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【私の年のせいなのか ここが日本じゃないからか201】1月(16)フランス語講座②

 1月のベーシッククラスに新しく来た中で、バングラデシュからの青年がいた。彼が初めて参加したときにたまたま隣の席になって、少し話すことができた。
 彼はバングラ出身なので、英語はちょっと話せる。が、フランス語は全くダメだ。おお、親近感。とても実直そうな、真面目そうな感じがする。なんでかというと、先生の発言を全部おうむ返しにするのを見ていて、そう感じたのである。
 先生の言葉をおうむ返しにする。これは発音の練習にはいいと思う。フランス語はやっぱり発音が難しい(私だけ?)。シャドーイングじゃないけど、ネイティブの発音を真似るのが一番練習になるはずだ。

 ただ、うーん、と思ってしまうのは、彼は先生に何か問いかけられたときも、質問を繰り返すだけなんだよね。質問を投げかけられているということが分からない様子だ。私だって、先生が何を言っているかは全然分からない。それでも、今、これは質問なんだな、ということは分かる。時には何を聞かれているか分かることもある(そしてたまには答えられる。たまーにね)。
 彼は、ポリーヌに「Oui?Non?」と聞かれると「Oui,Non」と答える。ミシェルが個別に説明するのを聞いても戸惑った表情でミシェルの言葉を繰り返そうとする。
 隣で聞いていたので私が英語で助け船を出したこともあった。でも、どうなんだろうな。ポリーヌだってミシェルだって、英語は話せる。敢えてフランス語でフランス語を教えている(直接法というやつだ)。そういう方針で教室が運営されているなら、私が口を挟むことではないか(アラブ語話者同士は助け合ってるけど)。一方で、これが彼にとってベストなのか、とも思ったりしてしまう。

 私や娘は、母語である日本語で書かれた、フランス語の教科書的なものを持っている。選ぶのに困るくらいたくさん出版されていて、それを買って、読むことができるから。それは、それだけで恵まれたことなんだよね。

 私は、火曜日のベーシッククラスに遅刻することが多い。9時半開始なのだが、5分、10分は平気で遅刻してしまう。朝、洗濯物を畳んで(前の晩にまだ乾いていないことが多いから)、干して、べべさんを寝かせて、ということをやっていると、なかなか時間通りに行けない。婿は8時過ぎに出勤するし、娘は在宅とはいえ9時からは勤務時間なので、仕方ない。
 …いや、正直言えば、仕方なくない。金曜日のピラティスは遅刻せずに行くもの。だって、体育会系組織で、遅刻なんか許されないもの。てか、みんな揃って、出席人数に応じて動き始めるから、遅れるわけにはいかないのである。だから、金曜日は早めに洗濯機を回して(2時間以上掛かるので、回してからもう一度寝たりする)、娘にも協力してもらって、必死になって間に合うように出掛ける。
 同じことが火曜日もできないのか? …まあ、甘えですよね。娘に週2回も負担を掛けるわけにはいかないってこともあるけど、フランス語の方は先生が鷹揚だし、どうせ最初はミシェルによるディクテーションだし、他にも遅刻してくる人が多いし…という甘え。

 そう、遅刻してくる人が多いのである。私は会場の公民館から歩いて10分のところに住んでいるが、もっと遠いところからトラムに乗ってくる人もいる。毎回のように、30分も40分も遅刻してくる人に対しても、何週間もいなくて久々に顔を見せる人にも、先生たちは「ボンジュール!」と満面の笑みで出迎え、歓迎する。
 ここへ来る、というだけで大変なんだろう。だから、来ただけで、よく来たよく来た、という感じで出迎えるのだろう。先生にも生徒にも、頭が下がる(だったら遅刻するなって)。

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