも、ポリーヌとミシェル、二人の先生が、この、フランス語は全くできないけれども、言いたいことはいろいろあるらしい、愛嬌と度胸はそれなりにある日本人のばあさんに、適切な気遣いをしてくれたおかげである。

 長身でスリムなポリーヌと、小さくずんぐりしたミシェルは良いコンビだ。この二人が発言の機会を確保できるように話を振ってくれたおかげで、私はお客様にならずに済んだ。

 「いるみ、好きなスポーツは?」「えーっと、わたし、は、かるた、が、すき、ですー」「かるたって何?」「かるた、は、にほん、の、でんとう、てき、な、すぽーつ、ですー(嘘だ、競技かるたの歴史はせいぜい明治以降だ.夫婦同姓と一緒で、伝統というには浅い)」…前の週に娘がミシェルに「母は競技かるたをやっていて」と話していたおかげで、ミシェルが「ポエムが書いてあるカードを奪い合うのよね!」と助け船を出してくれる。
 「ポエムを覚えておかないといけないんでしょ?」とミシェルが言うと、「え、それはスポーツと言えるの?」とポリーヌ。「わたし、は、おもいます、これ、は、すぽーつ、だ、とー」…一同爆笑、なんなら「私は思います」時点で爆笑される。うーむ、特に面白いことを言った覚えはないのだが。不本意なので、競技かるたの動画をスマホで出して、みんなに見せる。「あああ、なるほどー、これはスポーツだわ!」納得してもらえたようで良かったです。便利な時代だな。

 「いるみ、好きな言語は?」「わたし、は、にほん、ご、が、すき、ですー。じぶん、を、ひょう、げん、できる、から、ですー」「そりゃそうよね。日本語と中国語って、字が一緒なんでしょ」「いや、それ、は、ちょっと、ちがい、ますー」「どう違うの? ほら、説明して、いるみ!」。うん、生徒の、特にできない生徒の参加を促す姿勢は、教師として素晴らしいね。私は初めて促される側になって、その辛さを知ったよ。

 なぜ、ホワイトボードを使って漢字と平仮名とカタカナの説明をせねばならなくなったのか、謎である。「Je suis japonaise=私は日本人です」と書いて、ほら、これがje、これがjaponaise、こことここが漢字で、これは中国の文字だけど、こことここは日本で作られた文字なのよ、と、つっかえつっかえ説明する。いや、説明はできてない。中国人のシャオリンとベトナム人のミーハンも先生と一緒になって助けてくれて、何とか伝わったようだ。

 こういうときに英語と語彙が重なるというのがありがたい。フランス語の単語を知らなくても、英語を何となくフランス語っぽくアレンジすると、案外あたっている。「使う」を、英語のutilizeから「ゆーてりぜ」と言ってみたら通じた。コツは後ろを強めに言うこと。ここだと、ゆーて「りぃ」ぜ、って感じ。

 ミーハンが、ベトナムでも昔は漢字と、漢字を元に作った文字を使っていたけど、フランス植民地になってからアルファベが使われるようになって、今では漢字は分からない、と語り、話が膨らんだ。こういうのは楽しいね。
 ここでポリーヌが、ルーシーに「シリアの文字は? アラビア文字なのよね?」と話を振る。今日は東アジア、中国文化圏の人間が多数派という珍しい日なので(パリでは東アジア系の人もちょいちょい見掛けるが、ボルドーでは少ない)、西アジアから来たルーシーが仲間はずれにならないように気を配ったのだろう。

 1時間半、みっちりみっちり、少人数で、聞く、話す、だけやって、そりゃもうぐったりしました。これだけ中身が濃い授業が無料なのが、本当にありがたい。こういうのが、フランスの公助、共助のいいところなんだろうな。

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